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眠れる獅子が動き出す

くぅ~。疲れました。本当は続きを書きたいのですが見せる相手がいなくてここにアップした所存です。アップしなくても自分で勝手に書けばいいのですが。

★とにかくセックスがしたい男が巻き起こすストーリー。これはもう事件だ。いや、本当の意味で事件だ。


僕の名前はセックスシタロウ。

当然のことながら、本名ではなくってペンネームである。本名だとしたら親の神経が疑われるっていうか、セックスって名字すごいな、ってなる。

今から語られるのは冒険譚と呼んでいい。

というより、呼んでほしい。

セックスをしたい男がセックスをするために頑張るのだから、ジャンルでいったら本格アドベンチャーだ。

年齢は二十五歳。僕はとにかくセックスがしたいんだ。

読者である君は、二十五歳になったことはあるかい? ないのなら二十五歳になったものの気持ちは分かるまい。なったことのある人ならわかる。

二十五歳になると、年齢的にそろそろ、甘えてられないって感じるのである。

当然ニートは、働かなきゃって焦燥感に襲われるし、社会人ならちゃんとした企業戦士にならないといけないって焦る。

セックスにもそれは当てはまる。

僕はセックスをまともにしていないじゃないか。どうしよう。

セックスをしなきゃ。でないとご先祖様に申し訳が立たないよ情けないです。

本当はそんなこと思っていない。

ただセックスがしたくて、したくて、金玉袋がビッグバンを起こしそうになる。起こせないけど。

どうしうよう。どうすればセックスができるんだ。

知りたい知りたい。セックスをするにはどうしたらいいんだろう。

部屋の真ん中で、万年敷布団の上で、駄々をこねてみる。両手をバタバタ、両足ドタドタ。

知りたい知りたい。セックスする方法しりたいよ。

アイパッドを手に取る。どうすればいいんだろう。

ここで閃いた。ヤフー知恵袋で質問をすればいいんだ。

そうだった。いつも知りたいことはインターネットに訊いていた。今回もしかりだ。

ヤフー知恵袋に知恵を貸してもらおう。

そんなわけで、今さっき書いた文章。つまりこの作品のプロローグをそのまんまコピーアンドペーストして、ヤフー知恵袋に記した。

いったいどんな答えが返ってくるのだろうかと心を震わせていたが、書いてすぐに答えがくるわけではない。とても待てない。

二十五歳になった僕としては、一分一秒でも早くセックスがしたい。早急にセックスしないと、爆発してしまいそうだ。

ヤフー知恵袋がいきなり答えになるなんて甘い考えでいちゃだめだ。畑に種を撒きましょう。生えた芽を愛でましょう。すべて受け止めていきましょう。ヤフー知恵袋については、とりあえず時間が必要だ。一つの種として考えないといけない。その間に僕はセックスをするために行動を開始しないといけない。しかし、やはり何をしたらいいのかわからない。いつもわからないことは人に訊くかパソコンに訊くしかない。当然のことながら友人もいないし、パソコンに訊くにしてもヤフー知恵袋をすでにしたし、どうしようかな。閃きの神がまた舞い降りた。灯台ってのはどうしてこう元暗しなんだろう。グーグルで検索をすればいいんだって、ことに今気が付いた。僕は本当に馬鹿だ。こんな馬鹿ならこの歳まで、まともにセックスできないのは当たり前ではある。過去を悔やんでも意味はない。よし、すぐに検索してやる。セックスをする方法を。幸いなことに、僕は東京都にすんでいる。都会でしかできないってんでも、問題ないよ。ポチポチポチと震える指先に激昂のエールを口で贈り、どうにか盛り上げて、がんばって打ち込んだ。そしてターン!! エンターを力いっぱい叩いた。


『セックスをする方法 新宿』

約 3,140,000 件 (0.20秒 )


想像をはるかに超える件数だ。これならば必ずやれる。やれないほうが馬鹿だ。3,140,000件って、一日に三件消化したとしても、何年かかるんだ?百万割る三百六十五日と計算してみてわかった。二千七百四十年はかかる。

恐ろしいことだ。僕は長生きするのは当然だがそれでも百年だろう。

セックスを毎日三回して、人生を二十八回やり直して、ようやく、『セックスをする方法 新宿』で検索して出たセックスを消化できるってわけだ。なんだ。これはもう、玉金がたりないじゃないか。知らなかった。セックスなんてものは溢れかえっているんだ。こんなにあるのならば、すぐにセックスなんてできるだろう。二十五にもなって、僕はセックスしたいしたいって、望むほどのものではない。そこいらへんに転がっているんじゃないのか? セックスなんてものは。一気に容易いものだとイメージが変わった。人間とは傲慢で醜い生物である。さっきのヤフー知恵袋に書き込みした労力を返してほしいと思うのだ。めんどくさいことをしてしまった。どっかの親切な人が、回答を書いてくるから、わざわざ返事を書かなければいけない。しゃらくさいったらありゃしない。もう、セックスをする方法イン新宿を、グーグル先生が教えてくれたのだ。なんの心配もないよ。インターネットの世界ってすごい。よし、セックスをネットの情報に従って、しまくるぞ!

