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5話 内情 → 調査

(助かった……)

 酷い話だが、そう思ってしまう。

 巻き込まれた女の子を、ユウキ達に押しつけた事に。

 説明とその後の面倒を押しつけた事で、作業に専念する事が出来る。

 放り出すような形になったのは申し訳ないとは思いつつ。

 しかし、ユウキ達に絡まれるのを阻止し、足止めする事も出来た。

 おかげで調査の方を進める事が出来る。

(ごめんね、こんな事しちゃって)

 胸の中であやまりつつ、やる事をやっていく。

 今なら邪魔される事はない。

 先ほどの人影が出て来た場所を早く見つけたい。

 わずかであっても先んじてる今のうちに。

 同じように異形の化け物を倒すという目的を持っていても、ユウキ達とでは方針などが異なる。

 その差異のおかげでどうしても衝突してしまう。

 それでもいつもは何とかしているのだが、手間がどうしてもかかってしまう。

 今回、それが無いのがありがたい。

 敵に襲われる可能性も高いが、そちらの方はさして危険とは思ってない。

 先ほど見た人影の強さから、今回の相手はさほど強くもないだろうと予想していた。



 人影のような末端の者も含めて、強さはだいたい本拠地の規模に比例する。

 本拠地となってる空間と、その主が強力であればあるほど、末端も強くなっていく。

 出現する数も増えていく。

 なので、遭遇戦などでの敵の強さが、本拠地の強さを計る手段にもなっている。

 今回の場合、強さはかなり低い。

 本拠地のほうもそれ相応だろうと考えられた。

 カズヤ一人でもどうにかなるくらいに。

 だからこそ、先に見つけておきたかった。

 ユウキ達が見つけてしまえば、先に処理されてしまう。

 そうなったら手を出すのが困難になる。

 それだけは避けたかった。



 調査自体は地味で単調なものになる。

 やり方自体も簡単なもので、化け物が残す痕跡を検出していくだけである。

 それをたどって本拠地の場所を見つけていく。

 基本、どんな化け物も本拠地となる場所から出てくるので、足跡と言われる気配の残滓を探ればたどり着く。

 ただ、時間と共に消えていくので、最後までたどれる事はほとんどない。

 たいていの場合途中で途切れる。

 その為、途切れた所から本拠地までの間は調査する者達が探さねばならない。

 足跡の軌跡から大雑把な方向性などが分かるので、ある程度の絞り込みは出来る。

 歩いてきた方向に、出現した場所があるはずなのだから。

 そこからは地道な作業となる。

 ただひたすらに可能性のある地域を歩き回り、気配のおかしな場所を探していく事になる。

 本拠地の周辺は境界になってる場合が多いので、踏み込めばすぐに分かる。

 近くになれば専用の道具に反応も出る。

 それでも、該当する地域が広いと探すのが面倒になる。

 なので化け物に遭遇したら、出来るだけ素早く片付け、足跡を辿る必要が出てくる。

 先ほどは巻き込まれた者がいたので、それも無理だと思っていたが。

 運良くユウキが出て来てくれた助かった。

 おそらく彼女らも足跡を辿っていたのだろう。

 絶好の機会だった。

(いや、あの娘には本当に感謝だわ)

 一度は面倒だと思ったが、おかげでユウキ達を足止めする事が出来たのだから。

 これで足跡を辿る事も出来なくなる。

 どんなに急いでも数時間ほどは足止めをくらう。

 その間に足跡は消えていき、調査しなければならない場所が拡がっていく。

 先にカズヤが本拠地を見つける可能性がそれだけ高くなる。

 この機会を与えてくれた、名前を知らないあの娘には感謝せねばならなかった。



 移動そのものには折りたたみ自転車を使い、探知機となる方位磁針型の指示器をたどっていく。

 ハンドルの中央に固定した指示器が、足跡の伸びる方向を示していくので、それを辿っていく。

 これで大体の方向性は把握出来る。

 ただ、化け物は道路に沿って移動してるわけではない。

 庭を突っ切り、壁を越えて移動している事もある。

 所々で指し示している方向通りに進めなくなる。

 その為、回り道をしたりするなどの微調整が必要な事もある。

 頼れるのは指示器だけだった。

 探知の魔術が施されてるこれは、ある程度までは痕跡を追ってくれる。

 化け物がいれば、その方向を指し示してくれる。

 探知範囲は最大でも数十メートル程度なので広範囲を調べる事は出来ない。

 それでも、他に頼れる計測機器もないので、これを使って行ける所まで行くしかない。

 可能な限り急いで自転車を動かし、足跡をさかのぼっていく。

 今日中に本拠地まで行けるとは思っていなかったが、出来るだけ近くまでたどり着きたかった。



 ブレーキをかけたのは、周囲の気配が変わった瞬間だった。

 指示器の針が、ぴたりと止まる。

 明らかに先ほどと違う雰囲気に、本能が警戒心を抱かせた。

 自転車を降りて近くの壁に立てかけ、様子を伺う。

 こういう事があるから、咄嗟に止める事が出来て、簡単に近くに置く事ができる自転車が便利である。

 あらためて路上に立ち、周囲から気配や音などが消えていくのを感じていく。

「まいったな……」

 まさか一日に二度も境界に取り込まれるとは思わなかった。

 それだけ数多く本拠地から出て来てる者どもが多いのかもしれない。

 もしくは、

(当たりか?)

 まさかと思うが、本拠地そのものに飛び込んでしまったのかもしれない。

 正確にはその近く、境界になってしまってる場所に、という事になる。

 さすがに「まさか」と思う。

 そんな簡単に遭遇できるものではない。

 だが、敵が近くにいるのは確かなはずだった。

 でなければ境界が発生するわけがない。

(さてと……)

 持っていたバックから塩を取り、周囲にまいていく。

 敵が接近してきたら、これで手傷を負わせる事が出来る。

 強力な相手だったら効果は薄いが、先ほど遭遇したような雑魚くらいなら足止めにはなる。

 奇襲を避けるための防衛手段だった。

 そうしたら、あとは待つだけとなる。

 こちらから出向かなくても、向こうからやってきてくれる。

 その習性に期待しつつ、遭遇の時を待った。

 予定よりちょっと早く投稿出来た。

 続きは、20:00くらいに投稿予定。

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