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黒幕幼女の異世界ゲーム  作者: バッド
2章 まずは拠点を整備なんだぜ
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12話 黒幕幼女は最初の方針を決める

 ララの母親。貴族に仕えていたという元メイドのマーサが強い意志を感じさせながら尋ねてくるので、一人はまともな部下がいたかと、アイは胸を撫で下ろしていた。


「その答えは簡単でつ。あたちたちは拠点を作るためにきまちた。資金は失敗する可能性もあり、最低限に抑えてありまつ。拠点を手に入れたと連絡はしたので、第二陣が人材と資金を持ってきまつが時間がかかりまつ」


 第二陣という架空の部下を作る詐欺師な黒幕幼女。マコトたちはペラペラと設定をその場で作るアイに感心していた。女優になれるぜと、マコトは眼を輝かせてもいたりした。女優ではなく黒幕になるつもりなので、お断りします。


「ただその間ぼんやりと待つのは無能の証明でつ。しっかりとした基盤を持つ必要がありまつ。なので……資金があまりない今は金稼ぎの必要がありまつ」


 ふふふと腕を組んで、可愛らしく微笑むアイ。幼女は威圧感のあるボスを演じているが、残念ながら愛らしい幼女にしか見えないが。


 マーサはその答えに納得して頷く。魔法の武器と服、そして妖精を連れている幼女の言葉は説得力があった。半分ぐらいは再興を狙う貴族で、実際は第二陣などはいないのではと疑っていたが。


「わかりました。お答え頂きありがとうございます。で、お金を稼ぐ仕事ですね。念の為にお聞きしますが、銅貨を稼ぎたい訳ではないのですよね?」


「最低限、銀貨でつね。それと、あたちの支配地域を栄えさせること!」


 むんと手を握って、黒幕幼女は決意の眼をする。まずは支配地域を栄えさせるのだ。今の支配地域は戦略ゲームで例えると、資金40、食糧0、人口300人、産業1、民忠1、な感じである。


 空白地域の城を拠点に挙兵した君主みたいな感じである。部下は統率30武力が50で、残りの能力が10ぐらいしかない雑魚な奴らばかりで内政も全然できずに、すぐに他の君主に攻められてゲームオーバーとなるパターン。


 だが、どうやら下野している有能な人物がいたみたいだ。マーサはそこそこ使えそうな予感。


「……この地域の人から上納金を取る気は」


「銅貨の山で驚く人間からじょーのーきんを貰うつもりはありましぇん。まずはまともな生活にしないと駄目でつ」


 マーサの言葉に口を挟む。その言葉にマーサは多少の驚きと嬉しさをもって頷く。このボスの下なら、今までよりも楽な生活になると考えて。上納金をとらないボスはそれだけ貴重なのだ。いないと言っても過言ではない。


「それならば、狩りをなさればよろしいかと。栄えさせるのは、その、無理かと思いますが、この都市は人口が多く、常に肉に需要があります。鹿やウサギは銀貨で売れます。毛皮も売れますが、皮は鞣さないと安いですね。森林は危険ですがガイ様たちなら浅い層なら大丈夫かと」


 マーサの言葉にマジかよとアイは嘆息する。地味だ、地味すぎる。黒幕に相応しくない。


 マーサの言葉にマジかよとガイは嘆息する。地味だ、地味すぎる。そして危険な仕事でもありそうだ。俺に相応しいので、遠慮したい。


 二人の思いは重なり合い、またもやガイは酷い目に遭うことが決定した。ブラック企業から逃れられない社畜ガイであった。





 王都を出て、再び鬱蒼と草木が生い茂り、木が並び立つ森林にガイはいた。


「親分! 狩りは浅い層だと言っていませんでしたか? マーサの話を聞いていましたか?」


「あ〜、あ〜。聞いていまつよ? 聞いているでつよ?」


 やる気のなさそうな幼女の声がガイの頭に響く。


「なので、もう少し奥に行きまつよ。ほら、どんどん奥に進んで」


「親分は家にいるから良いですけど、あっしはさっきから命の危険に遭っているんですが? この森はやはり異常ですぜ!」


 泣き言を言うガイ。周囲は既に陽がささらない木陰に覆われている薄暗い場所となっている。


「あたちは幼女でつ。そんな危険な森林には入るつもりはないでつ」


 のほほんと答えるアイ。家の中なので危険はない。誰も入るなと伝えてあるし、ゲーム筐体のベッドに寝っ転がっているので、のんびりとした場所である。


「痛っ! また噛まれたぞ畜生!」


 草むらから飛び出してきた蛇に足を噛まれて、ガイは悲鳴をあげる。もうこれで何回目かとため息を吐きながら、50センチ程度の足に噛み付いている蛇の頭を掴み、あっさりと捻り潰す。