わくわくしながら、検索結果のページを次々にみたけど、あれ、どうしたこれ。

『新宿』『セックス』『方法』『する』がバラバラの単語として、検索されていて、本当の意味でセックスする方法が全然記されていないじゃないか。なんで、こうなの? なんでなの?じゃあ結局セックスをする方法はわからないんじゃん。じゃあやっぱり、ヤフー知恵袋に頼るしかないのかよ。ごめんね、意見ををさっきからころころひっくり返して。意外なことに、ヤフー知恵袋には早くも返答があった。時間にして十五分しかたってないのに、すごいなって感じだ。鼻奥がつーんと染みる感覚を味わいながら、クリックをしてみる。

『セックスシタロウさんへ、セックスをするのは簡単っていってしまえば簡単です。だけど難しいともいえます。両方の要素を持っています。それはなんでかっていうと、例えば風俗で性交渉をしたとしましょう。法律では禁止はされていますが、事故であなたの男根が挿入を開始したとしましょう。はい、それはセックスです。しかし、完全なセックスではありません。なぜなら、セックスとは心も体も繋がりようやくセックスなのです。理解していただけましたか? 私ごとになりますが、体験人数は千人です。千切りです。夜の帝王です。遊びの帝王です。しかし、完全なセックスは二桁いったかどうかでしょう。セックスシタロウさん。あなたは遠く険しい道の一歩を踏み出しましょう。安易な形上のセックスではなく、完全なセックスを目指しましょう。そういうことです。ようやくここで、私からの本当のアドバイス。友人と一緒にセックスを目指しましょう。お互いに助け合い喜びを倍に、悲しみを半分にしてセックスに向かって行きましょう。セックスは強大です。経験豊富な私でさえ次のセックスはいつになるかわかりません。一年後、十年後、二十年後、はたまた、明日か。セックスの神に祝福あれ』

読み終わったあと、感謝の涙がこぼれた。もはやこぼれたとかでは形容として間違っているほどで、噴き出たといってもいいぐらいに、目から汁が出た。僕は幸せ者だ。書きこみしてからたったの十五分で、まるで、人生の師と言える人に巡りあえるなんて。まるで、二十五年間溜めに溜めた毒素が、涙と共に流れたようで、全身の毛穴からフレッシュなエネルギーがあふれ出る感覚だ。

行こう。

僕はセックスに向かう。

まずは友人を探そう。今まで友人らしい友人はいなかったが、今の僕ならいける。友人ができる予感しかしない。ガッツポーズを決めて、力いっぱいキーボードを叩く。パチパチパチターン!


『友達ができるサイト』

2,410,000 件 (0.18 秒)


やはり、グーグル先生は半端ない。しかも、さっきより0.02秒早くなっている。もやは、グーグルに友達になってもらえばいいんじゃないか? と根本的にさっきの意見を変える考えが浮かんだが、冷静に考え直す。友人を作ろう。そんなわけで、僕のインターネットでの友人作りが始まった。カチカチとパソコンをいじって、二時間。あまり成果が見えないなと思い始めたころ気がついた。

二十五年間溜めた毒素を出しても、何にも変わってないじゃん。

一人ボケをして、一人ツッコミ、僕はなんて哀れなんだろう。っていうかそもそも、十五分程度で作られた文章で、感動したからって人間が変わるわけがない。もっと時間をかけて変化するものなのだ。もう、しょうがない。これだけは避けたかったが、二十五歳になってしまったのならば、最後の手段だ。

