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星が降る

作者: 猫じゃらし

 

 冬の夜空はくもりなく澄んでいて、

 キラキラ光る星がよく見える。

 今日は流星群の日だと

 みんなこぞって外に出た。


「知ってる?あの話」


「知ってる知ってる!あの話」


 みんなよく知るあの話。

 ボクも知ってるあの話。

 流星群の星の話。


「落ちてきた星を拾って」


「願いを込めて」


「空に返すと」


「願いが叶う!」


 だから、みんな外に出る。

 流星群から溢れた

 迷子の星を拾うために。

 願いをこめて空に返すために。


 キラキラ


 ピカピカ


 色とりどりの綺麗な星達が

 濃紺の夜空を華麗に舞う。


 キラキラ


 ピカピカ


 まるで自分が一番輝いてると

 競い合っているかのように。


 キラキラ


 ピカピカ


 コロンッ


 濃紺の夜空から溢れた

 水色の星。

 ボクのもとに落ちてきた。

 願いを込めて、空に返そう。


 ボクの願いは……


「ねぇ、その星、ちょうだい」


 話しかけてきたのは男の子。

 片足に包帯をぐるぐる巻いて

 松葉杖をついている。


「サッカーの試合があるのに、ケガが治らないんだ」


 そうなんだ、かわいそう。


「ケガを治したいよ。だからお願い、その星、ちょうだい」


 うん、いいよ。

 君のケガが治るように、ボクもお願いするね。


「ありがとう」


 男の子に水色の星をあげた。


 キラキラ


 ピカピカ


 まだまだ光り続ける

 色とりどりの綺麗な星達。


 キラキラ


 ピカピカ


 コロンッ


 今度はピンク色の星が

 ボクのもとに落ちてきた。

 願いを込めて、空に返そう。


 ボクの願いは……


「ねぇ、その星、ちょうだい」


 話しかけてきたのは女の子。

 恥ずかしそうにうつむきながら

 小さな声で教えてくれる。


「あのね、好きな人に告白したいの」


 そうなんだ、素敵だね。


「でも、恥ずかしくて勇気が出ないの。だからその星、ちょうだい」


 うん、いいよ。

 君の告白がうまくいくように、ボクもお願いするね。


「ありがとう」


 女の子にピンク色の星をあげた。


 キラキラ


 ピカピカ


 華麗に舞う星達は

 濃紺の夜空を鮮やかに彩る。


 キラキラ


 ピカピカ


 コロンッ


 今度はきみどり色の星が

 ボクのもとに落ちてきた。

 願いを込めて、空に返そう。


 ボクの願いは……


「その星、譲ってくれないかい」


 話しかけてきたのはおじいさん。

 なんだか元気がないよ。

 悲しそうな顔をしてる。


「おばあさんが病気なんだ」


 そうなんだ、辛いね。


「治してあげたいんだ。だからその星、譲ってくれないかい」


 うん、いいよ。

 おばあさんの病気が治るように、ボクもお願いするね。


「ありがとう」


 おじいさんにきみどり色の星をあげた。


 キラキラ


 ピカピカ


 濃紺の夜空が明るくなってきた

 星達の華麗な舞もそろそろおしまい


 キラキラ


 ピカピカ


 コロンッ


 今度はオレンジ色の星が

 ボクのもとに落ちてきた。

 願いを込めて、空に返そう。


 ボクの願いは……


「その星、僕達に譲ってくれないかな」


 話しかけてきたのは男の人と女の人。

 女の人は大きなお腹をしてて

 2人とも、とっても幸せそう。


「もう少しで、赤ちゃんが生まれるの」


 そうなんだ、楽しみだね。


「この子が無事に生まれるように、お願いしたいんだ。だからその星、僕達に譲ってくれないかな」


 うん、いいよ。

 赤ちゃんが無事に生まれるように、ボクもお願いするね。


「ありがとう」


 男の人と女の人にオレンジ色の星をあげた。


 キラキラ


 チュンチュン


 空はだんだん白けて

 オレンジ色と黄色の光が輝く。

 星とは全然違う

 大きなまんまるの朝日。

 小鳥達のさえずりは

 朝を迎える音楽隊。


 濃紺の夜空はどんどん姿を消して

 色とりどりの星達も消えていく。



 コロンッ



 おや?

 ボクのもとに

 青色の星が落ちてきた。


「えーん、えーん。お空に帰りたいよ。早くしないと帰れなくなっちゃうよ」


 青色の星は大きな声で

 涙をたくさん流して泣いていた。


「えーん、えーん。お願い、お空に帰れるように願いを込めてよ」


 うん、いいよ。

 君がお空に帰れるように、ボクが願ってあげる。


「ありがとう!」


 涙の止まった青色の星は

 キラキラ光る金色になっていく。


「君の願いは何?」



 ボクの願いは

 ボクの願いはね、


『お空に帰って、また輝きたい』


 ずっとずっと、

 願い続けていたんだ。



「ああ、君も星なんだね。お空に帰れなくなった星なんだね」


 金色になった星は

 輝かなくなったボクを見て

 かわいそうな顔をした。


 濃紺の夜空から溢れたボクは

 誰にも気づかれることなく、

 誰にも拾われることなく、

 輝きを失い、

 お空に帰れなくなった。


「一緒に帰ろう。お空に帰ろう」


 金色の星がもっと輝いて

 まぶしいくらいにキラキラすると

 そのキラキラがボクを包んで

 ボクもキラキラ輝いてきた。


 金色の星と

 銀色のボク。

 やっとやっと

 お空に帰れるんだ。

 キラキラまぶしく輝いて

 濃紺の夜空を彩る星になる。



 一緒に帰ろう。お空に帰ろう。



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― 新着の感想 ―
[一言] 優しい彼に最後に訪れた奇跡。 楽しく読ませていただきましたー。
2023/04/25 20:38 退会済み
管理
[良い点] ピカピカ キラキラ コロン 可愛いリズムに何度も読みたくなります。 [一言] 淡い絵の具で描いたようなそんな優しい情景が脳裏に浮かびました。それなのに、ボクはなんだか寂しそう。 ボクの願い…
[良い点] 「ボク」の願いが成就するまでの変遷が、面白い構成となっていると思いました。  先の二人は、自分のために願う。  後の二人は、誰かのために願う。  最後の一人が、君とボクのために願う。 …
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