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武田の鬼に転生した歴史嫌いの俺は、スキルを駆使し天下を見る  作者: こまめ
第3章 第二の、転生 (1546年 2月〜)
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第九十五話 幸綱、暴走

お待たせいたしました、三日ぶりの更新です。

 「上杉憲正が笠原へ援軍を遣わせたようにございます。

  それに際し、内山城にいる者等に策を講じようと参りました」


 城内の一室で、幸綱は上原に伝える。

 ただ上原の表情は依然険しく、幸綱に対し鋭い視線を向け続けている。

 此方に援軍は寄越さないのか。上原からの問いに、幸綱は首を縦に振る。

 返答に対し、上原は素直に頷く姿勢を見せた。


 少し心配ではあったが、志賀城に人員が必要であること、援軍が内山城を通らないと踏んだことを理解してくれたのだろう。

 しかし、幸綱が此処に来た理由はそれを伝える為ではない。彼らに策を講じる為である。


 「万一の為に、城の四方で火を焚いて貰いとうございます。

  そして兵を東側、いわば内山峠の方に集める。

  内山峠から見た我らを、大軍だと思わせるのです」


 あえて峠を塞ぐという選択肢を取らなかったのは、全て山本晴幸の我儘が生んだことだと苦笑した。

 可笑しな男だな。そう口にし、上原は屋敷から外を見る。

 夏空の下、緑が生い茂る庭に蜂。汗が滲む暑さに、照り付ける日差し。


 「伊賀守殿、一つ御願いしたきことがございます」

 「何じゃ」

 

 鋭い眼差しを向ける幸綱。

 次に幸綱の口から発された言葉に、上原は驚嘆する。



 「内山城に集う兵の半数を、志賀城へ寄越してはくれませぬか?」











 「一つ訊ねても良いか」

 陣の隅で語り掛ける晴幸。

 俺は盤上に広げられた地図を見つめたまま応える。



 「幸綱のスキル、お主は如何考える」

 


 思考が止まる。目を向けると、真剣な表情の晴幸が俺を見ている。

 幸綱が持つ〈目を見た相手の思考が読み取れる〉スキルと、〈相手の寿命が見える〉スキル

 晴幸が問い掛けているのは、彼の持つ三つ目のスキルについて。


 「あの男は己について語ろうとせぬ。

  それには何か訳があるのではないかと思っておったが、

  如何やら、儂らが考えておる以上に、恐ろしいすきるのようだ」

 「……恐ろしい?」


 晴幸は、それ以上を語らなかった。

 いや、スキルの素性が明らかにならない限り、言を発する事が出来なかったからだろう。

 俺にはそれが、不安の根源として心に根付いてしまっていた。







 「ば、馬鹿を申すな!!」

 上原は思わず立ち上がる。周りに控える者達もざわつき始めた。

 流石に攻め込まれればひとたまりもない。それは幸綱にも分かっている。

 だが命じたのは晴幸であり、己ではない。


 「ふざけるな、真田殿。

  儂は其方等の遊びに付き合っている暇は無い」


 部屋の両側に並ぶ男達。彼らは皆揃い、幸綱を睨んでいる。

 彼等はどうやら、元から従う気はないようだ。

 気持ちは分かるが、仕方ない。



 このちからを使いたくは無かった。

 


 幸綱もまた立ち上がる。そのままゆっくりと、上原の手前まで歩を進めた。

 「……何じゃ……?」

 上原の問いに、鋭い眼差しを向けた。



 「許せ、伊賀守殿」



 その途端、幸綱は上原の頭を掴む。

 彼の行動に、周りの男達は驚嘆の表情を浮かべた。



 「なっ……何をする……っ!!」

 「上原伊賀守、そちはこれより我がしもべじゃ」


 

 今までとは打って変わった、図太き声。

 上原は掴まれた腕を振りほどこうと暴れるが、鋭い眼光を向ける幸綱を前に、直ぐに力が抜けたように動かなくなる。

 腕がだらんと下がり、口は半開きの男が発する、微かな声。




 「……はい、主様」




 その言葉を聞き、手を放す幸綱。

 「い、伊賀守、殿?」


 上原はゆっくりと振り向き、言った。

 その目に、光は灯らない。



 「其方等、此れより主君の命に従い、志賀城へ向かえ」



 上原の変化に、男達は揃って混乱を始めていた。

 幸綱は目を細め、上原の背中を見ている。

 彼の姿はまるで、忠誠を誓った男の様。


 



 〈触れた相手を一定時間、主従関係にできる〉スキル

 それが彼の持つ、三つ目のスキルである。


自らの力を、恐れる者

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