一か月間着信のない携帯電話に手を伸ばす。家族以外からは着信のない、水入らずの携帯ってわけだ。登録されているのは、人物に限定すると四件である。父、母、弟、妹。

この中で僕は弟に電話をかけた。

ベルが三回ほどなって、出た。

「もしもし」

『おお、珍しいな、お前から連絡があるなんてよ』

「・・・セックスがしたい。やり方を教えてくれ」

『ぶははは! うける、兄貴よ、セックスがしたいのかよ! うけるわ。ちょいまって、どこから? 相手はもういるの?』

「・・・いない」

それから弟は、一分間弱笑い続けた。

電話の通話時間が増えていくの覚めた頭で確認した。

『っひい、ひ、ゼロからスタートかよ! なんだよそれ。最高だな』

「・・・・・・」

『いいぜ、レクチャーしてやる。なんたって、たった一人しかいない兄貴からの頼みだ。優秀なこの俺が教えてやるよ』

「・・・頼む」

言葉にならない屈辱感をどうにか押さえ混み、僕はモテモテでやりやりの弟に、恥を忍んでお願いしたのだ。

『まあ、まてよ、くくく。今から大学の友人と合コンだからさ、メールで指示をするよ、くくく、最高。フェリスの女を喰いながら片手間にね。バイビー!』

通話が切れた。

相変わらず不愉快だ。優秀すぎる弟は、本来は普通である兄の出来をまるで、ぽんこつのように見せる。

っていうか、僕がセックスがでいないのは、どう考えても、あいつのせいだ!

ペンネーム的な偽名であるけど、僕の名前はセックスシタロウである。その流れで弟に名をつけるとしたら、セックスヤリ次郎という名前になるだろう。四つも年下で、僕よりも一つオリンピックを知らないガキでありながら、あいつは僕に劣等感を植え付けた張本人である。

兄というものはいかなる時も弟に負けてはならない。実際に負けていたとしても、兄の威厳として、プライドとして、陰で努力をし、どうにか優秀な弟にもくらいつくという関係性が形成されるべきなのだが、一般的なレベルはとっくに凌駕していてもう最初からどうしようもなかった。

四つの年下なのに、かけっこが僕より早い。指相撲や腕相撲や相撲でも最初っから勝てなかった。年齢と言う肉体のアドバンテージなんて小学校のころから関係なく、物心ついたころから弟に何一つ勝るものがない。

キャッチボールをすれば、頭上を越える相手に優しくない球しか投げれない、不器用な僕と、そんな僕が比較的捕れるような、ここしかないという胸元に投げる優しい返球。

相手としてはやりやすいのに、劣等感によってやりにくいという、反比例する状態に、僕はどんどんと弟と心の距離を離していった。

オタク系統の学校の友達と遊んでいた中学二年生の頃、弟は十歳にして、スケコマシの片りんを見せ始め、アシダマナ並にカワイイ美少女を家に連れて来たりしていた。というより、向こうから家に押しかけて来た。

「別に次郎に会いに来たわけじゃないんだからね、たまたま近く寄ってせっかくだしさ」

みたいなことを現実でいっていて、僕たちオタク連中は、

「リアルアスカだ。年齢は下だけど、アスカそっくりなこと言ってるよ、あの美少女」

みたいなことを言って茶化していた。同時に心から羨ましがっていた。劣等感に苛まれた僕は

「ヤリ次郎なんてほっとこうぜ、早くアニメイトいくぞ」

ってなかんじで、自転車を立ちこぎで全力疾走し、街にいったのである。

三年後、つまり十七のころ、友達であった、オタク連中は、各々がそれなりに恋をし、それなりの恋人を作り、共通の趣味だったアニメや漫画を疎かにし、女に合わせる事をを優先することになって、僕は一人になった。というか、僕から彼らから離れた形になる。だって、あいつらは大して魅力的ではない女と一緒にいて、今までおんなじ趣味で、想い出を作ってきた僕よりも女の都合を優先するのだ。そんな感性の奴らと一緒にいられない。だけど、今考えれば間違っていたのは僕の方だ。だって、セックスしたいもの。とってもセックスしたいし、股間に生えている肉棒が毎日僕に呪詛を投げかけてくるし、玉袋なんて使うあてのない精子をフル稼働で製造するし、ゴミ箱は妊娠しそうなほどティッシュで溢れるし、もう、辛抱たまらん。

セックスがしたい。本当のセックスがしたいんだ。そうヤフー知恵袋で返事をくれた、あの『千切りの君』が書いてくれたような。

プルルルル

メール音だ。

弟からのメールだ。

『女が店にこねえ、遅刻だ。貴重な俺の時間を奪っている女は万死に値するが、この時間をしょうがねえ兄貴に使う』

心の中ではざまあみろっていう気持ちがわき出るが、助かる。ヤリ次郎がレクチャーをしてくれるようだ。僕は返信をした。

『すまんな弟よ。単刀直入に伝えると、僕は愛のある本当の意味のセックスがしたいんだ。なぜなら二十五歳でセックスをまともにしたことがないからだ』

『兄貴マジかよ、童貞だったのかよ。この俺の兄貴が童貞かよマジかよ』

『いや、童貞ではない』

『だって今まともにセックスしたことないって』

『童貞ではない!!』

メールの途中で弟から電話がかかってきた。

出る。第一声は僕だ

「童貞ではない!!」

百人中百人が叫んでると認識しているレベルで僕は童貞ではないと訴えていた。実の弟に。これはこれで、一生ものの恥ではあるが、こちらとしては、童貞ではないのに童貞だと誤解されるほうが嫌だから大げさに訴えてしまったのである。ウソはよくないからね。

