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143話 発見

「よう」

 聞き慣れた声がした。

 振り返るとカズヤが立っている。

「悪いな、呼び出しちまって」

「まったくですよ」

 ため息混じりにアヤナははっきりと言った。

 受験はまだ先だが勉強はしないといけにあ。

 にも関わらず、化け物の拠点が判明したので連絡がまわってきた。

 無理はしなくて良いのは分かっているが、だからと言って参加を見合わせるのも躊躇われた。

 呼び出されるという事はそれだけの状況になってるからである。

 そうであるなら、無理をしてでも駆けつけるしかない。

「勉強、少し遅れてるんですからね」

「すまん、本当にごめん」

 言われてカズヤは素直に頭を下げた。

 相手が本気で怒ってるわけでないのは分かってる。

 だが、無理をさせてるのも確かである。

 詫びの一言は当然だと思えた。

「でも、助かるよ」

 そう言って歓待の意をあらわす。

 もっとも、これからやってもらう事を考えたらとてもそんなものでは足りない。

 アヤナの方もそれは察してるらしく、本題に入ってくる。

「見つかったんですよね、ヨドミが」

「ああ」

 だからこそ人が呼び集められていた。



 特定の場所における集中的な化け物の攻撃。

 そこから化け物の動きを辿り、どうにかたどり着いた。

 ようやく見つけた手がかりを追いかけ、時折見失いつつも足跡を探って見つける事が出来た。

 そこを攻略する為の動員である。

 人手不足なのでどれだけ集まるか分からなかったが、各地から一人二人と集まり、結構な人数になっている。

 たゆまなく連絡を取り、可能な限り応援に駆けつけた成果があがっていた。

 この近隣に影響を与えている可能性のある敵の拠点という事もあり、それ故に参加を決めたという者もいる。

 放置したら今後の悪影響が避けられない。

 危険で困難な作業になるだろうが、コレを破壊しておかねばならない、という事らしい。

 もっと俗な理由として、稼ぎが必要だからという者もいる。

 化け物を倒し、ヨドミを破壊して得られる修養値を求めてのものである。

 さもしいとも思えるが、理由や同期をとやかく言う者はいない。

 参加してしっかり仕事をしてくれるなら文句はなかった。

 各地から集まってくる者達によって、喧噪とは無縁だった田舎の町が少しばかり騒々しくなっていった。



「それで、今日はどこに行く事になるんですか?」

 詳細をまだ聞いて無いアヤナは、折角だからと聞いてみた。

 跡で説明はあるだろうが、事前に分かるならその方がありがたい。

 特に隠す事もないので、カズヤもあっさりと答える。

「山の中」

「え?」

「昔の廃坑跡の中にあるみたいなんだ」

 予想外の事にアヤナは声が出ない。

 それに気づかずカズヤは、

「いや、もう……」

と呆れたような声でぼやいた。

「最悪だよ」



 廃坑はかなり古いもののようで、採掘に使われていたのは戦国時代の頃であるという。

 埋蔵量はそれ程でも無かったようで、当時から既に寂れていたようだった。

 それでも、少しでも資源を得ようと当時の統治者は考えていたようで、細々とした産出ながらも作業は続けられていたという。

 化け物の動きからそちらの方に向かってる事を察知したカズヤ達は、そちらに何があるのかを調べ、廃坑にいきあたった。

 その為に地元の図書館で閲覧可能な様々な資料をあさる事にもなった。

 事務所の所長にも何か分からないかと調べてもらい、あちこちに尋ね回りもした。

 決め手となったのは、郷土史をおさめた小さな資料館だった。

 そこに展示されていた鉱山についてのささやかなパネルがきっかけになる。

 あとは該当する記述を探し、地図をあさり、過去の資料を探していく事となった。

 そんなカズヤ達に郷土資料館の者が、「そういえば」と言ってくれたのは僥倖だった。

 今はそこまで入り込む者もいないが、昔は山の中にある洞穴に入るなという忠告があったという。

 そう言われて育ったギリギリの世代である資料館の館員が、カズヤ達が調べてる事を聞いて思い出してくれた。

 正確な場所までは分からなかったが、おおよその位置がそれで分かり、あとは自ら足を使って調べていった。

 意外なところで、心霊スポットといった形で廃坑とおぼしき場所が取り上げれていた。

 どこまで本当か分からない由来やいわれを記載していたネットの資料である。

 はっきりとした場所を示してはいなかったが、それにより位置の絞り込みが進んだ。

 決定的だったのは、探索に向かった者達が化け物を発見した事である。

 指示機などからも痕跡を見つける事が出来て、場所の特定はかなりはかどる事となった。



 余談となるが、カズヤ達が見つけた神社跡もそこと関係があった。

 廃坑へと向かう道が神社跡地によって塞がれる形になっていたのだ。

 由来を調べてみると、そこにあった神社は山からやってくる悪いモノを防ぐのが目的だったという。

 もしかしたら、当時の能力者達が化け物を封じ込める為に建立したものかもしれない。

 それが無くなり、化け物が出て来るようになってるのも、何かしらの因縁を感じさせた。

 あとは準備をととのえて現地に赴く事になる。

 ただ、場所が場所だけに時間と手間がかかる。

 何の設備もない廃坑に入るのだ。

 生き埋めになってもおかしくない。

 そうならないようにする為に、様々な準備が必要になる。

 とりあえず内部の様子を調べ、必要なら補強をしていく事になる。

 途中で戦闘にある可能性もあるので、カズヤ達も護衛をしなくてはならない。

 ただ、内部で崩落が起こってるなら、さほど深い所まで潜らずに済むかもしれない。

 出来ればそうであって欲しかった。



「まあ、そんな所にあるんだ。

 見つからなかったのも当たり前だ」

 説明が終わりに近づいたあたりでカズヤはぼやいた。

 指示機の探知範囲には限りがある。

 地下にあればそれだけでも反応が薄くなる。

 奥まった所にあるなら特に。

「本当に、面倒な事になったよ」

 そこまで進んでいかねばならない事を思うと、ため息しか出てこなかった。

 17:00更新予定。

 土曜日定休。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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