88話 回想2:現地にて
「ここのはずだけど」
「住所は?」
「聞いてたのはこのあたり。
ナビが正しけりゃだけど」
「頼りないわね」
「入力した住所はこのあたりなんだよ」
その通りに運転してきたのだから、場所に間違いはないはずである。
カーナビが壊れてるか、入力した情報が間違ってなければ。
そもそも、ヨドミがあったという情報が正しいかどうかも分からないが。
「電話してみましょうか?」
「頼む」
現地にいるという者に連絡をとる。
こうなってしまったら直接聞いた方が早い。
尋ねる事に憚りがあるわけでもない。
すぐに電話をして相手につなげていく。
「こんばんは、連絡をもらった者ですが……」
自分達が目的地に到着してる事を告げ、どこにいるのかを尋ねる。
伝えられた場所から少し離れた所にいるがすぐに行くと言われた。
現地の近くにいると怪しまれるから、コンビニにいたらしい。
五分もしないでやってくるという。
「じゃあ、待つか」
路上に車を停めておくのも考える所だが、すぐに来るというなら仕方が無い。
場所だけ聞いてから車は適当な所に停めておく事にする。
「やあ、どうも」
やってきた者達は軽い調子で挨拶をしてきた。
「この近辺で活動してる者です。
どうかよろしく」
「こちらこそ」
こんな業界(?)であるが同業者はいる。
選ばれた英雄といった存在と違い、化け物と戦える人間はそれなりにいる。
絶対数で言えば相当に少ないのは確かだが、市町村くらいの地域や範囲にだいたい十数人ほどは存在する。
カズヤ達のようにヨドミを破壊する事を目的としてる者達も各地域で結束している。
それらが別の地域の者達とつながりを持っている事も珍しくはない。
今回連絡をしてきたのはそんな集団の一つだった。
規模としてはさほど大きくは無いようで、こじんまりと活動をしていたらしい。
最近になって横の繋がりを作ろうとしてるのか、接触を増やしてきている。
共同での化け物退治やヨドミ破壊で顔を見合わせた事がある。
その伝手で今回連絡が入ってきた。
彼等にしても手が回りきらないらしく、見つけたヨドミの幾つかを代わりに破壊してもらいたいという。
協力要請や応援に出る事は珍しくもないので、ノボルはすぐに引き受けたらしい。
お互い手が回らない時に助け合ってるのだから、こういった事は珍しくはない。
助け合いによって繋がりを保ち、必要な時に多くの人間を集められるようにしておく。
この業界における生き残る為の智慧であった。
封印派に化け物に対応出来る者をとられてるカズヤ達にとっては、これが必要不可欠になっていた。
相手とのよしみを深めるだけが目的でもない。
どんな人間なのかを確かめ必要もある。
同業者とはいえ、相手を出し抜こうとしたり、足を引っ張るような輩もいる。
上手く利用して美味しいところを独り占め使用とする者も。
そういった人間かどうかを確かめるためにも、ある程度の接触が必要に鳴る。
ヨドミの破壊も大事な事であるが、それを共に行える人間かどうかも調べる必要があった。
それが出来ない奴とは縁を切る。
戦闘の大半を押しつけたりするような者も中にはいる。
そういった者を早めに見つけ出しておくのも、生き残るためには大事だった。
今回、仕事を回してきたこの者達は、今のところは安全ではある。
数えるほどしかない共同作業においても、それなりに働いていた。
ただ、それがどこまで本気だったのかは分からない。
大勢の同業者がいるからそれなりに態度に気を遣っていたのかもしれない。
本当に仕事をしっかりこなす律儀さを持ってるかもしれなかったが。
そのどちらかを可能な限り見極めておきたいというのがノボルの考えだった。
マキとカズヤも、何か気になる事があったらすぐに教えろと言われている。
用心のしすぎかもしれないが、これくらい疑り深くなければ足下をすくわれかねない。
そして、警戒を怠った代償は常に命である。
それが当たり前な所で生きている。
例え無駄な努力に終わる事になったとしても、万が一の危険を排除するために様々な努力をしなければならない。
努力が無駄に終わった時には「何事も無くて良かった」と言えるようにするために。
死ねば文句も愚痴も言えなくなる。
ただ、話しをしてる限りではまともそうに思えた。
言ってる事にもおかしな所は見あたらない。
ヨドミを潰して回ってるが、手が足りなくて取りこぼしが出てしまっている。
封印派も動いてるから、なるべく早く対処したい。
少しでも手間取れば、ヨドミを封印されて破壊するのが困難になる────
彼等の口から出てきた理由はそんなものだった。
妥当ではある。
故人の能力は低くても人数を動員できる封印派の動きは早く広い。
人を一気に集めて多くの場所に同時投入してくる。
そのため、すぐに対処しなければ横からかっさらわれる可能性があった。
それを避けたいという判断は理解の及ぶ範囲だった。
「でも良いのか?
稼ぎが減るぞ」
「構いません」
相手はきっぱりと言った。
ヨドミの破壊も化け物を倒す事も修養値の入手につながる。
それを他に譲るというのは、稼ぎがそれだけ減る事になる。
なのに躊躇いは欠片もない。
「このままでは封印されるし、そうなったら稼ぎも何もありません」
「まあ、そうだな」
「それに、連中に横取りされるのは我慢出来ません。
それなら同業の皆さんにお裾分けした方がマシです」
よほど封印派には嫌悪感があるのだろう。
ヨドミを破壊してる者達は大なり小なりそういったものではあるが。
「とにかく、このあたりのヨドミをお願いします」
「はいよ」
返事をして正確な場所を教えてもらう。
事前に渡された情報の住所で間違いはないのだが、若干見にくい場所にあった。
そこに踏み込んでいって位置をおしえてもらう。
「他にも何カ所かあるんですが、そちらはウチで幾らか潰します」
「そっか。
じゃあ、その場所も教えてくれ。
後で聞くのも手間だし」
「分かりました。
でも、誰に?」
「こいつを持っていってくれ」
差し出されたのは、当然ながらカズヤだった。
続きは明日の17:00予定。
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