110話 回想2:準備
視察というか偵察は全員で、となった。
相手が相手だけに分散して行動するわけにもいかない。
化け物も数が多く、固まっていた方が安全でもある。
行動範囲はどうしても狭くなるが、それはやむを得ないと納得した。
もしノボルと遭遇したら、この人数で行動してないとあぶない。
また、トガビトは他にもいるかもしれない。
それらと遭遇する可能性もある。
それらが一体で行動してるなら良いが、二体三体と複数で行動してたら対処に手間取る。
十五人全員での行動は安全性を考えた場合仕方ない事だった。
それを補う形で封印派が動いてくれれば良かったのかもしれないが、それも期待出来ない。
撤退中に助けた封印派の者達は、その後内部の事を少しばかり教えてくれた。
乗り気ではないようだったが、助けてもらった事に恩を感じてるようで、問題がないと思える範囲で伝えてもらった。
それによれば、今回の作戦の失敗が大きく、大がかりな行動がとれなくなってるようだった。
各地からどうにか集めた対応能力者の大半が喪失したのだから当然であろう。
なんとかかき集めた数百人が、今回の包囲失敗によって一百人を切る程に減少してしまった。
どうにか撤退が出来たものも、すぐに行動可能というわけではない。
気力による治療なども受けているので直りは早いが、それでも回復まで時間のかかるものが多数だという。
何より士気の低下が大きい。
化け物に取り囲まれた状況から命からがら逃げてきたのだ。
すぐに戦意が盛り上がるという事は無い。
いずれ回復するにしても時間がかかる。
当分それらが動き出す事は無いと予想されていた。
身を守る為に施設の警備などはしているだろうが、好んで外に出て化け物を倒すという事は考えにくい。
何かしら行動をしようとしたら、それはカズヤ達だけでやるしかなかった。
「きついな……」
リーダー格のぼやきが漏れる。
行動は迅速……であるかどうかは分からなかったが進んでいく。
とにもかくにも人数確保が優先された。
繋がりのある同業者の所に連絡をいれ、一人でも多くの参加を願った。
何にせよ人手が足りない。
普通のヨドミ破壊なら十五人もいらないが、今回の化け物は数が違う。
トガビトもいる。
十五人ではろくろく行動も出来ない。
今の二倍三倍といてくれないと話しにならなかった。
連絡を受けた者達はすぐには承諾しなかった。
自分達の仕事もあるので渋る者が大半である。
誰もが常日頃の生活があるし、地元のヨドミの対象もしなければならない。
だが、話しを聞いていくにつれて事態を把握してくれた。
積極的に参加を表明する者はそれでも少ないが、協調を約束する者が大半だった。
また、どうしても都合がつかない者もいたが、そういった場合でも他の同業者にあたると言ってくれる。
市内中心地から戻ってきてから数日はその連絡で終わっていった。
折り返しの電話などもあり、それらの対応にかかりきりになってしまった。
それが一段落してから、化け物が屯する中心地への偵察も考えられていった。
とにかく状況が分からないとどうしようもない。
どのくらいの範囲に分布してるのかもまだ分かってない。
化け物の拠点となってる場所も把握出来てない。
どういうわけか、化け物は自分達の行動活動の中心となる場所を作ろうとする。
ヨドミがない場合、寄り集まってそういう場所を作り、以後はそこを中心としたある程度の範囲で行動していく。
そこを見つけ、集ってる化け物を蹴散らしておかないと今後に響く。
事前にそれを探し当てておきたかった。
ただ、偵察も簡単にはいかない。
どうしても化け物の集まりに突入していく事になる。
離れた所から望遠鏡などで探知出来れば良いのだが、建物に遮られているとそれも難しい。
結局中に入っていくしかない。
ノボルの襲撃を考えるとそれも難しかった。
仲間が終結するまでにある程度掴んでおきたいが、ここで無理して損害を出すのも考え物だった。
ただ、化け物が周囲に拡大する事も避けたい。
中心地からあふれてくる分だけでも始末はしたかった。
その周辺だけでも巡って、見つけた化け物を倒していく事も考えた。
だが、そうすると活動拠点としてる事務所などが手薄になる。
トガビトとなったノボルがそういった場所に襲撃をかけてくるかもしれない。
なので、下手に動き回る事も出来ない。
協力者達の中でも、ノボルと付き合いの深かった者達は自宅を知られてもいる。
そういった者達は一時的に市外の同業者の所に避難してもらう事になった。
仲間がトガビトになるという事で生じる面倒な部分である。
この為、ある程度同業者が集まってくれるまで、ほとんどの活動が制限されてしまった。
幸いだったのが、同業者達の動きの早さである。
積極的な者だと、連絡した当日にはやってきてくれた。
それ以外でも二日三日でやってきてくれる。
遠方にいる者だとそうはいかなかったが、一週間以内にやってきてくれる者がほとんどだった。
中には直接面識はないが、カズヤ達が連絡をした者から話を聞いた、という者もいる。
それでも事態の深刻さを聞いてやってきたという。
受け入れるべき宿もろくろく無かったが、日が経つにつれて人数は増えていった。
それで三十人ほどが集まった。
カズヤ達を入れて四十五人。
人数による問題はこれで多少は改善された。
とはいえ相手が相手である。
そうそう人数を分散させるわけにもいかない。
余裕をもって対処するとなると、最低でも十人はいないといけない。
レベルにもよるが、このあたりが必要最低限の人数だと皆が考えていた。
余裕を持つならやはり十五人ほどは必要になる。
それもあって、最終的には十五人程度に分かれて行動する事となった。
今だと三つに組み分けする事になる。
今後、人が増えた時にはまた新たに考えるとして、当面はこれでいくこととなった。
それぞれにこの市内に詳しいカズヤ達地元の者が加わり、道案内などをしていく。
行動も、一組が留守番兼休息を。
もう一組が周辺地域化け物駆除に。
残る一組が市内の状況調査になる。
調査が同時に市内における駆除作業になってしまうだろうと予想はされている。
それもやむをえないと割り切り作業は開始されていく。
既に年末になり、一年が終わり新年がやってこようという時期になっていた。
続きは明日の17:00予定。
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あと、来週から木曜日は休みにしようかと考えてます。