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【打ち切り】クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-  作者: よぎそーと
二章

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19/164

19話 出現地 → 室内

 部屋に入った途端に境界化した。

 保ってきた武器を取り出す暇も無い。

 室内とは思えないほど拡大された空間の中から、化け物が襲いかかってくる。

 天井、壁、床の上を這いつくばってくるそれは、虫としか言いようのない存在だった。

「くそっ!」

 ベルトに挟んだ拳銃型のエアガンをコウジが取り出す。

 その前にカズヤが出て、範囲拡大をかけた拘束の気を放つ。

 全部は無理だが、何匹かの動きを止める事が出来た。

 残ったものが襲いかかってくるが、それらは上手く応戦するしかない。

「まったく……」

 気をまとって、床を張ってくるもの蹴飛ばす。

 全長五十センチはあろうかという虫型の化け物は、そのまま部屋の奥まで吹き飛ばされた。

 飛んでいく間に蹴られた所を中心として体がえぐれていく。

 それを視界の端でとらえながら、上げた足を踏みおろす。

 もう一匹がそれで踏みつぶされた。

 核のある部位に当たったのか、そのままもう一匹は消えていく。

 それでもまだ何匹かが向かってくる。

 突進してくるそれらを避けられそうもない。

 何発かは覚悟するしかないと思った。

 しかし、後ろからコウジが銃でそれらを撃っていく。

 持ち運びが容易な拳銃型のエアガンで、一匹二匹とはじき飛ばす。

 それだけで体が吹き飛ぶほどの威力だった。

 気を込めた銃から発射した弾ではない。

 一発一発に気を込めた弾丸である。

 惜しむことなくそれらを叩き込み、接近してくる化け物を倒していく。

 動き回ってるのはそれで全て片付いていった。

 あとは拘束したものだけとなる。

「悪いな、貴重な弾丸使わせて」

 持ってきた鞄から武器を取り出しながら詫びをいれる。

 それらを作るために結構な時間と気力を用いる事はカズヤも知っている。

 しかしコウジは、

「かまいませんって。

 こういう時に出し惜しみすると死にますから」

と返す。

 使いどころを間違ってはいけないが、出し惜しみも過ぎると面倒を増やす事になる。

 貴重な弾丸ではあるが、他の道具がすぐ使えないのだからそれを用いるしかない。

 そう判断しての事だった。

「ここで怪我されたら、ヨドミで支障が出ますし」

 ちょっとした出費を惜しんで盛大な損害を被るわけにはいかない。

 だからこそ躊躇わずに引き金を引いた。

「次からはちゃんとこっちを使いますから」

 言いながらコウジも自分の鞄から電動ガンを出す。

 軍用ライフルのような大型のものではない。

 短機関銃や機関拳銃、サブマシンガンと呼ばれる小振りの銃だ。

 拳銃よりは大きいが、ライフルよりは遙かに短く小さい。

 狭い場所ではこちらの方が役に立つので、ヨドミに入る時にはこういったものを持ち込んでいた。

 これが実銃なら、威力や射程距離で軍用ライフルに劣ったりするが、電動ガンなのでそういった問題も無い。

 多少の差はあるが、銃の大きさなどで威力が極端に変わる事は無い。

 それも踏まえての選択だった。

「次からはガンガン撃ちますから」

「期待してるぞ」

 何にせよ援護射撃はありがたい。

 近づく前にある程度撃退出来れば、戦闘はかなり楽になる。

 今回の場合は特に。

「行こうか」

「はい」

 カズヤの言葉にコウジも頷く。

 しかし、すぐに疑問をもった。

「でも、ここってまだ境界なんじゃ」

 まだ境界化が終わってない周囲を見渡してそう言う。



「確かにな」

 カズヤもその言葉を否定しない。

 化け物によって作られたここは境界であり、厳密に言えばヨドミではない。

「けど、これだけ近くで境界化したんだ。

 そのままヨドミにつながってるんじゃないかま」

「そのパターンですかね?」

「たぶんな。

 何度か巻き込まれてるから分かるだろ?

 今までもあったし、多分それだろうさ」

 もちろん、そうであるという証拠はない。

 だが、なにぶん情報の不足してる世界の話である。

 様々な体験談と自分の経験から予想をするしかない事が多い。

 今回もその一つだった。

「とりあえず進んでみよう。

 そうすりゃ何かが分かるかもしれん」

「行き当たりばったりっすね」

「そんなもんだよ、この仕事は」

 カズヤもため息を吐く。

「お前だって分かるだろ。

 何年もやってるんだから」

「そりゃまあ、そうですけど」

 それでも釈然としないものがあった。

「なんつうか、いい加減っすよね、この場所って」

「そうだな」

 全く同感だった。

「いい加減で、適当だ。

 おかげで苦労するよ」

 心底そう思った。



 空間の発生条件や、どこにどのように接続されるかなど。

 基本的に同じような条件で発生するのは分かってるが、それでいて様々な派生もある。

 今回のように境界からそのままヨドミに続くのもその一つだ。

 ただ、今回はまだ分かりやすい。

 なかには、境界と出現地であるヨドミが結構離れてても接続された事がある。

 その逆に、ほとんど接触してるような至近距離でありながら、一旦境界化が解除される事もある。

 何がそれを分けてるのかは未だ解明はなされてない。

 ただ、気まぐれとしか言いようが無い事が起こりうる。

 文句を言っても仕方ないので、柔軟に対応するしかない。

 そもそも、この程度なら大した事はない。

 たんにつながってるだけである。

 奥まで進んで、中枢を潰せばいい。

 やる事は変わらない

 二人は躊躇う事無く先へと進んでいった。















【能力表示】




相馬コウジ

 十九歳 一百七十四センチ 六十キロ



修養:




<主要能力>


生命 一六0(一00 + 六0)

気力 一八0(一00 + 八0)





射撃:3 格闘:1


運動:1


感知:1 追跡:1 隠密:1


戦術:1 野外活動:1


運転:1





<魔術関連>



探知:1


拘束:1 衝撃:1


付与:2


回復:1


防御:1 姿隠し:2


範囲拡大:1 威力拡大:1 持続拡大:1


 続きは明日の17:00予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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