常軌を逸した僕の熱意に、弟は折れた。

「オーケーわかった。兄貴は童貞ではない理解したよ、ごめんな、大きな声を出させてしまって」

「いや、まあ、いいけど」

僕も確かに大人げなかった。ここいらで、童貞だ童貞ではないの、ゴールのない押し問答はやめにして、話しを続けたい。

「次郎よ、で、どうしてくれるの?」

お互いフラットな気持ちになって、弟のセックスをする方法を訊き出そうと思う。

弟の話は長かった。

なぜならば、いかなる場合でも最終的には自慢話になって着地をするし、自慢の効力を強くするために、一言、二言、説明が余分なほど親切に入るから、時間がかかるのだ。

「いいか? 女っていうか、そもそも人間ってのは、鏡見たいなもので、優しく接すられた者は人にも、赤の他人にも優しくなる。なぜならそれが常識だと考えるからだ。そして、迫害を受けてきた者は、迫害をする側になったら容赦なく残酷な行為をする。なぜならば残酷な行為をされ続けてきたら、それが普通になっているからだ。鳥は生まれてから初めて目に映った者を親だと信じるし生物には本能でそういう風にできている。小学校から習ってきた歴史の勉強で証明されているし、目には目を歯には歯をっていう言葉もあるくらいだ。つまり、女にとってやってもらって嬉しいだろう事をやってあげればいいんだよ」

「なるほど」

話の隙間がなくて相槌しか打てないしかし、メリハリのあるしゃべり方で退屈はしない。コレが弟のモテル要因の一つでもあるだろう。

電話嫌いの僕が感心するほどだから、本当に大したものだ。

「兄貴はただ人に合わせなさすぎたんだよ。だからさ、人が困っている時は空回ってでもいいから人のためになるようにすればいいんだよ。俺みたいに打算で動いたっていいんだ。キレイゴトだと自分で思っていても、人からみたらその言葉通り綺麗なことなんだぜ」

「うーん、仕組みは理解できるけど、実践となると難しいな」

「うるせえよ。セックスをしたいんだろ? 俺に相談するほどまでにしたいんだろ? だったら安いプライドなんか捨てて従えよ。俺はセフレが沢山いるぞ? コンドーム代で月に一万円、セックス後のタバコのせいで月に一万円。実績のある俺を信じろ」

「・・・ああ、うん、わかった。信じるよ。だけど、実際に相手のためにしようにも、何をしたらいいか」

「そこも任しておけ。後輩を兄貴の元に届けるよ」

「は? お前の後輩がなんだっていうんだよ」

「いや、だからさ、やっぱ、セックスに向かうには友人っていうか、同志が必要じゃん? ちょうど大学の後輩に童貞で悩んでいるやついたんだよ。そいつと結託してセックスというゴールに向かおうや」

「おいマジかよ。そんな初対面で不安だよ」

「大丈夫だって。おや、そろそろ女がくるみたいだ。またすぐにメールするからそれに従ってくれよ、じゃな」

電話が切れた。弟のやつ、味な真似をしてくれるね。緊張はしてしまうが、無理矢理にでも話を進めてもらわないと僕は何もしないというのは、経験で自覚している。仲間か、悪くないかも。弟は一体どんな指示をしてくるのだろう。初対面の人間と足並みをそろえて行動できるだろうか? 行動となると外にでることになる。挙動不審で警察に逮捕されないだろうか? コンビニとかに寄った時、レジで緊張しちゃってどうしよう、手が震えるのを笑われたくない。不安要素は沢山ある。

万年敷布団の上で、ゴロゴロと転がる。まるで片思いの相手からのメールを待っているような乙女のような仕草だ。想像だけど。ずっと逃げてきた僕だけどついに立ち上がらなくてはならない時がきてしまったのか。

もうちょっとゴロゴロしたかった。そして、オンラインゲームで伝説の騎士として崇められたかった。

そうこうしていたら弟からメールがきた。

『待ち合わせは新宿の東南口にした。ルミネの下で階段があるところな。兄貴の思う最高のオシャレをしていってくれ。十九時に待ち合わせだ。なんか不安になったら、メールくれ』

なんだそりゃ。おおざっぱ過ぎるだろ。

不安だ。よけい不安になった。不安メーターが振り切れそうだ。とたんに不安じゃなくなった。おそらく不安メーターが振り切れたのだろう。やべえ、全く不安ではなくなった。ナチョラルハイってやつだ。人間なんて一握りのサディストと大勢のマゾヒストで構成されていたんだ。歴史がそれを証明している。大丈夫だ。次郎の指示に従っていくとしよう。ひきこもりの僕がポジティブな気持ちで久々に外にでれる。大変嬉しいことだ。

