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136話 手がかり

「おかしいよな」

「変でっすね」

「どう考えてもこれはないよな」

「町中全部見てこれっすからね」

「そんだけ平和ならいいんだけど」

「そういう訳でもないですしね」

「神域とかも破壊されてるし」

「あれ、どう見てもわざとやってますよね」

「自然に壊れたもんではないよな。

 手抜きで潰れてるのもどうかと思うけど」

 町に来て調べ回ったカズヤとコウジの感想である。



 調査は順調とは言い難かった。

 化け物の気配は見つからず、ただ盛り塩や札の設置だけを続けていく。

 発見しづらいのはもともとであるが、これっぽっちもかすらない。

 それはそれでおかしなものである。

 それほど頻繁に出て来無い場所もあるが、それであっても少しは存在を感じる事はある。

 神社や寺、何かしら謂われのある場所、そして人がお参りを欠かさない場所などでなければどうしても発生するのが化け物である。

 それが一日二日と時間をかけて見て回って全くそれらしい姿も見えないのだ。

 逆にそれが不審に思えてくる。

 何かある……そういう確信が強くなっていく。

 だが、どこで何があるのか分からないから手のうちようがない。

 それだけ巧妙に隠してるのだろう。

 探し当てるのはかなりの手間がかかりそうだった。



 そして、ある程度予想していた事も起こっていた。

「壊されてるな」

 盛り塩、札、お守り。

 様々な形であちこちに置いていった物が壊されるか無くなっている。

「やっぱり、協力してる奴がいますね」

 でなければこれらがなくなる事はない。

 化け物では触れる事も難しい。

 触れれば死ぬというわけではないが、化け物とは相性が悪いものである。

 触れれば少しばかりは傷を負う。

 むき身の刃を手で握るようなものだ。

 傷つかない方法もあるが、わざわざ危険を冒してまでやろうとするものは少ないだろう。

 それを難なく行ってるのだから、人間によるものだという事に考えが落ち着く。

「まあ、こんだけ探し回って痕跡がないんだしな。

 誰かが協力してるだろうな」

 予想していた事である。

 化け物の痕跡は無いのに何かしら動きがある。

 ならば、それ以外の誰かが動いてると考えた方が辻褄が合う。

「とりあず、代わりを置いておこう」

「はーい」

 予備は幾らかある。

 当初の予定より多くが必要になるかもしれなかったし、このように無くなってしまう事も考えていた。

 それでも無くなってしまうのはそれなりの損失である。

 これらを用意するために、ほんの少しであろうと金を使っている。

 時間と労力も注ぎ込んでいる。

 無駄になってしまったとなると、気持ちが萎える。

 何より辛いのは、こういった事をする人間がいる事だった。

「そんなに化け物がいいのかねえ……」

 やった者達が何をどう思ってるのか知らないが、化け物に肩入れしてる事は変わらない。

 いずれ自分にも何かが跳ね返ってくるのだが、それについてどう考えてるのだろうと思ってしまう。

 そういった事を考えてないか、気にしてないからこういう事が出来るのだろうが。

 ただ、これで少しは手がかりを辿っていける。

 気力を使い、この付近の状態を探っていく。

 化け物がそうであるように、人間も気配などを残していく。

 それらを辿る事で、どこかに至る事が出来る。

 微弱であるがそれを検出し、それが伸びていく方向へと向かっていく。

 とりあえず手がかりになるものがあって欲しかった。



 意外と長くのびてる痕跡は、町から離れていき、舗装もされてない道へと向かっていた。

 踏み固められて出来たそこを進んでいくと、鳥居が見えてきた。

 痕跡はそこに入っていく。

「ここか」

 だいぶ廃れてるようで、鳥居はボロボロだった。

 木星だが、表面はボロボロになり、ひび割れ、壊れて崩れるのも時間の問題のようだった。

 その奥にあるはずの社は無く、林に囲まれた広い空間があるだけだった。

 鳥居からほんの少しだけ続いてる石畳が、かつてそこにあったものを思い起こさせる。

 その鳥居と石畳をとりあえず無視して幾らか離れた所から中に入っていく。

 木々の間、藪になってる中を進んでいくのは手間だったが、中にいる者達に気づかれたくなかった。

 草と枝をかきわけ、いるかもしれない誰かを探っていく。

「あそこみたいだな」

「社務所ですかね」

 社と違い、それだけは残っていた社務所の方から気配が感じられる。

「行ってみるか」

 林の中を通って先へと進む。

 突っ切っていけば早いが、見つかりたくはない。

 面倒だが木々の間を進んでいくしかなかった。

 おかげで普通に進むよりはるかに長い時間がかかってしまった。

 そこにいた者達が社務所の影から出てくる。

 外からだと死角になる場所に集まっていたらしい。

 一目で分かるほど柄の悪い奴らと、使いっ走りにされてるような者がいる。

「カメラ、あるか?」

「携帯なら」

「よし、撮っておいてくれ」

 言いながらカズヤもビデオカメラを取り出す。

 動画でそれらを撮影し、様子を伺っていく。

 さすがに声までひろえないが、様子をおさめておくなら十分だった。

「あいつらですかね」

「多分そうだろうな」

 この場にいるのがそいつらだけなら、まず間違いはない。

「とりあえず、一人くらい尾行してみるか」

 貴重な手がかりである。

 放り出すつもりはなかった。

 17:00更新予定。

 木曜日定休…………だったけど、来週から土曜日に変更予定。

 誤字脱字などありましたら、メッセージお願いします。

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