「あんまり強くない毒で良かったでつ。ステータスって、偉大でつね」


「そうだな。状態異常はステータスの素のぼうぎょを貫かないと効かないからな。この程度の蛇の毒の牙ならガイには効かないぜ」


「効いたらあっしはとっくに死んでますよ」


 おしゃべりをしながらも、忠実に奥へと向かうガイを確認しながら、ステータスボードの表記を見る。蛇の素材が手に入ったのだ。


「なぁなぁ、蛇の素材が手に入りまちたけど、※蛇 ピット器官って表記されてまつが、これってなぁに?」


 好奇心旺盛な幼女はお目々をキラキラさせて、質問したがりの幼い姿を見せちゃう。中身はおっさんなので、本当に外見詐欺である。


「※は素材のみに使えて、ステータスアップには使えないということ。ピット器官はその素材の特性が記載されているんだぜ」


「あぁ……そういった制限があるのね。考えられているなぁ」


 ベッドにゴロゴロ転がって、アイはため息を吐いちゃう。よく考えられたシステムだこと。本当に隙がない。


 ステータスアップには素材が1必要だ。アイの幼女ボディなら100。ならばネズミとかを倒しまくって、素材をわんさか稼げばステータスアップは楽々だねと考えていたのだが……。


「あいつはゲームに詳しいからなぁ。裏技は禁止にしているんだぜ。ゲーム筐体をアイテムボックス代わりにするのは想定外だったらしいけど。弱体化パッチはあてるつもりはないから、そこは安心してよいぜ」


 後ろ手に組みながら、マコトが弱体化パッチは最悪だと、あいつは怒っていたからやらないぜと教えてくれる。


「さすがは女神様。それならスキルの使用は安心していいでつね」


 アイとマコトがそのまま重要な話。即ち、保存食糧は1日1食にしようと話していると、ほんぎゃあと、またもや情けない声が聞こえて画面へと視線を向けると、狼の群れに今度は襲われているガイがいた。


 襲われすぎだろと、苦笑をしちゃうアイであるが、少しおかしいなと首を傾げる。ガイはあれでもステータスが高い。なんでこんなに不意打ちを受けるんだ?


「……そうか、隠れる系のスキルが野生動物にはあるんでつね。気配察知がないと厳しい場所でつか」


 ピンときた幼女である。歴戦の勇士たるアイはすぐに理解した。オタク貯金があるおっさんだとも言えるかも。


 恐らくはこの危険極まりない森林で、弱い魔物たちが手に入れたスキル。標準で搭載されていると推測する。そして、そんな敵を察知する気配察知のスキルも。


 アイは元は化け物溢れる危険な地域を渡り歩いていたおっさんである。そんな過去は幼女にはいらないよと、紳士たちが叫ぶかもしれないが、おっさんである。


 気配察知などもスキルという明確な技術ではないが、持っていたのだ。その技術はどうやらスキルには劣るらしいと舌打ちする。が、ここでスキルを手に入れれば良いことなのだ。


「幸いそのスキルを持っている犬しゃんはたくさんいるみたいでつしね」


 ガイの方がステータスは高いが、数に圧されて苦戦をしていた。泣きそうな表情で戦っているので、情けないことこの上ない。しかしながら、これ以上ダメージを蓄積させるわけにはいかない。


 ニヤリとちっちゃい犬歯をみせながら、むふふと幼女は笑い宙からコインを生み出し手へと乗せる。

 

「ゲームの始まりでつね」


 そう言って、アイは金色に輝くコインを使用して、ゲームをスタートさせ、ガイの身体へと意識を移すのであった。




 ガイぼでぃへと意識を移し、周りを見渡す。2メートル程度の大きさの緑の毛皮を持つ狼たちが牙を剥き出しにして、こちらを囲んでいるのが確認できる。その数は20程度。涎を垂らし、獲物を見る目だ。


