表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
11章 だいちょーへん、黒幕幼女と紅き竜なんだぜ
151/311

151話 鉱山観光を楽しむ黒幕幼女

 鉱山とは不気味なものだと幼女は周囲を見ながら思っていた。水は出ない鉱山タイプだからか、肌寒さは感じない。


 ゆらゆらと揺れる松明に照らされたゴツゴツした岩肌や、髭もじゃのドワーフたちと、ふるわれるツルハシにはリアルの凄さを感じる。子供の頃に佐渡の鉱山を観光したが、やはり実際に働く人たちがいると受ける感動が違う。そういや、佐渡は無くなったんだったな。


 カンカンとツルハシを振るい、鉱石を掘り懸命に働くドワーフたち。鉱石掘りが大好きなんだろうなぁと、幼女は口元を綻ばす。


「あの〜、親分? あっしはドワーフじゃないんで、鉱石掘りに楽しさを感じないんですが? なんであっしだけ、ドワーフたちに混ざって鉱石掘りをしているんですかね?」


 髭もじゃのドワーフたちの中に、約1名共人のおっさんが混じっていたが違和感がないよな。なにかお決まりのセリフ、なんであっしだけ〜とか言ってくるが


「今回はガイが自分から言ってきまちたよね? ほりほりしたいって、言ってきまちたよね?」


「まぁ、そうなんでやすけど。鉱石掘りはロマンですし。おっ、今度は金かな?」


 なにかキランと光る物が出てきたので、顔を喜びに変えるおっさん。さっきまでは銅クズだけだったんだと手に持って小躍りしていた。


「あたちも鉱石掘りは大好きでちた。鉱山に籠もって延々とツルハシを振るっていまちた。彫金スキル上げに馬鹿げた量が必要だったので」


 宝石のハイクオリティを作れるスキルレベルまで上げたんだよなぁ。安い原石が高額の宝石に変わったのは良い思い出だ。


 ガイも同じような思い出があるのだろう。自分から鉱石掘りをすると言ってきたのだ。


「それにしても……この鉱山はなんでも鉱石が出るんでつね……」


「バッカス神のお力により作られた鉱山ですからな。様々な宝石、鉱石が掘れますぞ。この鉱山地帯だけの特色ですな」


 ガハハと隣を歩くバッカスが笑うが、チートだよなぁ。チート能力は俺だけの特権ではないと思い知るよ。


「それじゃ、親分。どうぞ」


 金の煌きがちらりと見える鉱石を手渡してくるガイ。なんというか、この鉱山はゲームっぽくもあるなと思いながら受け取り、魔力を手のひらに集中させる。


「錬金 抽出」


 手のひらから少し魔力が抜けていく感じを受けながら眺めると、フワリと黄金の粒子が鉱石を覆い、石くずと金に分かれる。小粒程の大きさの金だ。


「錬金 解析」


 続いて魔力を使うと、成分表示がステータスボードに表れる。


 いしくず

 きん


 と表示されていた。これ成分表示? ただのアイテム表示だな。


「見事な錬金術ですな。アイ様は錬金術まで修めておるのですか。さすがは使徒様」


 アイの手際に感心するバッカス。昨日から使えるようになったんだよとは言えないので、ムフンと胸を張るだけにしておく。幼女の得意気な姿は可愛らしい。


「錬金術をどこまで知ってまつか、バッカスしゃん」


「鉱山と錬金術は縁がありますからな。鉱石の解析に多数の錬金術士を雇ってもおりますし。知っている限りでは基本の解析、一人前となる抽出、分離。錬金術の大家であれば混合というものを使え高位ポーションを作成できます。タイタン王国のドッチナー侯爵家が使える技ですな」


「へぇ〜。あたちが最初に覚えたのは専門知識だけでちたよ」


 重曹とか中和剤とかの作り方だけだったよ? なんでなんだ?


