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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
六章

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55/164

55話 撤収/帰還 → 事務所にて

「おはようございます」

 一夜明け、来客の一言に寝ぼけた目と頭を向ける。

「おはよう」

 覚醒しきってない事を声の調子が伝えている。

「眠れた?」

「ええ、おかげさまで……」

「そいつは良かった」

 あくびをしながら言ってカズヤは立ち上がる。

 ソファで寝てたので寝心地も寝起きもよろしくない。

「まずはメシにでもしようや」

 言いながら出入り口の方へと歩き出そうとする。

「ああ、えっと」

「?」

「コンビニ弁当でいい?」

 確かめる為にアヤナに振り返った。



 他の者達も起き上がってきて、留守番以外はコンビニへと向かう。

 おにぎり・サンドイッチ・弁当などを買いあさり帰還。

 簡単ながら朝の栄養補給へと突入していく。

 アヤナもおにぎり二個とジュースを買ってもらい、皆と一緒に食べる事となった。

 狭い事務所の中、十人ほどの人間が囲めるテーブルなどあるわけもなく、そこかしこでお行儀悪く食事が進んでいく。

 雑然とした雰囲気が醸し出されている。

(…………落ち着かないなあ)

 そう思いながら隅っこで少しずつおにぎりを食べていく。

 対立してる立場の者達の中というのも、何となく居心地の悪さを感じてしまう。

 周りの者達は分かりやすく敵対的な対応をしてるわけではなかったが。

 ただ、さすがにそのまま何事もなく、というわけにもいかない。

「じゃ、嬢ちゃん」

 おにぎり・弁当・味噌汁をたいらげたカズヤが声をかける。

「食べ終わったらちょっとお話しいいかな?」

 ある程度予想はしていた事だが、やっぱりそうなるかと思った。

 威圧的でもないし、強制してるのでもないので断っても良いのかもしれなかった。

 しかしアヤナは無言で頷いた。



 食べ終わってゴミをまとめて大半の者達は外へと出て行く。

 これからまたヨドミ破壊に赴く事になる。

 事務所にはアヤナとカズヤ、それとコウジだけが残った。

 所長と事務員が出社するまでにはまだ時間がある。

 コウジは窓の外を見るとはなしに目を向けていた。

 まだ警戒は怠れない。

 そんなコウジのすぐ横、所員用のテーブルを挟んで向かい合う。

「そんでね……」

 どこから話したものかとカズヤは考える。

 言いたい事は幾つかあるが、順番に何を出すかは決めかねる。

 これが意外と難しく、ちょっと狂うだけで説明が面倒になったり誤解を招く事にもなる。

 手間と効率も変わってくるので、変に切り出すことが出来ない。

 とはいえ、何も言わずに時間が過ぎていくのも無駄ではある。

「何から話せばいいか分からんけど」

 結局そんな所から話しは始まっていった。



「もう分かってるとは思うけど、俺らは化け物を倒してるし、そいつらが出て来る場所を潰してる。

 ここまでは良いかな?」

「はい」

 基本的な事なのでアヤナは頷いた。

 今更、と言う程基本的な事だった。

「で、そのやり方でそっちとこっちで違うっていうか。

 まあ、考え方の違いで対立してるわけだ」

「そうみたいですね」

「その事を君がどう思ってるかは分からんけど、とりあえずこっちの言い分も聞いてもらいたい。

 最終的にどう思うかは君に任せるけど」

 そこはアヤナも気になってはいた所だ。

「分かりました」

 カズヤの言葉を、説明を求めていく。

 とにかく分からない事が多すぎる。

「ありがと。

 そんで、どこから説明したらいいかって事なんだよね。

 俺も全部を知ってるってわけじゃないし。

 まあ、知ってる範囲でしか教えられないけど」

「それで構いません。

 お願いします」

 それでもアヤナよりは何かを知ってるはずである。

 それが分かるだけでもありがたい。

「とにかく知りたいんです。

 あの化け物って何なのか。

 どうして襲ってくるのか。

 何が目的なのか。

 そういうのが全然分からなくて」

「ああ、それは俺らも分かってない」

 嘘を吐くわけにはいかないので正直に答える。