強気になった僕は難なく外に出て、東京メトロに乗り込んで新宿に向かった。

何がメトロだ、外に出たストレスから攻撃的になった僕は、東京メトロのメトロというカワイコぶった名前にむかっ腹を立てた。だからと言っても何もならないけどね、電車は無事に進み十八時半に新宿についた。

駅のホームや構内で頭の中を支配したのはやはり、人の多さについてである。まっすぐ進んでいるつもりでも自分が進む経路を意識しないと人とぶつかってしまうという、有り得ない事態におちいっているのだ新宿は。加えて、何故だかわからないが、横切る人のほぼ全員が僕をちら見していく。気のせいかなって思っていても、試しにすれちがったを後ろを振り返ると、こっちをまだ見てる人もいるから、まず間違いなく、僕に視線が集まっている。

新宿は意味がわからない。いつもだったら、何かに責め立てられているような気分になって泣きながら走り出すけど、今はナチュナルハイだから平気。

まいったわ。

まいったが、人の目なんてハイになっている僕には大した問題にはならない。餓死直前の状態で、山のようなごちそうを出された時にショウジョウバエがちょっとくらい飛んでいても気にならないようなものだ。

とにかく、約束の場所に向かった。

新宿駅の構造がいまいちわからなくて、東口から出ちゃって、散々歩きながら東南口についた。やっぱり沢山の人がチラ見をしていたけど、ようやくたどりついた。

時刻はジャスト十九時で、ヤリ次郎の大学の後輩との待ち合わせタイムだ。僕より先にいるかもしれない。

しかしこの場には、速足に駅に向かうサラリーマンやチラシ配りのバイトやら、テレビに出ているタレントの劣化バーションみたいな若者であふれかえり、意味が分からなくなってる。

どうしたものかと頭を悩ませていたら、メールが来た。当然弟からだ。結構長文だった。

『合流できたか? 後輩は着いたってよ。階段の下で、兄貴らしき人物を探して、キョロキョロしているってさ。兄貴から見つけて声かけてやってくれよ。格好は下から黒のオールスターで、グレーのホットパンツ。白のトップスにインナーでチェックの柄。髪型はショートボブの結構かわいい女だぞ。仲良くやってくれ』

弟よ。実の兄に対して何たる仕打ちをしやがるんだ。僕が女と話せるわけがないだろう。

ホットパンツでショートボブの女って情報を手に入れたのならば、いくら気が狂うほど人が溢れている新宿であろうともすぐにわかった。よくよくみると完全に街から浮くほど美しい女がいるのであった。

東南口の階段下のちょうど真ん中にある中央分離帯のような部分を背もたれにして、勝気そうな瞳が印象のクールビューティがいるではないか。メール通りに下から黒のオールスターでグレーのホットパンツに白のシャツ。年齢は大体二十歳くらいの、若者で、若干吊り上った目で、誰かを探しているかのようにしている。こいつだ。

初対面の女と話すなんて嫌だな。胃をつかまれたような重さを感じた。

しかしここまできて、何もしないのはだめだセックスをしたいから僕の名はセックスシタロウなのである、ペンネームだけど。僕は自分が思う最高のフランクさで、彼女に話かける。タップでも踏んでいるかのように、軽快な足取りで近づき喉から声を出した。

「へ、へ、へへ、ヘイお姉ちゃん。君が探しているのはこの僕だろう? ま、まま、またせたなベイビー」

「・・・・・・」

一瞬、僕を完全にその鋭い目で捉えるも無言。ちらちらと誰かを探すように遠くを見つめる。

「・・・僕だよ僕。僕こそが君の探し人だよ。ほら、佐藤だよほらほら、国立大学で四年の佐藤の兄だよ」

ここで暴露する形になるが、僕の名字はセックスではなく本当は佐藤である。

「・・・・」

無視。

目線を遠くにしている。だけど、僕の存在に、気づいていて、困惑している。無理にでも無視している感じ。ここまでされると、僕もまたハイになるスイッチが入った。

「おいころ、女こらこらこら、無視するなや、僕がお前の探し人だってのこら、ボケ、何考えてやがるこっちを見ろ!」

強い口調とともに、僕の着ている最大限のオシャレの床まで届きそうなトレンチコートが波を打つように生地がゆれ、ハードボイルドな、UFOのようなハットが、後ろにずりさがる。