「錬金術士の技を使えるようになるのは、知識を頭に詰め込むより大変ですからな」


 なるほどね。以前手に入れた際は魔法使いからだった。魔法に力を入れて錬金術は知識のみだったわけか。


「人間は一つの技を修めるだけでも数年、高度な技なら十年以上かかるからなぁ。仕方ないんじゃね?」


「マコトの言うとおりでつね。ゲームと違って、レベルが1になったからと言っても、1レベルの知識が全部頭に入る訳ではないでつし」


 とすると、やはりドラゴンオーブで手に入れた知識はチートだ。7レベルまでのあらゆる錬金術の知識が手に入ったし。鍛冶や魔獣工、魔法付与も一般の使い手よりも遥かに高度な技を使えるのだ。


 たぶん錬金術レベル1解析、2抽出、3分離、4混合、5結晶、6融合、7昇華となるのだろう。頭で考えたら自然と浮かんできたので。それらの応用複合技も思い浮かぶ。


「では、鉄はどうでしょー」


 小粒金をほいっとガイに投げ渡して、受け取ることに失敗したガイがあっしの金がぁと地べたに這いつくばって探すのを横目に、ルーラへとアイコンタクトをだす。


「はっ。鉄鉱石は用意してあります」


「ありあと〜。んじゃ、錬金 抽出」


 尻尾ブンブン振ってくるルーラから受け取って、まずは鉄を抽出。数個の鉄鉱石から鉄を抽出したあとに、気になる技を使う。


「錬金 昇華」


 数個の鉄に黄金の粒子を纏わせる。さっきまでと違い、ごっそりと魔力が減る感じを受けるが、幼女は我慢強いのでふらつくこともない。


 数個の鉄、たぶん1キロ程度の鉄が合わさって、ピカリと光った後には僅かに透明感を出す銀のような輝きを見せる美しい鉄のインゴットへ変わっていた。200グラム程度になっちゃったけど。


 世界に鉄が溢れない理由の一つが解っちゃったぜ。質量保存の法則が働いていないよな。


「そ、それは! 鉄なのですか?」


「結晶魔鉄という物でつね。物に籠もる魔力も凝縮されていまつ。同じ重さのミスリル3割程度の魔力含有量が入ってまつね」


 バッカスはもちろん他の者たちも目を剥き驚きを示していた。見たことのない技に見たこともない鉱石となったのだから無理もない。


「結晶化も昇華を使えば行えるのでつか。なるほど、高位の技は下位スキルの技も含んでいると」


 ふんふん、大体通常の鉄の2倍程の硬度となると。鋼と同じぐらいか。魔力も籠もるのだから、ミスリルとかに使うとどうなるか楽しみである。ミスリル持ってないけど。


 解析により、その力を見抜いたアイは満足そうにポイッとルーラへと投げ渡す。力を見せつける? ここの面々は火山にいた面々だから問題ない。観光のために戦士たちが鉱石掘りのデモンストレーションをしてくれていたので。


 本当に問題ないかは、畏怖と敬いの視線を向けてくるドワーフたちを見ればわかると思うのだが、女神の加護を持つ幼女はあまり気にしなかった。女神はトンカツが好きなので仕方ない。


「魔力を使いすぎて実用性がないでつ。残念でちた」


「こ、これで実用性がないと? 立派な物ですが」


 バッカスたちがルーラへと押し寄せながら驚く。閣下のお作りなった物です、平伏しなさい。と結晶魔鉄を掲げて、むふーっと鼻息荒くルーラが調子にも乗っていた。


「閣下の深遠なる思考は凡人には理解できないのです。あなた達にできるのは敬うことのみ。さぁ、皆さんで拝みましょう」


 余計なことも口にする軍人少女であった。そういうのはいらないから。


 ちなみに幼女の実用性とは大量生産不可ということを示します。少ない数なら作れるだろうね。


「ガイたちの武具はともかくとして、量産できる武具が必要でつね。本国から魔法士たちを呼び寄せまつ。バッカスしゃん、うちの魔法士と仲良くしてくだしゃいね。大量の武具を発注しまつので」


「はっ! 畏まりました。皆にも告げておきます」


 南部地方、バッカスの連合国にはバッカス王国の帰属を告げておいたが、いくつかの国が帰属をしてこないだろうとバッカスからは聞いている。独立心が高い王や、クズな王が支配する都市だ。そこの制圧が必要であるからして。


 それはスノーにお任せにするつもり。ルーラに手伝わせるし、ルノスもそろそろ戦って欲しい。各地にいる騎士たちにも。ダツを中心に据えるのは当然として、バッカス王国が帰属したとあれば、陽光帝国に統一の流れはきていると、功績を欲しがる貴族や騎士たちも出てくるだろうし。