「あいつらはウォードウルフ。ステータスは平均17、素早さが少し高いんだぜ」


 カウントしてやったぜと、マコトが敵の名前を教えてくれてくれるが、魔物は素早さが高いやつらばかりなの? まぁ、狼なら当たり前か。


「さて、俺はさっきとは違う存在なのだが、野良犬たちはその違いがわかるかな?」


 獰猛な笑みにて、山賊アイは片手に斧を構え、もう片手に剣を持ち身体を屈めて身構える。


 狼たちは情けない小物ガイから、勇者アイに変わったことにもちろん気づかずに襲いかかってくる。なぜ勇者なのか? 勇者は死を恐れないからだ。今のアイには相応しい。死んでもガイだしね。


 疾走しながら、狼が横から迫ってくるのをちらりと確認して、腕を引き絞り、踏み込み斧を投げる。


「斧技 トマホーク」


 魔力に覆われた斧は赤い光を残光として、狼を斬り裂きそのまま後ろにいる数匹も巻き込む。


 さらに右と後ろから連携をとって、口を開けて噛み付こうとする狼へと剣を突き出す。


「剣技 ソードスラッシュ」


 口へと突き入れた剣を90のちからを持つ腕力で無理矢理振るう。狼の胴体から剣刃が貫き現れる。4メートルほどの赤い光の刃。ソードスラッシュは剣の間合いを伸ばす技である。


 その伸びた刃を身体を力強く回転させて、アイは周りの狼を巻き込み斬り裂く。悲鳴をあげて狼が断ち切られ、周囲に血臭が広がっていく。


「リターンからの、トマホーク!」


 回転した身体を止めて、ざりざりと踏み込む足が地面に擦れるのを聞きながら、アイは手元に斧を引き戻し、そのまま間髪入れずに再び投擲をして、残りの狼を狙う。


 斧の死の回転に狼たちは躱す暇もなく斬り裂かれていくのであった。


 手元に斧を戻して、アイは血塗れの斧を自動修復にて奇麗にして、ニカリと強者の笑みで狼たちを見据える。


「素材狼3、知識因子が気配察知2、気配潜伏2か。なかなかの回収率だな。どちらも俺が取得っと」


 狼たちは一瞬の攻防で自分たちの群れが半壊し、逃げるかどうか迷いを見せるが容赦はしない。


「残りの狼でもう一度知識因子が出るか、俺の幸運度を試してみるとしようか」


 狼よりも狂暴な山賊アイは、地を蹴って残りの狼へと襲いかかるのであった。



「また、気配察知2、気配察知2をゲット。狼素材は1。そこそこの稼ぎだったな」


 ポンポンと担いだ剣で肩を叩きながら、アイは満足にしていた。周りには逃げることもできずに倒された狼たちの死骸。


「素材の組み合わせで色々なキャラも作れるから、あとで試せば良いぜ」


「なるほど。あとで試してみるか。それにしても、この狼たちの毛皮が売れればなぁ」


 マコトの言葉にキャラ作成が楽しみだと考えながらも、狼の死体を見て惜しいと思う。


 解体などは自分にとっては手慣れたものだ。地球では金になるミュータントもいたので、倒したら解体技術は必須であったし。


「でも、解体した毛皮なんか、絶対に買い叩かれるし、鞣すにも専用の器具が……んん、待てよ? もしかしたらこれは使えるかも?」


 良いことを思いついたと、アイは口元を笑みへと変えるが、すぐに武器を身構える。


「血臭に釣られたか? まぁ、ちょうど良いか」


 バキバキと草木を押し倒す音が聞こえてきて、ノッシと現れた巨大な猪を見て、血の臭いは危険だねと、それでも猪なので嬉しく笑う黒幕幼女であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ガイさんは実際強者と言っても差し支えないレベルなのに小者っぽいところがキュートですね。 そしてマコトの中の人はあのマコトだったんですね。 通りでバカっぽい、いやカワイイわけです。
[一言] 弱体化はクソ。 バランス取るとかいってるが大抵運営がやりたいことのごり押しなんだよね。
[良い点] ノホホンめがみさまによる裏技禁止令、スーパーチートがないなら裏技でスタートダッシュの思惑が…(._.)確実にめがみさまはオッさん幼女を眺めておりますな、カフェオレとケーキを並べて。 [気に…
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