そうしたら女が強い口調で言った。

「くそだせいかっこうで私に話かけてんじゃないわよ! 恥ずかしくてどうしていいかわからなかったの!」

初対面の人間に、しかも女に怒鳴られるというのは、みなさんが想像しているよりも遥かに心に刺さる事態だ。さらに僕の場合は引き籠りみたいなものであるから、防御力もなく、初期の村の近くにいるブチスライムに殴り殺されるレベルだ。もう完全に戦意損失である。

「すいません、すいません、調子に乗ってました撤回します、許してください」

反射的に懇願してしまうのは自然の摂理である。身体を反転させて、一目散に逃げようと駆け出した。しかし、そうは問屋っていうか、クールビューティーの女は許さない。後ろを引っ張られる感触が伝わってくる。僕の自慢のトレンチコートの端をつかまれたのだ。

セックスシタロウは逃げ出した。しかし回り込まれたみたいなものだ。強制的に相手のターンになる。

「あなたが佐藤さんのお兄さんですね。話には聞いていました」

意外と優しいもの言いなので安心する。

自慢のトレンチコートを破かれても困る。振り返って女と対面する形になった。

やはり、ビューティーだ。キュートではなくビューティーなのである。アイドルではなくモデルそんなニュアンスの女だ。美形だ。

「まず私があなたに求めるものは、見た目です。そんなダサい恰好の人間と一緒に行動するのは、いくら先輩の指示とはいえ耐えかねます。なんなんですかその不似合いなトレンチコートとハットは。ギャング映画にあこがれているんですか?」

おいおい、会ってそうそうその言いぐさはないだろう。そもそも自己紹介すらしていないじゃないか。しかも、僕は先輩の兄貴になるんだぜ、言ってみれば超先輩のはずだ。なんだこいつ。無礼すぎるだろ。コミュ障の僕だから、強くは言えないけど、さすがに何かしらの事は言わないと。勇気を出して話しかける。

「いくらなんでも、あなた、失礼すぎやしませんか?」

がんばった。それでも相手はひるんだ様子もなく、演説のように言う。

「関係ありません。敬意を称するに値する人間ではないと、私は態度を変えません。むしろ謝ってください。あなたのような無残な見た目の人間と一緒にいる醜態を、人のあふれる新宿で晒されているだけで、私の名誉を傷つけている。許せないが、敬愛なる先輩の指示だから、あなたにお付き合いしますよ、しかし、その服装はすぐに着替えてください。それから自己紹介としましょうか」

やっぱり、外は怖いな。着替えてくださいって、どうやってだよ。という疑問を抱いていたら、ここからすぐ横にある、十階建てはあろうかというビルに連れられた。

女に手を掴まれて連れられた形になる。ある意味ボディタッチだから、当然僕は意識した。この女、もしかして僕に気がある? 何かと理由をつけて僕に触れたかった?

いやまさかな、ただ単に店内に移動させる流れとして触れたに違いない。

気にしないきにしない。惑わされるな。

そうして、女に連れられてエスカレーターを昇り、なんか清潔な洋服屋のフロアにいった。

ショップスだか、シップスだか、そんな感じで英語で書いてあって、ちょっと僕のセンスとは違うなって思ったけど、女がこの店で一式そろえろ、じゃないと一緒に居られないっていうから従うしかない。

女にお願いされちゃあ、男として応えないといけない。

「でも俺今金ないよ」

すると女は、顎を若干上に突き出すような仕草をし、完全に僕を見下した。

「わかりましたよ、お金は私が出しますから、気にしないでください。服を選びましょうか」

やはりこの女、ツンデレ? 見下しながらも僕にプレゼント? そういうこと?

クールに僕は自分の意見を言う。あくまで我を通すのが男だ。

「でも、この店の服、なんか普通すぎて、僕のセンスに会わないな。どうせ着るならカッコ良くないと」

「私が選びます。試着室で待っていてください」

セリフのケツを食い気味で女は言って、服を選び始めた。せっかちな女である。そもそもがおかしな話である。服を着替えるなんてなんでしなければいけないのだろう。弟が言ったように、最高のオシャレをして来たっていうのに、このトレンチコートは、ローンで買って六万もしたっていうのに、なぜ着替えないといけないのだ?