 こちらはこちらで、月光として経済を回さなければいけないのだ。俺たちはタイタン王都に戻るのだ。様々な物を売らないとね。


「バッカスの鍛冶場はアダマンタイトレベルが手に入ったら使いまつ。それよりあたちも鉱石掘りをしよ〜っと」


 ガイではないが、鉱石掘りはネトゲープレイヤーにとってはマロンなのだ。甘いモンブランを幼女は大好きなのであるからして。


 幼女用のツルハシを持って、といやっと壁に向かって振るう。


「小石、小石、小石、小石、ツルハシが壊れまちた」


 たった4回で壊れてしまうツルハシ。幼女が作ったのだが、なぜだかかなり脆い。でも解析を付与して作ったから掘った物がすぐにわかる親切設計なのだ。


「鉄、銅、宝石の原石、金、鉄、宝石の原石、ツルハシが壊れやした」


「おかわり!」


 ガイの言葉を聞いて、ちっこいおててをツルハシの入ったかごを背負うリンへと伸ばす。採掘が上手くいくようにと、女神様に祈りながら作ったツルハシの山である。


「ん、頑張ってだんちょ〜」


 夜店のくじを売っている店主のような笑みを見せてツルハシを手渡してくるリン。


「小石、小石、小石、銅、ツルハシが壊れまちた」


「銀、鉄、銅、鉄、銀、銀、ツルハシが壊れやした。あんまり良くなかったです」


 ポキンとツルハシが壊れて、ガッカリして肩をすくめるガイ。


 ポキンとツルハシが壊れて、体を震わせて小石を掴むアイ。


「手が滑りまちた! ていていっ」


 手に入れた小石はこう使うんだよと、幼女は小石を山賊に投げつける。幼女らしからぬ豪速球で小石は飛んでガイへと当たる。良い子なので、手が滑ったのだ。人に向けて投げたわけではないよ。


「グハッ! 小石でもかなり痛えですよ、親分」


「大丈夫でつ。小石の最大ダメージは5、それ以上は命中する前に小石が崩壊しまつので」


 ビシバシとピッチャーアイはガイへと小石を投げつける。手が滑ったのだ、仕方ないよな。


「わかりやした! 次はあっしの採掘ポイントと場所を変えましょう」


「たとえそこで掘っても小石の予感がしまつ! あたちは勘が鋭いのでつ!」


 これまでの経験談だとも言える幼女である。


 キシャーと小動物が山賊を追いかけて、ドタバタとなった光景となり、バッカスは嘆息する。


 この間のかっこよい幼女の戦いぶりと、今の落差が酷すぎる。


「ああしてみると、どこにでもいる共人の子供なんじゃがのぅ」


「どこにでもいる共人の子供だからこそ、人類を見捨てないのですぞ、バッカス殿」


 顎髭を触りながら苦笑するバッカスへ、老齢の聖騎士が告げてくる。たしかにそのとおりなのかもしれない。天空から見下ろすのみでは、わからぬことも多数あろう。人類のことなど気にしない神だらけに違いない。

 

 人と並び立ち、共に暮らしていける者だからこそ、人々を救ってくださるのだろうとバッカスは思う。


「我らが期待に背くことをしなければ良いが。まずは儂らの力をお見せするとするか」


 ドワーフ戦士団は強力だ。竜との戦いには加われなかったが、周辺都市を攻めるには役に立てる。


「そうですな。後日スノー皇帝がきますので、その時はよろしくお願いいたす」


 不敵なる笑みを見せてギュンターが言うのを頷きで返す。


「それはともかく、あのツルハシは魔法のツルハシか? 一回壁につきたてるだけで鉱石が掘れるなど聞いたこともないのじゃが」


「あまり数がないのでしてな。姫にドワーフたちへと少し分けてもらえるように頼みましょう」

 

 もう使わないかもしれませんしなと、聖騎士が答えて、たしかにそのとおりなのかもとバッカスは苦笑をして使徒様へと歩いて行くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずのだんちょーさんのドロップ率には(笑)
[一言] ドロップ運どころか鉱石掘りすら運が無い… ま、まぁ、その分仲間に恵まれてるから!
[良い点] ガイが使う場合に比べ1.5倍程脆くなるツルハシに加え、ドロップ運の無さが採掘にまで反映されてて泣けます( ;∀;) 運が悪いとすぐに壊れるドル○ーガのマトックを思い出しましたw [気に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