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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
11章 だいちょーへん、黒幕幼女と紅き竜なんだぜ

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148話 月光幼女

 高速でお互いに飛行しながら、牽制の攻撃をアイと紅蓮はしていた。紅蓮がミサイルを放つと、アイは高速機動を駆使して回避しながらフリーズビームを撃ち、キグルミビットで肉薄してくるのはシールドする。


 すぐさま空中を鋭い動きで切り戻して、紅蓮をビームにて狙い撃つ。


 既に敵のDフィールドはなく、紅亀アーマーも矢によりヒビが入り魔法の反射が行えない紅蓮は、翼を羽ばたかせて薄い膜のような魔法の障壁を作り出しビームを防ぐ。


 自動防御を行う装備を持っているのに、しっかりと防御魔法も覚えているらしい。どれだけ隙がないように作られたのだろうか。今までの適当なスキルと違くない? 誰が運営に加わったのかしらん。


 幼女と赤竜は空を飛び交い、花咲くように次々と爆発と爆煙が生まれる。


「ライトニングチェーン」


 紅蓮が加速をしてこちらへと迫ると、鎖状の雷を使う。10個を超える雷の鎖がアイに向かってきて、拘束しようとしてくる。


「炎だと効かないと考えて、通常魔法に切り替えまちたか! 頭の柔らかい竜でつね。炎の攻撃をしてくれば良いのに」


「ゲームと違って、ワンパターンのボスキャラじゃないからな。アホでもなさそうだぜ」


「こっちのサポートキャラはアホでつのに、困ったボスキャラでつ」


 誰がアホだってと怒るマコトを放置して、迫りくる雷の鎖へと槍を向けて、自身も魔法を使う。


「クリエイトウォーター」


 膨大な水が槍から吐き出されて膜となる。拘束どころか、生半可なステータスの者なら焼け焦げて即死をすることは確実な雷光走る恐ろしい威力を持つ鎖であるが、水に命中して全て散ってしまう。


「低位魔法で中位魔法を防ぐなんて考えたな社長!」


 下手な障壁よりも水の方が良いのだ。全て伝播して霧散するしね。障壁魔法持ってないけど!


 マコトの称賛の声を受け流して、翼を畳み急降下をする。地面へと向かう際に、先程までいた場所に爪撃が通り過ぎていったのが目に入る。三日月と同じ系統の技だ。魔法を対処している間に攻撃を加える予定だったのだろう。


「全体的に負けてまつ。ステータスは上でつが、装備やスキルに差がありまつね」


「統合されて銅から、青銅に武具がランクアップしているけど、装備的にはしょぼいもんな」


「戦いが終わったら、皆の武具をまともにしまつよ。っと、ブリザード! そして霧氷発動!」


 木々が近づいてきたので、ブリザードを発動させる。吹雪が発生して、辺り一面を雪の世界へと変えていく。極熱から極寒へと地形が変わる中で、霧氷が地表を閉ざし視界を防ぐ。


 月光幼女は氷の身体を発動させて、雪舞う白き世界へと飛び込む。


 紅蓮は吹雪の前で停止して、ミサイルを撃ち放つが全て吹雪の壁の前に爆発していく。


「ミサイル無効。対魔法攻撃ジャマーブレス」


 口の周りの空気を歪ませると、吹雪へとジャマーブレスを吐く。ファイアドレイクとは威力も効果範囲も比べ物にならないブレスはさらに振動ダメージも発生させながら吹雪へとぶつかる。