このハットだって、喜劇王チャップリンが被っていた帽子にクリソツだっていうのに。謎ばかりである。

女が選んだ服に着替えた。

普通だった。

靴から頭のテッペンまで着替えさせられたが、無難な恰好過ぎて、なんの意味があるのか理解できない。

靴はあまり装飾のされてない、白を基調とした地味な靴だ。なんでつま先を尖らせないのだろうか疑問である。

ズボンはベージュ色で、サイズは僕の脚に対しちょっと余裕のあるダボついた感じ。ジーンズではないが、丈夫な布で出来ている。ウエストはまあまあ太く、僕のポリシーとしては、へそくらいまで、ズボンをあげて、シャツをインするファッションがベストなのだが、それを阻止するかのようなデザインのズボンだ。ベルトは黒で、襟のついたポロシャツと無地の紺のカーディガンを着せられ、頭には、赤と白のニットキャップを被せられた。

着替えたままでお会計を負えたみたいで、そのまま二人で店を出る。エレベーターを降りて屋外に出ると、女が振り返り僕の全身をじっくりと見る。

「髪型がダサいから、ニットで隠しました。まあ、これならいいでしょう。一緒に歩いても」

「こんなにプレゼントしてもらって悪いね」

感謝の気持ちを表したっていうのに、女は突き刺さるような目線で僕を睨む。

「べつにあなたのためにやっているのではありません」

冷気を帯びた女の声と目力で今は秋だけど、一気に一月になったかと思うほど、寒くなる。なんだっていうんだよ女よ。

バツが悪くなって言葉を探した。出た言葉はこれだ。

「金はいつか払うよ。ところで僕のトレンチコートはどうしたの?」

「あなたの服はすべて処分しました」

「は?」

「あまりにもダサかったので、捨てました」

「何言ってんだよお前」

「まあ、いいでしょう。新しい服を手に入れたんだし。ギャングのコスプレなんて卒業しましょう。あなたはギャングではないのですから」

「お前、あれ、なんだよ、おま、あれほどカッコイイファッションって、ないよ!? 何言ってんの? どうしたの、センスを疑うよ。つーか捨てるなよ、いくら服をくれたって、捨てちゃだめだろ。横暴だろ」

切れた。母親以外で異性に切れたのは生まれて初めてだった。

「はいはい、怒鳴ってもしょうがありません、そんなに服が大事なら、今から店に戻ってとってくればいいですよ。店だって、あんな無駄にごわついた服捨てるのも面倒ですからね」

なんだこの女、なんだ、こいつ。自己紹介も終わってねえし、なんだよ、感情が止まらねえよ。どうなってやがるんだ。こいつとセックスしたいな。

これを読んでいただいている、どっかの誰かさん、なんで僕がこんな女とセックスをしたいと性欲がむくむくと湧き出たか疑問に思うでしょう。でも自然な流れだ。家族以外の人間と関わりを持った経験が少ないこの僕が、さっき会ったばかりの得体のしれない、自己紹介も終わっていない女に怒りを感じ、言葉にしているのだ。稀有な例である。今回を逃すと、今僕は二十五歳なわけだから、単純に計算して、五十歳で二回目が訪れ、三回目は七十五歳、四回目は百歳となる。奇跡のようなものだ。

奇跡ついでに、セックスまでイッテしてしまわないと、もうやばい。次の機会の時はゴミ箱を妊娠させるほどの性欲は消失しているだろう。今しかないのだ、セックスするチャンスは。

ハラの内は『どピンク』で表情はクール。

さて、どう動こうか、狙うは、後の先かな。

「ま、ま、ま、まあね、わかりましたよ。服の事はとりあえず大丈夫です」

セックスのためだ。怒りを覚えていては確立が減る。大人の男として、冷静にいこう。

「そんな、泣きそうな声でボソボソ言われても聞こえませんよ。もっとはっきりいってください」

「・・・・・・」

気遣い無用の本質をつく言葉と、強い口調に、僕の心は早速折れそうになる。

一番気にしていることを堂々と。これだから、外は嫌なんだ。

でも、でも。セックスしたい。

「まあ、いいでしょう。服の事はどうしてもっていうのなら、レシートに書いてある電話番号に一本入れれば、ある程度は保管してくれるはずです。それよりも、本来の目的を進めましょう」

 そんな感じでとりあえずこの件はお開きだ、本来の目的の最初の一歩にようやくなる。

改めて新宿の街を見る。あいもかわらず、気が狂うほど人があふれている。

この街で僕という存在は浮いていないのだろうか。さっき会ったばかりの他人と二人でいて現実感がないな。

女は僕の目をはっきりと見た。

「初めまして、花澤香苗です」

僕と違いはきはきとした発声だ。

「わかっていると思いますが、佐藤先輩のサークルの後輩です。あなたの弟さんには本当にお世話になっています」

「・・・そ」

どうにか「そ」とだけ発せられた。僕は声にならない呼吸のような返事しかできない。わかってはいるけど、弟の話になると劣等感がわく。だけど、毎回毎回弟の話になるたびに、へこんでいては何も進まない。

