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4話 別派 → 内情

「ああ!」

 大声があがる。

「何してんのよ、こんな所で」

「別に」

 カズヤは惚けるように応じた。

「気配を感じたから来ただけだ」

 嘘ではない。

 化け物の気配を追っていたのは事実だ。

 そこで襲われてる者を発見し、助けるために戦闘に入った。

「お前らこそ何してんだ?」

「何だっていいでしょ」

 にべもない。

 予想通りの答えではあった。

「あ、そう」

 敢えてそれ以上追求したりはしない。

 聞いても態度が変わるわけないのは、これまでの経緯から十分に学んでいる。

「質問はしても自分が答えたりはしないのか」

 嫌みくらいは言っておく。

「それで?」

「最低だな」

 言い返してきた事にも、率直な感想を提示した。

 仲良く出来ればそれにこした事はないのだろうが、そんな間柄ではない。

(もうちょっと態度をどうにかしてくれればねえ……)

 そうすればもうちょっとは歩み寄れると思っている。

 絶対に無理だろうとも感じているが。

「それより、」

 不毛な言い争いになる前に用件を告げる。

「この子が襲われてたんだ。

 保護してやってくれ」

「は?」

 いきなり話をふられて面食らったようだ。

「それじゃ」

「……ちょっと!」

 呼び止める声が聞こえるが、当然無視。

「じゃ、俺はこれで。

 さっきの続きはこいつらに聞いてくれ。

 色々教えてくれると思うから」

 丸投げも良いところである。

「けど、全部が正しいわけでもないから。

 そこはちゃんと気をつけるようにね。

 素直さは大事だけど、鵜呑みはいけないよ」

「あ、はい」

 場の雰囲気や勢いののまれたのか、驚きながらも頷いてしまう。

「それじゃ、また今度。

 その時には名前でも教えてくれ」

 まず無理だろうとは思った。

 それまでにはカズヤへの悪印象を持ってるだろうから。

 ただ、今後も顔をあわせる機会はあるかもしれないので、最低限の挨拶と繋ぎの言葉だけは口にしておきたかった。

 どこで何がどうつながるか分からないのだから。



 立ち去っていくカズヤを呆然と見送ってしまう。

 まだ説明も途中だし、聞かねばならない事は他にもある。

 なのにいきなり帰っていこうとしている。

「あの……」

 呼び止めようとするも、手を振りながら去っていく。

「ちょっと、どういう事よ!」

 途中からあらわれた者も憤ってるみたいだ。

 もっとも、最初から気色ばんではいたが。

 灯りの下で見ると、その表情もはっきりとする。

 ポニーテールにした、活発そうな印象の女だった。

 容姿はととのってる方であるが、今は憮然とした感じなので印象が今ひとつ良くない。

 それは一緒にあらわれた他の者も同じなのか、辟易とした顔を二人を見つめている。

 何がどうなってるのか分からないまま、男は去っていってしまう。

 後に残ったのは、本日初対面の者達ばかり。

 先ほどの男も今日が初めてであるが、目の前にいる者達とは話しの接ぎ穂が無い。

 どうやって声をかけたものやらと思いながら、憤りを隠そうとしない女と、うんざりした調子の他の者達を交互に見てしまう。



「あの……」

 男の姿が完全に無くなってから声をかけてみる。

「さっきの人っていったいどういう方なんですか」

 外見の印象で言えば、それほど目立ったところはない。

 不細工というわけではないが、とりたてて美形という事も無い。

 目つきや視線が鋭く感じられ、それがちょっとした近づきにくさになってしまいそうではあった。

 だが、それは正体不明の化け物を倒したからだろう。

 必要な説明をしてくれていた事から、とっつきにくい性格には思えなかった。

 少女の印象としてはそんなところだった。

 なので、どういう人間なのかまでは把握しかねている。

 そもそもとして、巻き込まれたこの状況の説明が不足している。

 今後どうするかの対処方を多少は聞かせてもらったが、それもまだ途中である。

「この先の事も説明してもらえって言われたんですが」

「……あの野郎」

 ポニーテールの女は更に憤ったような声をあげた。

「押しつけてったわね」

 やはりそうなのだろう、と思ってしまった。

 引き継ぐといった柔らかい表現になりそうもないのは感じてはいた。

 だが、ポニーテールもそこはある程度納得してはいるようだ。

「それで、あなたは?

 巻き込まれたんだろうけど」

「あ、はい。

 さっき、あの人に助けてもらって」

「ふーん」

 男の事になるとなぜか対応が冷たい。

「で、説明をしろって私らに押しつけたと」

「はい、途中までお話しは聞かせてもらってたんですけど」

「ったく……」

 どうにも機嫌が悪いようだった。

 男の方に向けたものだとは分かるのだが、目の当たりにしてると落ち着けない。

「それで、どこまで聞いたの?」

 言われて少しだけ胸をなで下ろす事が出来た。

 話をする気はあるようだし、口調も幾分丸くなっている。

「あの、お化けみたいなのがあらわれて、それにこれからも襲われるって」

「まあ、確かにね」

「それで、それがどういう所に出るかとか、襲われた場合のやり方とかを」

「なるほど」

「自分も強くならなくちゃならないけど、そこで皆さんが出てきて。

 あとはお聞きしろって言われました」

「はいはい……」

 憤りを通り過ぎて、呆れていったようだ。

 表情が怒りから呆れと嘆きに変わっていく。

「大分端折ってるようだけど一応説明はしてるみたいね。

 まあ、あらためて全部説明はした方がいいみたいだけど」

「そうなんですか?」

「あいつがどこまで説明したか分からないからね。

 一々確認するより、そっちの方が早いでしょ」

 言われてみればその通りな気がする。

「それに、余計な事を吹き込まれてるかもしれないし」

 なにやら剣呑な事まで言いだしてくる。

「何か、あるんですか?」

「ん?」

「あの人の事、嫌ってるみたいですけど」

 確かめずにはいられなかった。

「まあね」

 否定されなかった。

 他の者達も同じような反応を示している。

「色々あるから」

「はあ……」

 何があったのか分からないから返事のしようもない。

「まあ、あいつの事は忘れて。

 どうしようもない屑だから」

 その言葉に驚く。

 いったい何がどうしてそこまで言われてしまうのか。

 目の前の女と先ほどの男は、同じような立場というか、仲間のような関係だと思っていたのだが。

(どういう事?)

 両者の間には友好的はとは言い難い雰囲気があるようだった。

「ま、それはいいわ」

 女はその話を打ち切っていく。

「それより説明ね。

 とりあえず明るい所にいきましょ。

 ここじゃなんだし」

 言われてもっともだと思った。

 ここが境界という状態になってるなら、あまり長居をするべきではないだろう。

 どんな影響があるか分からない。

「夜も遅いし、詳しい事はまた今度になるけど。

 もうちょっと落ち着ける場所に行こう」

「はい」

 ここは素直に言う事を聞く事にした。

「それで、あなたは?

 名前、聞かせてもらっていいかな?」

「あ、はい」

 お互い、それすらもまだだった事を思い出す。

「伏見アヤナです」

「布佐ユウキよ」

 短く簡単ながらも、お互いの名前を伝えあった。

 その場にいた他の者達も名乗っていく。

 そのまま彼らは落ち着ける場所へ、境界となってるこの場から立ち去っていった。




【能力表示】




伏見アヤナ

 十六歳 一百五十三センチ ??キロ



<主要能力>


生命 一00

気力 一00



教養:1


礼儀:1


心理:1



<魔術関連>


なし

 続きは明日、18:00くらいに投稿予定。

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