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第一話:築基


 歪んだ視界の先にあるのは、心臓を穿つざらつく視線。縺れたはずの夢や幻が広大な海となって襲いかかる。


 藻掻いて、藻掻いて、藻掻いて。


 藻掻き苦しみ、足掻いた先には掠れた声が木霊する。彷徨う魂は虚空を揺蕩い、辿り着いた楽園は、


 ――砕け落ちる悪夢の始まり。

 煉獄に入りかけた彼らは何を信じていればよかったのか、今ではもう知る由もない。


 ――救いの無い世界。

 それでも牙を剥き、崩れ落ちた自我の中で、無数に咲き乱れる"タマシイ"は残酷にも一つ残らず溶け出してしまった。


 ――穢された真実。

 それは進むべき運命だと知りながらも、彼らは愛おしき心を真っ直ぐ貫き通した。それは一度踏み入れた者は決して逃すことのない、絶望を約束された災厄の場所。


 舞台は天国と地獄の狭間にある煉獄。


 それを簡潔に表すならば旧世界の欠片が紡がれた一つの楽園。そして、絶対に交わることのなかった世界線が収束されてしまった世界の名前。


 通称――神器魔導師調教育成専門學園。


 その學園は神器を扱うことの出来る適性のある魔導師ならば、誰構わず世界の理によって半ば強制的に入学させられてしまう。どれだけ嫌だと叫んでいても、この學園に収容されてしまう事実は変えられない。


 生まれ持った適性を憎め、親を憎め、そして自分自身を呪え。


 そんな異能力ふこうを抱えた者たちが集まるこの場所に、神風の如く疾走する一人の魔導師が現れた。その者は後の第十三魔導騎士団の首領となり得る資質を持つ人間。


 あるときは、世界の一部分を破壊し尽し。また、あるときは學園の仲間たちと熱い死闘を繰り広げたり、とにもかくにも自由奔放な學園だということだけは言える。


 それは現世とは異なる夢幻の世界。

 何をしても許され、己が法だと吠える者こそが至高の黄金。そしてこの學園の存在意義として魔導師たちにはある枷が嵌められていた。


 その枷とは、言わば簡単なゲームをクリアしてもらうという試練。出題される問題を回答者たちが"協力"して進んでいくといったごく普通の学校らしいルール。


 でもこの學園はそんな甘い場所じゃないことぐらい直感的に理解して欲しい。言葉の文字通りに、ここは神器という特殊な能力に目覚めた人間たちが、魔導師としての適性を合格した者たちを調教して育成する學園。


 故に、どのような試練が待ち受けているのかぐらい容易に想像が付くと思う。


 この學園のモットーとは、命を懸けた楽しい學園生活目指そうという狂気染みた目標であり。神器と魔導師たちが共に助け合ったり、時には殺し合いが勃発する學園の姿こそが理想の黄金郷。ゆえに、今宵始まる新たな恐怖劇に皆心を躍らせているに違いないだろう。


 それは新世界を総べる神々の覇道を体験する物語であり、旧世界を塗り潰し自分好みに再構築された世界で新たな神廻ノ環に介入するといった神々の交代劇でもある。


 それゆえに、宇宙を創造した仙皇が取り決めた"五つの盟約"によって世界の法則は均一に保たれていた。


 それは絶対に改変することは不可能で、そのルールによって勝敗が決してしまった場合。それは絶対尊守されてしまう。


 盟約の内容とは以下の通りであり、




【其ノ壱】この世界におけるあらゆる渇望や夢、そして罪は何であろうと尊重される


【其ノ弐】座の争いは総て両者の同意によって成立される


【其ノ参】神々の争いは両者が対等な格と認め合わない限り成立されない


【其ノ肆】"壱"の盟約に反しない限り、神廻ノ環に介入することは誰であろうと容認される


【其ノ伍】以上の盟約に従って、神は新たな座を有することが容認される




 この五つ盟約によって、魔導師たちは神の座を巡って争い合うことが可能になるのだ。


 それゆえに、これが神廻ノ環のルール。

 そしてこの法則については以上の通りである。


 ここからは一旦話を戻し、改めて學園の説明をしていかなければならないみたいだ。


 この學園には学年という概念は存在せず、入学した時点で"適性クラス"別に割り振られてしまう。一クラスの人数は五人から十人弱と少数精鋭で構成されており。學園全体で約百人前後の魔導師達が次世代の神を目指し、切磋琢磨するのだが、盟約"其ノ肆"に従った者ならば誰でも神廻ノ環に介入することができる。


 それゆえに、學園に入学せず己で覇を唱える者も少なからず存在してしまう。


 その者らと対等に戦うことが可能な學園きってのエリート魔導師集団のことを畏怖の念を込めて"第十三魔導騎士団"と呼ばれていたりする。


 第十三魔導騎士団は百人前後の中から選ばれた十三名の魔導師たち。騎士団に選ばれるということは、神に近づいたという証明でもあり、またその席を勝ち取ることこそが學園に在学している魔導師たちの最終的な目標でもあった。


 そしてこの學園で最も次代の神廻に組み込まれる可能性が高いのは學園内最強の異能力を持つ魔導騎士団の首領。もとい、第一席こそが新たな世界の覇導神となり得る資格を持っている。


 だがしかし、第一席の座まで辿り着いたとしても次なる刺客がその席を狙いにくるため生半可な実力では直ぐに蹴落とされてしまうだろう。


 故に、第一席の座を牛耳る者は真の意味で神に近いと言っても過言ではない。しかし、今世代の學園は少し特殊――いいや、極めて異例の事態と言える。


 第一席の座を牛耳る資格を持つ魔導師が一度に三名も現れてしまったのだ。異例すぎる事態ゆえに、その存在が確認された時点で神廻ノ環は酷く傷ついてしまうだろう。最も最悪な可能性として、その者たちが本気でぶつかりあった場合だ。


 もしもそんなことになってしまったら間違いなく、神廻ノ環は大きな亀裂が生じるだろう。そして修復不可能なくらいの"巨大な穴"が空いてしまう可能性が非常に高い。


 一層や二層といった上層に穴が空くならまだしも、五層や六層を越えてまだその下にある七層、八層にまで影響が出てしまえば、神廻ノ環という絶対法則が破壊され兼ねないし、そしてそれだけは何であろうと絶対に阻止しなければならない。


 神廻ノ環が破壊されてしまうということはつまり、この宇宙そのものを崩壊させてしまう可能性も無きにしも非ず。だが間違いなく、神廻ノ環に囚われている者たちは確実に死ぬ。


 これだけはいくら神の異能力を使おうとも、絶対に逃れられぬ運命。


 決定してしまった未来ゆえに、彼らはどう立ち向かうのか。または、學園全体をも巻き込んでしまう最終試練に次世代の魔導師たちは生き残れるのか、それは、初めて神廻ノ環に組み込まれてしまった神々ですらその結末を知ることはできない。


 何故か……? そんなの決まっているだろう。

 全てを知るのは、この宇宙の創造主である"仙皇"だけなのだから――

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