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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
四章

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38話 もちつもたれつ → 彼らの後始末

「まだかねえ?」

「さあ、どうなんすかね」

 時計を見ながらぼやく。

 情報にあったヨドミの近く、まだそこに屯している封印派の様子を見ている。

「あいつら、早く消えてくれればいいけど」

 カズヤのぼやきにコウジが「そうっすよね」と続く。

「どうせ一回で終わらないんなら、さっさと帰って欲しいっすよ」

「何度も中に入る根性は凄いけど」

「始めたばかりの新人じゃあるまいし」

「似たようなもんだろ。

 あまり封印って、修養値が入らないみたいだし」

「きついですよね、それ。

 頑張ってもなかなか先に進めないって事だし」

「それを選んでるんだから文句はないんだろ」

「俺だったら、勘弁ですね」

 率直な感想だった。

 レベルが上がる事で作業の効率が上がる。

 ろくろく修養値も入らなければ、それが出来ない。

 封印する事で引き起こす周辺の変化を危惧するのは分かる。

 そのために命をかけるというのも尊いのかもしれない。

 しかし、そこまで良いとも思えない現状の為に危険を承知で作業を続ける事に意義を見いだせない。

「ま、あいつらの苦労も、このあたりで終わりにさせてやりますか」

「おう、がんばってくれよ、コウジ君」

 そんな事を言いながら二人は封印派が消えるのを待っていった。



 深夜も更に深まり日の出があと二時間ほどというあたりになっていた。

 そこまで来てようやく封印派の者達が消えてくれた。

 あわせて二回ほど中に入ったようだが、まだ中心地には到達してないようである。

 ヨドミの入り口が指示機で簡単にとらえる事が出来て安心してしまう。

 ある程度離れていても探知できるというなら、まだ封印が施されてない証拠である。

「行くぞ」

「はいよ」

 躊躇うことなく二人は中に入っていった。



 住宅の内部のような造りをしたヨドミの中を、二人は足を止める事無く進んでいく。

 人影型の化け物があらわれるが、二人もいれば簡単に撃退をしていける。

 事前に情報があったので、今回は二人ともそれなりに準備が出来たのも大きい。

 いつもなら、調査中に発見して、手持ちの道具だけで中に入る事が多い。

 なので、どうしても持ち運べる道具に制限かかかってしまう。

 今回、どこにあるのが分かっていたから車を使って道具を運ぶ事が出来た。

 事前の情報があると本当に楽だと思った。

 日本刀を手にしたカズヤを戦闘に、いつも通りの電動ガンを持ったコウジが続く。

 遠くに見える化け物は、コウジの射撃で払いのけていく。

 それを者ともせず近づいてきた敵には、カズヤの刀が食い込んでいく。

 レベル3にもなれば、たいていの化け物を簡単に倒せるようになる。

 そこを遙かに超えてる二人にとって、このあたりの化け物はさしたる脅威ではない。

 塩や線香といった道具も用いつつ、先へ先へと進んでいいく。

 分岐路で悩む事もあったが、気を用いた探知でさほど迷う事もなく先へと進む。

 封印派がある程度化け物を倒してくれたせいか、遭遇もそれほど無い。

 封印派が二回突入してその都度撤退したのと違い、二人はそのままどんどん奥へと踏み込んでいく。

 ユガミが居ると思える部屋に到達したのは、入って一時間もかからない頃だった。



「行けるか?」

「いつでも」

 BB弾の補充が終わり、弾倉を全て満たしたコウジが応える。

 それを聞いてカズヤも頷く。

 最後の部屋と思われる部屋の戸に手をかけ、勢いよく横に引く。

 家の中を模した構造内にあって、なぜか玄関のような造りのそこに二人は入っていく。

 その中は体育館であろうかと思えるほどの広さの畳部屋だった。

 中央で、人の形をした何かが正座をしている。

「あれっすかね」

「多分、そうだろう」

 この部屋から奥まで続く通路などはなさそうだった。

 であるならば、中央にいるものがユガミであろう。

「やれるか?」

「もうちょっと近づかないときついっすね」

 電動ガンの射程を考えると、中に入ってある程度近づかないとどうにもならない。

 ギリギリ届くだろうが、威力はほとんど期待出来ない。

「こっちを使えば何とかなるかもしれないっすけど」

「でも、それってこの距離だと当たらないんじゃないのか?」

「当たらないっすね」

 腰のベルトに挟んだものについて、コウジははっきりとこたえる。

「動いてない的でも、当てるならもっと近づかないと」

「じゃあ、行くしかないな」

 できれば遠くから片付けたかったがそうもいかない。

「じゃあ、なるべく近づいて拘束するから、それから思いっきり撃ち込んでいってくれ」

「分かってますって」

 灯した明かりの下で、コウジはニヤリと笑った。

「じゃ、行くぞ」



 中心部に座っていたユガミは、中に入っても動き出しはしなかった。

 だからこそ二人は警戒をした。

 どこまで近づいたら動き出すのか、どんな風に動いてくるのか。

 それが分からないから警戒をしてしまう。

 化け物の中には特殊な動きをするものもいる。

 今回のユガミがそういった能力を持ってる可能性もある。

 それが気がかりだった。

 何が起こるか分からない。

 だから警戒をしながら進んでいく。

 と言っても、それにどれほどの意味があるのかとも思う。

 何をしてくるか分からないなら、警戒しても対応がとれない。

 気を張り詰めても意味が無いような気がしてしまう。

 とりあえず、危なくなったら入り口まで逃げる、という事を徹底するしかない。

 逃げる、というのは生きながらえるために必要な手段である。

 それを二人は恥ずかしいとか卑怯とは思わなかった。

 思っていたら今まで生きてこれなかったかもしれない。



 動きは、入り口とユガミの間を通過した当たりから始まった。

 突然足下が動き出す。

 それを感じた二人は、すぐさま背後に向かって走ろうとした。

 が、それもかなわず足下をすくわれる。

「うわっ!」

「わっ!」

 驚く二人であるが、すぐに気力を用いて変化にそなえる。

 カズヤは身体能力を強化して、転がりそうな体勢の保つ。

 コウジは防御の気を張り巡らして、何が襲ってきても良いように備える。

 おかげでカズヤは、中空に放り出されても空中で平衡を取り戻し、床に難なく着地する。

 カズヤはそんな格好良くはいかなかったが、床に落ちてもほとんど衝撃を受ける事もなかった。

「なんだ?」

 いったい何が起こったのかと回りを見て、カズヤはすぐに納得した。

 足下をすくわれたと思ったが、そうではない。

 踏んでいた畳が動いていたのだ。

 それらが今、宙に舞っている。

「……なんか、凄いな」

「……畳が回って飛んでるっすよ」

 何の奇術だと思ってしまうが、すぐにそうも言ってられなくなる。

 二人にめがけて、回転する畳が襲いかかってきたのだから。

 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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