「批判」という名の「揚げ足取り」はいらない。
2018/08/24 誤字修正
補記:辞書からの引用で馴染みのない言葉を使用しているため、その意味を以下に記します。
【顕彰】(隠れているよいことを)明らかにあらわすこと。
そもそも、批判って何でしょう。まずはその言葉の意味を、辞書で引いてみたいと思います。
一部の人には有名な「新明解国語辞典」第四版で、「批判」という言葉の意味を調べてみました。
【批判】物事のいい点については正当に評価・検討する一方、成立の基盤に関する欠陥については徹底的に指摘・顕彰し、本来どうあるべきかを論ずること。〔文脈により、「揚げ足取り」の意にも用いられる。……以下、例文略……〕(新明解国語辞典 第四版より引用)
……ちょっと、「徹底的に指摘・検討」の文言が気になりますが、まあ、だいたい納得できる内容です。で、問題は〔〕の中、『文脈により、「揚げ足取り」の意にも用いられる。』の部分です。
まあ、要するに、「批判」という言葉は、本来の意味に対して、違う意味に用いる人も多くて、その結果、別の意味も持つようになってしまった、そんな言葉だと思います。〔〕内の言葉は、本来の意味ではなく、後から付け加わってしまった意味だと、私は思っています。
先の話やマニュアルに書かれた「問題点の指摘」は、「本来の意味での」批判でしょう。こういった批判であれば、伝えたい相手の心情を思いやり、言葉に気を使って書けば、価値のある言葉だと思います。
では、「揚げ足取り」に関してはどうでしょう。これに関しては、意見を言う前に、私のスタンスを明確にしておきたいと思います。
私は、自分のために作品を書いています。自分の作品で誰かが喜んでくれればとても嬉しいですし、より面白い作品を目指そうと思います。
ですが、自分の作品を無理に誰かに「読んでもらおう」とは思っていません。私の作品を見て、面白くなかったのなら、読むのをやめていただきたいと思います。
――私にとって、自分の作品を面白くないのに読み進めるという行為は、もはや私に対する嫌がらせのような行為です。
そもそも、感想というのは、読まないと書けません。そして、面白いと思わなければ、普通は読み進めないと思います。「つまらない」という感想自体、ある意味おかしいのです。面白いと思わない作品には、感想が付かないのが自然です。
だから、何か感想が貰えたのなら、たとえ「つまらない」という感想でも、その読者にとって読む価値のある作品だったと、作者はそう受け取って構わないと思います。――つまり、「作品自体には見るべきものがあり」「そんな感想を残す人に悪意がある」、そう決めつけてしまって構わないと思います。
建設的な意見を伴わない、否定的な感想に価値があるのでしょうか。正直に言えば、単に「つまらない」なんて書かれたところで、その感想には、これっぽっちも価値はないと、私はそう思っています。
前の話でも書きましたが、アクセスログを見ることで、どの位の人が来て、読むことも無く立ち去ったか、判断できます。感想がなくても、どれだけの人がつまらないと思ったか、判断できるのです。
例えば、ある日のユニークアクセスが10人、一話目のアクセス数が5人で、二話目のアクセス数が2人、最終話のアクセスが1人なら、10人のうち9人はつまらないと判断したことになります。
つまらないという感想を残されてもね、私は「9人の中の1人がなんか書いていったな」としか思いません。こんな感想に、どうやったら価値を見出せるのでしょうか。
誰かにとって面白い作品には、確かな価値があります。ですが、誰かにとってつまらなくたって、その作品に価値がないことにはなりません。
面白いという感想は、その作品に価値があることを作者に教えてくれる上で非常に重要です。ですが、面白くないという感想は無価値だと、個人的には思います。
そして、面白くないのに無理に読み進めて、具体的にしたところで、その感想に価値が無いのは変わりません。――無価値どころか、そんな感想には、害しかありません。
例えるなら、好きな野球チームを(本来の意味で)批判する人と、野球が好きでもないのに、単にけなすだけの人の違いでしょうか。この二つは、全く違います。
好きな野球チームを熱心に観戦していれば、そのプレイに文句を言いたくなる場合だってあります。毎日熱心に見ていますからね、そういう人の言う文句には、ある種の説得力もあります。
けなすという目的があって、けなしやすそうな点を探すような人は、ファンから見れば「揚げ足取り」にしか見えません。「にわか」と言われ、蔑まれても仕方がないでしょう。
誰かにとって面白い作品には価値があります。そうやって読み進めた上での感想であれば、等しく価値はあるでしょう。
ですが、つまらないのに読み進めて感想を書いても、その感想に価値はありません。それは、どれだけ自分が正しいと思っても、揚げ足取りなのです。少なくとも、他のファンからは、そうとしか見えません。
そういった感想は、時に、作者よりも、その感想を見た他の読者の心情まで悪くする、そんなものだと思います。
感想を書く以上、その作品には、どこかに魅力があるはずですし、そうであるべきです。感想を書くときに、その魅力を一緒に書けば、揚げ足取りにはならないと思います。
作品よりも見苦しい、そんな「揚げ足取り」が少なくなるといいな、そう思います。