 魔法の構成を破砕されたブリザードは解けるように消えていき、真っ白に凍りついた世界を見せてくるが幼女の姿は見えない。


 訝しげに目を細めてモニターにレーダーを映し出す。


 レーダーに映る小さな点は上空を示していた。頭上を仰ぐと、気配隠蔽にて隠れていた幼女が空中から溶け出すように現れて、ちっこい腕を振りかぶり銀の槍を投擲してきた。


 高速で落ちてくる銀の槍をジャマーブレスを吐いて硬直中の紅蓮は回避することができずにまともに受けてしまう。


 衝撃と共にグシャリと嫌な音が背中からしてきて、紅蓮はミサイルポッドが破壊されたことを理解する。


「ミサイルポッドパージ。マジックミサイル」


 魔法の矢にて迎撃せんと発動させる。50本の光の矢を幼女へ向けて撃つが、相手もちっこいおててを翳してきていた。


「フリーズアロー」


 幼女も魔法の矢と同数の氷の矢を撃ち、お互いの魔法は激突して相殺されていく。


「リターン」


 ミサイルポッドを貫いていた槍を手元に引き戻して、再び飛行を開始して、アイは紅蓮から間合いをとる。


 紅蓮も加速を始めて、アイを追いかけてくるのを確認し、マコトへと視線を向ける。


「竜魔法は無視しても良いかも。武装でステータスは上がっていまつけど、魔法攻撃力を上げる装備はなさそうでつし。素の魔法だと、あんまり痛くないでつよね?」


「そうだな。たぶん……ステータスは400ぐらいか? あの装備していた武具からは魔力攻撃力向上の性能は感じられないよな」


「こちらは吸魔の杖がありまつからね。やっぱり武具は大事ということでつ」


「青銅級だけど、刀と杖はそこそこ性能が良くて良かったな。武器も青銅級だと銀級には敵わないところだったぜ」


「聖なる闘士じゃないんでつよ」


 身体を旋回させて、斜めへと機動をとると、灼熱のブレスが吐き出されてきた。


「炎の身体にモードチェンジ」

 

 炎無効の身体へと変化させて、螺旋を描くように飛びながら、追随するブレスを回避していく。スレスレに通りすぎていくブレスから熱気を感じて、かなりの高熱だと理解する。


 外れたブレスが地表にあたり、白き世界を溶かしていき、膨大な水蒸気を発生させていく。


 なぜ回避するかというと、俺がさっきフリーズビームに矢を混ぜたように、紅蓮も真似っ子をしてそうだからである。


 現に、地表を溶かしていくブレスの跡に、赤く光った槍型の魔法武器が地面に刺さっていた。


「クリエイトマジックウェポンだな! あいつブレスの中に隠すなんて頭良いな」


「どうやら愚鈍ではない模様でつ。油断はできませんよ」


 炎の身体だからと、無防備にブレスを受けたらとんでもないダメージを受けていたのは確実だ。頭の良いやつ。


「フレアバースト」


 灼熱の光球を紅蓮が発生させる。まるで小さな太陽のような輝きを放つ炎の火球だがアイには効かないはず。だが、アイは敵の意図に気づき、盾で身を隠す。


「ちっ、盾技 ビッグシールド!」


 光の障壁が盾を中心に張られるのと、フレアバーストを背にした紅蓮が魔法を開放させるのは同時であった。


 フレアバーストが爆発して、紅蓮をその威力で押す。爆発により驚異的な加速をした赤竜は一気に幼女へと肉薄してきたのだ。


「竜技 竜爪微塵切り」


 両前脚を振りかぶり、高速の振り下ろしをしてくる紅蓮。煌めく紅きビームクローが空気を裂き、赤い爪痕を残しながら連続で作り出される。


 一撃を受けただけで光の障壁はガラスのように砕け散り、盾は2撃目であっさりとひしゃげて壊れる。舌打ちしながら、盾を放り投げて、槍を手放し刀を抜く。


 突風を巻き起こしながら、幼女を斬り裂こうと爪の連撃はとどまることを知らず、振り下ろし、横薙ぎ、切り返しをしてまさに縦横無尽に攻撃をしてくる紅蓮。


 爪の一本一本が幼女の体躯と同じ太さである。命中したら粉々になるであろう威力を感じさせて、冷や汗をかきながらも、アイは対抗するべく刀を振るう。


「適刀流 壁打ち」


 防御技にて横薙ぎにて迫る爪へと刀をぶつける。巨大な爪に対して比べると、爪楊枝のような大きさの刀のはずであるが、強い衝撃と共に爪は弾かれる。


「ていていていていっ! 幼女を切り裂くのは禁止でつ、通報決定でつ!」


 次々と襲い来る爪襲を、ちっこい身体を駆使して、打ち返す。物理法則を無視した結果であるが、ステータスが世界の理を支配するハードな異世界。幼女のちっこい身体でも竜の攻撃をいなすことができるのだ。


 紅蓮は驚きで目を見開く。完全に捉えたと考えていた必殺の一撃を受け流されていく。武技の連撃を卓越した技術で回避していくこの者はたしかに敵の使徒なのだろうと確信する。