「あいつらがどうして発生するのか、どこから来るのかってのは全然分かってない。

 人を襲う理由も。

 ただ、襲ってくるから撃退しなくちゃならないって思ってるだけだ」

 このあたりは防衛本能と言える。

 誰だって生命や財産、大切なもののために必死になる。

 襲ってくるのが化け物というだけで、その事に変わりはない。

「まあ、連中に取り憑かれたら酷い事になるのは分かってる。

 俺らはそれに対抗する能力がある。

 だからやってる。

 そんなもんだよ」

 その言葉に少しだけ落胆する。

 多少は謎が解けると思っていたので。

「まあ、なんでこんな力があるのかも分からんけどね。

 襲われてるのは他にもいるはずだし、それなのに俺らがこういう力を持てたってのも疑問だし」

「そこも分からないんですか」

「全然だ。

 だいたい、こんなステータス画面が出て来て、経験値みたいな修養ってのがあって、これを使って能力を伸ばすなんて。

 こんなゲームみたいな事になってるってのが、もう理解を超えてるよ。

 何の冗談だって思う」

 これは他の者達も同じように考えていた。

 なんでこんなものが表示されるのか。

 化け物を倒す事でどうして修養値なるものが手に入るのか。

 これを用いる事で、どうして金銭や能力、更には幸運などが手に入るのか。

 これらはさっぱり分かってない。

 ただ、そういうものが備わったとしか言いようがない。

「あるなら上手く使っていくって事で納得するようにはしてるけどね」

 だからといって疑問が無くなるわけではない。

 化け物の存在と同様、これらも謎としてそのまま残っている。



「だったらもう一つ」

「なんだ?」

「どうしてヨドミを壊してるんですか」

 それはアヤナにとって大きな疑問だった。

 破壊してしまえば周囲が変化してしまう。

 消えてしまう人もいるという。

 それなのにどうして破壊を躊躇わないのか。

 それはアヤナに理解出来ない事だった。

「それはねえ……」

 カズヤもどう説明しようかと考えてしまう。

 相手を納得させるだけの材料があるかも分からない。

 むしろ、反発されるだけかもしれない。

 ただ、正直に言う以外に無いのも確かである。

 下手に嘘を吐けば、後々停滞しっぺ返しがやってくる。

 そう決まってるわけではないが、経験的にそう思わざるえない事を幾つか経験してる。

 真相を隠す、隠蔽する、相手が誤解するよう誘導する事も含め、嘘を吐いて良い結果になる事などほとんどない。

 相手が嘘を吐いてたりこちらを騙そうとしてる輩などではない限り。

 しょうがいない、と思いながら自分達の本音を語っていく事にする。

 目の前の女がこちらを騙そうとしてるようには見えなかったので。

 それに、言っても損になるわけでもない。

「それはなあ……」

 思う所を語り出す。



「壊す前の状況って見た事あるかな」

「いえ、特には」

「まあ、封印してたらそうそう見る事はないと思うけど」

 言いながら、どう伝えていこうか考えていく。

「まずね、全然違うんだよ。

 壊す前と後とで」

 それは決定的な差である。

「確かに変わっていく。

 破壊する前までいた人が消える事もある。

 でも、それで悪くなってるのかっていうと、そこが微妙でね」

「どういう事ですか?」

「確かにいなくなるというか、消える奴もいる。

 昨日、化け物とやりあった後をおぼえてるか?」

「ええ、まあ」

「思い出したくないかもしれんけど、その時倒れた奴らが消えてったよね」

「はい……」

 カズヤの言う通り、仲間が消えていった。

「まあ、あんな調子でさ、巻き込まれた中で死ぬと消えて行くんだよ。

 この世から完全に。

 それと同じで、ヨドミを壊すと一緒に消えていくのもいる」

「じゃあ、なんで」

 それが分かっていながら、それでも破壊する理由が分からなかった。

「消えて行くのがね、まあ、消えた方がいいようなが多くて」

「…………あ」

 その言葉に思い出す。

 カズヤが昨日言っていた事を。

『壊れてるのが変わって何が悪いんだ?』

 そこに何か関係があるのかと思った。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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