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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
九章

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86話 回想:復旧/回復/日常

「お疲れさまです」

「おう」

 学校から帰ってからノボル達に合流する。

 いつもどおりの挨拶を交わし、いつも通りに雑談がはじまっていく。

「で、どうだった。

 何か変わったか」

「もう全然違いますよ」

 ヨドミの破壊によって何かしら変化が出て来るのは予想していた。

 しかし、その度合いは想像以上だった。



 父親の会社にこびりついてたのを破壊しのは、大きな変化をもたらした。

 事業の低迷で大幅に業績と人数を落としていた会社だが、それらも無かった事になっている。

 むしろ業績は着実に伸び、社員数も増加、今は総数三百人を超えてるという。

 父親は名ばかりの部長から課長になっていたが、実質からすれば以前と同じかそれ以上の待遇と言えるだろう。

 家に帰ってくる時間が遅いのは変わらないが、その回数は増えた。

 以前なら、泊まりがけで仕事に追い回されていたのだから、帰宅する事が少ない。

 給与も以前の状態よりは増えてるようで、家の方も状態が良くなっていた。

 母親の方も、父親の会社の経営不振による給料の減少がなくなったので、パートそのものをやっていない。

 悠々自適という程ではないが、過不足なく回っているような印象があった。

 そのせいなのか、弟と妹も表情が明るい。

 以前はどこか顔が強ばってるように見えたが、そういった所が消えていた。

 何彼と無く母親が目をかけてるせいなのかもしれない。

 カズヤの体調不良なども無かった事になっており、学校における友人関係にも変化があらわれていた。

 まず、イジメという呼び方で誤魔化していた犯罪行為を行っていた連中が消えていた。

 周囲のヨドミを破壊していった影響もあるのだろうが、それらは元々存在しない事になっていた。

 代わりに他の者達がその位置に入っており、小学校四年の頃からおかしくなっていった学校での状況は完全に書き換わったようだった。

 気になってそういった者達が住んでいた場所を見に行ったりもしたが、カズヤに絡んでいた連中がいた家などは消えていた。

 小さな家がひしめくように集まっていたその地区は綺麗にならされ、新しい住宅地として売りに出されていた。

 そこにいた者達がどうなったのかは分からない。

 引っ越したのか、元からいなかったのか。

 カズヤの中に入ってきた新しい記憶の中にも、それらについての回答はない。

 そもそも新しい記憶の中に、該当する者達の姿がそもそもない。

 何がどう作用したのか分からないが、存在すらしてない事になってるようだった。

 それで良かった。

 居て欲しいわけではなかった。

 むしろ消えてせいせいした。

 かわいそうとか哀れとは全く思わなかった。

 それだけの事をしていたのだから。

 もし世界の変化・改変によってカズヤが標的で無くなったとしても、その時は別の誰かを犠牲にしていただろう。

 そうなる事が無くて安心した。

 いない方が良い、いてはいけない存在というのは確かにある。

 それが消えて悲しむ者はいないだろう。

 喜ぶ事はあっても。

 喜ぶのとは少し趣が違うが、カズヤは安心をおぼえていた。

 鬱陶しい者達がいない事に。

 直接手を下せなかった事が少々残念に思いはしても。



 それよりも新しく得られた環境の方が大事だった。

 仕事に疲れてはいても、どこか覇気や張りの見える父。

 家の中の切り盛りで忙しくても、そこに外での苦労が無い母。

 元気に学校に行き屈託無く過ごしてる弟と妹。

 小学校四年までは確かにあった家族の姿がそこにあった。

 変わってるのは年齢に伴う外見の変化くらいだろうか。

 それにしたって以前より悪くなってるわけではない。

 父と母は老けてはいたが。

 だが仕事以前に人生に疲れてる様子はなかった。



 カズヤ自身も周囲の人間関係で軋轢などを抱えてるわけではない。

 むしろ仲の良い友人が何人か居る。

 その事に驚いた。

 小学校の四年生から仲間と呼べるような存在を失い続けていたから戸惑いすらした。

 記憶には彼らと共に過ごしてきた出来事があるし、それを実体験としておぼえてもいる。

 しかし、変化する以前の記憶があるので、どうしても落差を感じてしまった。

 決して悪いものではなかったが。

 変わった事で以前より悪くなってる事は何一つなかった。

 学校の成績もついでに上がっていて欲しかったが。

 何にせよこれらの変化に満足していたので、何一つ問題があるとは思わなかった。



(いや……)

 そうじゃないと思った。

 変わったのではない。

 化け物が出て来る以前に戻ったのだと。

 全てが化け物の存在によって変えられたのなら、これが本来あるべき姿なのだろうと思った。

 確証や根拠はない。

 それでも、そう思えた。

 違和感を感じることもなく、それを当たり前だと。

 振り払うつもりはなかった。

 それで良いと思えた。

 問題なく受け入れられるなら、それで良いのだろうと。

 真偽を確かめる手段はないし、間違いだったとしても覆すつもりにもなれない。

 たとえ今の方が間違いであったとしても。



「で、どうする」

「何をですか?」

「この先も続けていくか?」

 問いかけにすぐに答えた。

「もちろん」

 どうせ何もしなくても狙われる。

 ならばこれからも化け物を倒し続けていくしかない。

 その為の仲間は多い方がいい。

 今、目の前にはその一人がいる。

 一緒にやっていく事に抵抗はない。

 化け物取り憑かれて良かったと思える数少ない利点である。

 逃げられないなら、せめて有利な状況に身を置くのが得策だ。

 多分に打算的であるかもしれないが、カズヤは自分にとって一番良い状況に身を置いていたかった。

「じゃあ、今日も頑張っていこうか。

 まだこの辺りにはヨドミがあるからな」

「分かってますって」

 粗方片付きはしたがいまだに結構な数のヨドミがあるという。

 それらはノボルの仲間が破壊して回ってるのだが全部を壊すには至ってない。

「お前の親父さんの会社関連でも幾つかあるようだし。

 そっちの方も頼むぞ」

「分かってますよ」

 昼間はさすがに無理ではあるが、なるべく協力するつもりだった。

 取り憑かれるなんて二度とごめんだった。

 二度と以前の状態に陥りたいとは思わない。

 今の状態を守る為にやれる事は全部やっていたかった。

 続きは20:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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