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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
五章

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51話 接触/衝突/交戦/応戦 → 混戦

 率いてる化け物がそうであるように、トガビトも似たような姿をしていた。

 違うのは、人間の体を元に変形してるという事だろう。

 腕は太く長く、足は細く長く。

 頭などは人間の形をそのまま保ってるので不気味さが増している。

 それが屋根や壁を伝って一気に接近してくる。

 今までの化け物よりも速く。

 カズヤの拘束もコウジの銃弾も避けて距離を詰めてくる。

 他の二人も気をぶつけたりしてるが全く当たらない。

 そうこうするうちに目前まで一気に迫る。

 が、突進してきた勢いがいきなり止まる。

 仲間の一人が作った気力の障壁によって、動きが遮られていた。

 投擲の方向に一定の範囲でしか設置できないが、化け物どもにとっては障害になる。

 気力同士がぶつかりあって互いに相手を打ち消し合っていく。

 一瞬だけ動きが止まる。

 そこを狙ってカズヤが拘束をかける。

 カズヤも引き金を引く。

 気力を飛ばし続けていた仲間も、ここぞとばかりに当ててくる。

 それらが一斉に放たれ、全てが命中していった。

 トガビトは体の一部を失い、動きに制約が課せられる。

 だが、まだ死んではいない。

 拘束をかけられるも動きそのものは全く止まってない。

 カズヤの気力より、相手の力や意志が上回ってるからだった。

 雑魚ならともかく、一定以上の力量をもった相手だと完全に封じる事は出来ない。

 それでも、動きはかなり落ちている。

 先ほどまで相手にしていた化け物の方が、まだ速い。

 そこを狙ってカズヤは、更に拘束を重ねていった。



 動きが鈍ったせいで攻撃が当たりやすくなる。

 重ねられていく拘束の網によってより一掃動きは制限され、カズヤの銃弾は次々に当たっていく。

 気力を放って打撃を与えている仲間は、より一掃大きな気力をぶつけていた。

 さすがにトガビトも逃げだそうとするが、それの背後に展開された気力の壁が阻む。

 本来ならば敵を止めるのが普通であるが気力の壁であるが、相手を逃がさないように逃げ道をふさぐのにも使える。

 逃げ道を失ったトガビトまで一気に詰め寄り、カズヤは刀を振りおろす。

 気力だけで成り立ってる化け物とは違った手応えが返ってくる。

 まだ残ってる人間の部分に鋼が食い込んでいる。

 トガビトを相手にしてる時によく感じるものだった。

 構わず刀で切り裂いていく。

 核となってる心臓を切き、トガビトを消滅させていく。

 気力の凝縮していた部分も、化け物としての気に侵されていた人間の部分も共に。



 襲ってきたトガビトどもが消えた。

 あとは境界化が解除されるのを待つだけになる。

 しかし、今回はそうはいかなかった。

 耳に無数の羽音が聞こえてくる。

 見上げた頭上に、数多くの虫型の化け物が飛んでいた。

 その足に別の化け物を抱えて。

 カズヤ達が見上げる前で、それらを虫は放していく。

 次々に地上に新たな敵が降ってきた。



(凄い……)

 圧倒的だった。

 カズヤ達の強さを初めてみたアヤナは、自分達との差に呆然としてしまった。

 何人もの仲間を手にかけてきたであろう化け物達を、トガビトを彼らはあっさりと倒してしまった。

 トガビトはユガミと同じくらいの強さをもつと聞いていだけに、印象はとにかく鮮烈だった。

 自分達だけでは、これだけの敵を相手にまともに戦えたかも分からない。

 だが、その感動も長くは続かない。

 空から聞こえた羽音と、そこから落ちてくる化け物。

 慌てて安全な所に身を翻すが、何人かが化け物の下敷きになった。

 それを避けられても、着地してきたものに、あるいは空から襲ってくるものに次々と襲われていく。

 反撃はしているが、ほとんど効果があがってない。

 倍以上の敵がいるのだから当然だろう。

 一匹の攻撃をしのいでも、別のものが襲ってくる。

 一匹に傷を負わせても、無傷の敵はもっといる。

 多少は能力のある者達が何とか切り結んでるものの、いずれ数に押し切られるのは見えている。

 その中でアヤナは自分に出来る事をと塩をまいたりしている。

 しかし、多少は化け物をひるます事は出来るが決定打にはなっていない。

 そもそも、空を飛んでる化け物に、地面の上の塩など全く意味が無い。

 線香でも焚けば少しは効果があるかもしれないが、火をつけてる時間がない。

 それに、つけたとしてもこうも開けた場所では効果が期待出来ない。

 とにかく近寄ってくる度に塩を投げる。

 それくらいしかやれる事がなかった。

 強制的に戦線を離脱させられた(極限までに穏便に言えばだが)者達の道具などを手に取る事が出来れば、もう少し抵抗は続ける事は出来るかもしれない。

 しかし、そこまで行く間にも化け物がいる。

 個別に分断されて仲間の協力も得られないとあっては、そこまで行き着く事もできない。

 たかだが二メートル三メートルの距離であるのに。

 今も塩をまいてるアヤナの周りを、地上に降りた化け物が囲んでいく。

 塩があるのである程度以上は近づいて来ないが、逃げ道はふさがれてしまっていた。



「アヤナ!」

 ユウキが大声をあげているが、そちらに行く事も出来ない。

 ユウキ自身、自分の事で手がいっぱいでアヤナの方に向かう事も出来ない。

 頭上には虫型の化け物が飛んできている。

 逃げ場は完全に無くなった。

 あとは上から攻撃されて終わるだろう。

 それでも少しは反撃しようと塩を握る。

 近づいてきたら投げつけてやろうと。

 だが、一匹だけならともかく、何匹もやってきたらどうにもならない。

 今も別の所で、取り囲まれた誰かが虫に上から襲われている。

「うわああああああああああ!」

 悲鳴を上げながらその者は中空につり上げられている。

 一匹だけではなく二匹三匹と囲まれて空に引きずり上げられていた。

 その者に、虫型の化け物が、尻から突き出した針を突き刺す。

 針というより杭と言った方が良い大きさのそれは、ずぶりと呆気ないほど簡単に体に突き刺さっていった。

 上がっていた悲鳴がすぐに消える。

 それで事切れたのか、虫につり上げられていた者は、だらんと手足を垂らした。

 自分が辿るであろう未来図をそこに見た。

 足が震え、歯が鳴っていく。

 まだ最後の一太刀をあびせようという意志はあるが、恐怖がそれを上回ろうとしていた。

 続きは明日の17:00予定。

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