「敗北は許されない。魔技 スピンファング」


 その鋭い牙にて噛み砕こうと、幼女へと口を開いて襲いかかる。尋常ではない力を持つ敵であろうと必ず倒すという必死さを見せる紅蓮。


 爪の攻撃が止み、アイは迫りくる自身を噛み砕こうと大口を開けてくる赤竜にニヤリと笑みを見せる。


「焦りを感じましたか。ようやく隙を見せまちたね、それを待っていたんでつ。特性 風は捉えられず」


 自身を風が纏い、回避率が大幅に上がる。特性により身体が羽毛のように軽くなるのと、紅蓮の大口の中に身体が入るのは同時であった。


 アイは焦ることなく、口が閉じられる前に、トンと紅蓮の舌を足場に踏み込んで、身体をブレるように横滑りして脱出する。


「幼女はちっこいんでつよ。口が閉じられる前に脱出されることを考えないといけませんよ」


 涼やかに紅蓮へと告げながら、ちっこいおててを翳す。


 慌てて口を塞ぎ後退ろうとする紅蓮だが、ガツンと口の中で強い衝撃がして、戸惑いを見せる。


 口内には髭もじゃの男の大きな氷像が生み出されて、紅蓮が口を閉じることを妨げていた。おっさんの氷像であるので、嫌な感じ倍増である。


 閉じられない口内へと魔力を集中させてアイは魔法を放とうとする。魔力が渦となり、紅蓮をして恐るべき力だと畏怖する中で、月光幼女は叫ぶ。


「特性 連続魔 ルナティックブリザード!」


 闇とその中に瞬く光が十のブリザードを一つの狂気のブリザードへと纏めて発動をする。紅蓮の口内へとその氷の世界を放たれて、体内にて吹き荒らす。


「ぐ、グォォォォ」


 苦しみ体をそらす紅蓮。体内から漏れ出る冷気が身体のあちこちから吹き出てくる。


 炎の竜は身体を凍らせながら、それでもまだ耐えられるようで墜落することはない。


 戦う意思を見せて、再び脚を振るおうとするが、もはやその動きは鈍く先程までの力は見るべくもなかった。


「見事でつ、紅蓮。でつが月光幼女のあたちには敵いません。さようならの時間でつね」


 両手で刀を握りしめて、アイは再度魔力を集中させて、目を見開く。


「幼技 月光剣!」


 武技の全てを発動させて、一つの技へと昇華させる。月の光が紅蓮を覆い尽くしていく。


「これで終わりでつっ!」


「いけぇっ! ハイパー斬りだぁぁ!」


 耳元で叫ぶうるさい妖精の声はスルーして、大きく振りかぶり、紅蓮へと斬撃を繰り出す。剣閃は光の線となり、巨体の竜へと向かう。


 月の光に覆われた紅蓮はその身体を斬り裂かれていく。身体の各所に次々と光の線が走っていき、致命的なダメージを負い、力をなくし墜落するのであった。


 地面へと激突して、クレーターを作り横たわる紅蓮。ゆっくりとアイもそのそばに降り立つ。


「見事だ……。だが、大魔王じ」


「超連続幼女あたっーくっ!」


 紅蓮の最後の言葉を聞かずに、刀を振り下ろす幼女。グハッと断末魔をあげて赤竜はその命を消すのであった。


「え〜っ! 最後の言葉を聞かないのかよ!」


 マコトが驚いて抗議の声をあげるけど当たり前でしょ。


「大魔王関連は封印でつ。あたちは勇者ではないので。黒幕幼女なので」


 ケロリと言いながら、幼女は翼をバサリとはためかせて、もうこんな化け物とは戦いたくないなぁと苦笑をする。


 なにはともあれ、初の強敵との戦いを勝利で終えて、ひと安心だねと胸をなでおろす黒幕幼女であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聴こえてたら大魔王さと大魔王じこれは、大魔王が二人いる事を現している?とか認識されそう。まぁ金と銀で二人いるけども。
[気になる点] >「いけぇっ! ハイパー斬りだぁぁ!」 ハイパー幼女斬りでも語呂は良かったと思うの。
[一言] 幼女と龍ではどちらが上か確定的に明らか! しかしマコトは便利ですね。マコト is GOD。
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