表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/164

161話 道筋

 意気揚々、とまではいかないまでも、カズヤ達の進みは先ほどまでよりかなり早くなった。

 化け物を可能な限りさけていくので、周囲の警戒は必須となった。

 それでも戦闘を繰り返すよりは手間が減っている。

 化け物と遭遇する事そのものは無くならないので、そうなったら戦闘に突入するしかないが。

 また、封印派の方に流す化け物も先ほどより増大する事になる。

 その為、救助は再び遅れる事になってしまう。

 しかし、作業手順が前後するだけと思って割り切る事にした。

 今やるか、後で余裕が出た時にやるかの違いでしかないと。

 そう上手くいくかは分からないが、出来ればそうなって欲しいものだった。



 どこまで続くのかと思っていたヨドミも、奥に向かうにつれて狭くなっていく。

 やがてはいつものような通路くらいの大きさになり、更に奥へと向かっていく。

 その先も入り組んだ形になってるかもしれないと思うと気が滅入った。

 すぼまった通路の入り口までですら相当な距離がある。

 この上更に奥まで進まねばならないのかと思うと、さすがに気持ちがくじけそうになる。

「化け物も集まってきてるなあ……」

 物陰から見たそこには、化け物が続々と集まってきている。

 相手も警戒しているようで、簡単には進ませてくれそうもない。

 封印派の方にもいくらか向かってるはずだが、そちらだけでなく守りも固めてるようだった。

「あれを突破して通路に入らないとな」

「でも、入ってもどんどん来ますよ、あれ」

「ああ。

 通路にもいるだろうし、後ろからも来るし。

 かなり大変だな」

「無理くさくないっすか?」

 相手の強さがさほどでもないとはいえ、数の暴力は圧倒的である。

 そこを切り抜けて進み、背後から押し寄せるものを防いでいくのはかなりの難行に思えた。

「でもまあ、このあたりで囲まれるよりはいいだろ。

 通路なら、一気にやってくる数も限られるし」

「後からあとからわいてきますけどね」

 非情なる現実を前にして、夢想は全く浮かんでこない。

 さすがに「どうにかなるだろう」とは誰も言えなかった。

「けど、やるしかないからなあ……」

 でなければ何も終わらない。

 これだけ大量に存在する化け物は、更に数を増すだろう。

 とにかく中に入って、ユガミを封印しなければならない。

「どうにかするしかないよな」

 既に決めた事である。

 覆すわけにはいかなかった。



 通路の入り口近くまで身を隠しながら進んでいく。

 とはいえ、蟻塚の物陰もそれほど利用できなくなっていく。

 周りにいる化け物が多く、死角がほとんどないからだ。

 陽動をかけてその隙に進もうにも、それすら無駄に終わりそうである。

 また、数人程度で別行動をしたら、すぐに囲まれて殲滅されかねない。

 結果を出す為のやむなき犠牲は仕方ないにしても、それをこんな所で出すわけにはいかなかった。

 通路はまだ続いてるだろうし、その奥にいるユガミに到着するまでどれだけかかるか分からない。

 いたずらにここで戦力を消耗するわけにはいかなかった。

 芸のないことだが、一丸となって通路に向かい、一気に中に入っていく。

 それしかなかった。

 通路までは一百メートルもないだろう。

 距離自体はたいしたものではない。

 その間に居座る敵の数の方が問題になる。

 それでもカズヤ達は敵めがけて向かっていく。

 広域にわたる気力の網がひろがる。

 それが戦闘開始の第一撃となった。



 倒すよりは、動きを止める。

 まずはそれを優先する事となった。

 敵の数は余りにも多く、広範囲にわたっている。

 それだけの敵を倒すとなると、気力を大量に消費せねばならない。

 相手が最弱の部類に入るとはいえ、化け物を一撃で倒すとなるとそれなりの威力が必要になる。

 そうなると気力を大量に消費する事になる。

 それよりは、というところだった。

 大量の敵を相手に、また倒すよりも優先するべき事がある場合の常套手段だった。

 使い古されるほど何度も使われるほど有効な手段だった。

 数の少ないカズヤ達にとって、こういった手段も重要になる。

 先に進むのが目的の今は、これが最善となる。

 倒してなくても、行動出来ないなら死んでるのも同じなのだから。

 通路に入り、更に奥へと向かう。

 そこから中に入るのはさすがに難しくなっていた。

 通路全体に化け物がひしめいている。

 それらの動き求めて、切り捨てながら中に入っていく。

 ある程度進んだところで何人かがその場に留まる。

「頼むぞ」

「はいよ」

 後ろから追ってくる化け物を、まずはそこで止めねばならない。

 その間に通路の奥へと進んでいく事になる。

 ある程度進んだら、足止めしてる者達を援護して中へと向かっていく。

 それを繰り返して、通路の奥を目指す事になる。

 とはいえ、今回はそうとう難しい事になりそうだった。

 分かれ道が見えてきたところでそれを感じた。

「まいったな」

 いつもなら化け物が出て来る方向を目指せばよい。

 だが、今回は両方から化け物がやってきてる。

 進む方向を示す明確な指標がない事で、今回は相当難しい探索になりそうだった。

 分岐の全てを探索していくしか方法がないかもしれない。

「とりあえず、このあたりに障壁を張ってくれ。

 あと、塩と札も置いていこう」

 道をふさいで化け物を通れなくしていく。

 効果時間を考えれば気休めにしかならないが、今はわずかでも有利な状況を作っていくしかない。

 むしろ、気休めにでもなるならまだその方がよい。

 その意味すら無かったら徒労にしかならない。



 しかし探索はやはりかなり難しいものとなっていった。

 分岐路の先が行き止まりという事も何度かあった。

 それも、すぐに通路が無くなってるなら良いのだが、それなりに進んでから判明するという事が何度かある。

 その度に道を戻る事になるのだが、道を塞いでいる化け物を倒していかねばならなくなる。

 障壁や塩などのおかげで、すぐ後ろまで迫ってるという事はなかったが、それでもかなりの数を相手にせねばならない。

 通路の繋がりにに何らかの法則性があるかもしれないが、それを見いだしてる余裕もない。

 出来る事は、一つ一つの通路を確かめていく事だけである。

 こんな調子なので先に進む事もままならない。

 可能な限り化け物の出て来る方向を見極めようとするのだが、やはり様々な通路からやってくるのでそれも出来ない。

 気力の消費を避けるために接近戦で化け物を倒しているが、それでもやはり消費はしていく。

 いずれ息切れするのは目に見えていた。

 そんな中で、アヤナが声をあげる。



「あの、もしかしたらこっちかもしれません」

 何度目かの分かれ道に出たところで、アヤナが指をさしていく。

 呆気にとられたカズヤであるが、

「理由は?」

と尋ねる。

 いきなりそんな事を言われてもすぐに信じる事は出来ない。

 しかしアヤナは、手にした通路の略図を見せて説明をしていく。

「たぶん……ですけど、この通路は基本的に一本道だと思うんです。

 一つの方向に向かってるみたいなんです」

 戦闘の最中であるが、他の者達に化け物をまかせてその図を見る。

 そこには、今まで通ってきた道を大雑把に描いた図が記されていた。

 それを見ると、確かに通路は基本的には一つの方向にまっすぐ伸びているように見える。

 そこから左右に分かれ道がのびてる形だ。

 枝のようにのびてる道の先は、ほとんどが大きな部屋となっている。

 実際にそこまで行ったから分かるが、そのあたりが化け物の居室になっていた。

 外の蟻塚とは別に、そういった場所もあるらしい。

 もしかしたら、衛兵にあたるものたちの詰め所なのかもしれない。

 それはともかく、そういった横にくっついてる形の部屋を覗けば、基本的には一本道に見える。

「なるほどね」

 言いたい事は理解出来た。

 推測でしかないが、その通りに進めば確かに先に進めそうだった。

「じゃあ、そいつで行ってみよう」

 他に頼るものもない。

 間違ってる可能性もあるが、それは手当たり次第に進んで行っても同じである。

 だったら、わずかばかりでも可能性のある方を頼ってみるのも悪い事では無い。



 ありがたい事に、そこから先で行き止まりにはまる事はなかった。

 横にそれてると考えられる道を無視し、一つの方向を示してる道を選んでいく。

 それだけで進行は驚くほど円滑になった。

 化け物はあいかわらず道を遮ってるが、道を間違える手間が減ったのは大きい。

 それでもユガミに行き着くまでは油断が出来ないが、これも程なく解消される。

 進む彼等はやがて大きな部屋に出た。

 その中に、ひときわ大きな化け物であるユガミが鎮座していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