「・・・ごめんね、こんなしょぼくれた奴が、あいつの兄貴で」

「大丈夫です。話は聞いていましたから」

フォローのようにいうけれど、明らかに腹の内は期待外れと思っているのだろうな。目線でわかる。伊達に劣等生をしてきたわけではない。

「先輩に言われたのは、私とあなたで結託をし、あなたにパートナーを作るということです。なので私は全力で、あなたに協力をします」

「そ」

「なんですか、そのやる気のない反応は。今から夜の街に繰り出すんですよ。セックスをするんですよね、だったらもっと、モチベーションをあげて」

「・・・ああ、わかったよ」

とはいったものの、せっかくできたセックスをしたい相手が、完全に弟の狂信者じゃあ、複雑だよ。

「まあ、いいでしょう。それではプランをお教えします」

なんか話が進んでいるけど、ここいらで疑問を解かないといけない。のどに何かが引っかかっているような不快感を覚えるが何とか声を出す。

「・・・あの、君って、お、お、女ですよね? 僕の聞いた話だと、童貞って聞いたんですけど、あなた、女ですけど、童貞ってどうなんですか」

一瞬、沈黙が訪れる。気持ちの問題だが、新宿の喧騒も聞こえないほどだ。

女の目が怖い。そうこれはまるで、インターネットでみたサメの画像のようだ。そして、預言者の如き重きニュアンスで彼女は喉を震わす。

「悪いですか」

「・・・・いや、・・・僕は別に」

「殺すぞ」

なんでだよ。

「いやいやいや。殺すぞってわけがわかりませんよ」

相手の殺気に当てられて、防衛本能のためか、スラスラ声がでた。

「私はね、完璧を目指しているんですよ。見た目もね、美しいです。毎日三面鏡で全身を見てますし、ファッションだって、勉強しているし、美容体操もしているし、ナンパだってされる」

「そんなことを言われても」

彼女の熱気とボルテージに当てられて汗が滝のように出て来た。

「なんでこの私が、二十歳を超えても処女なんですか。唯一の揺るぎない欠点ですよ。これはね」

知るかよそんなこといきなり告白されてもよ。でも待てよ、処女と限りなく童貞に近い僕。ベストカップルじゃん。これは、もしかして、もしかするぞ。しかも美少女。

弟よ、そういうことか?

味な真似をしてくれるぜ、弟よ。何事にも、理由はある。状況的に考えて、あのプレイボーイのヤリチンイケメンである弟は、モテモテだからすり寄ってくる女を追っ払うのが面倒だ。もしくは自分みたいな貞操観念の軽い男が、大事な後輩の処女を奪うのは気が重い。悪い。

そう弟は考え、限りなく童貞に近い僕と、処女をくっ付けることにより、お互いがお互いの穴を埋めるかのごとく、寄り添うようにセッティングしたのではないかと想像できる。

奴の思惑は悪くない。僕も自発的に目の鋭いこの女と、セックスをしたいと肉欲が疼いたのだ。悪くない、悪くないよ。

「佐藤先輩からはこういう風に指示をされています」

何も知らずに女は弟の指示に従うとは、哀れなものである。髪を耳にかけて、言いますよって、雰囲気をより一層女は演出した。

「ナンパをしてその日のウチにセックスをさせてやってくれ、とのことです」

「はあ」

指示ってほどでもないな。って思った。で、疑問をいだいた。女がナンパできるものなのかなって。

「さすがにあなたも察したようですね、女の私と二人でナンパをしても不自然じゃないかって。その通りです。すでに用意があります」

「はあ」

さっきから僕はあいづちしか打ててないな。やっぱりコミュ障だからどうしようもないのかな。

一瞬、コートを捨てられて女とちょっとは喋れたけど、あれはドーピングのようなものだったんだな。ってか、こいつ、僕のこと少しバカにしてない?

「私も服を着替えてきます。しばしお待ちを」

そういって、女はどこかにいった。そういわれてみると、背中にリュックをしょっている。

で、僕は新宿で一人になった。することもないので、周りを見渡してみる。目に入ったのは、速足に歩く仕事帰り風のスーツの人や、清潔そうなカジュアルの服をまとった若者。生の足が露わになっている髪の長い女性。制服を着てティッシュを配っている金髪の男。

みんなそれぞれが、それぞれの理由がありこの新宿にいるのだろう。友達と楽しそうに話したり、忙しそうに速足で歩いたり、アルバイトでティッシュを配ったり、十人がいたら十通りの理由があるだろう。

そんな予測不能な人達の人生に混ざって、例え一晩だけでもセックスという形で介入してしまっていいのだろうか?

僕にはそんなに覚悟はなくて、セックスをしたいだけの肉欲しかないけど、いいのだろうか?

ビビッてきた。

この街にいる人達はみんなしっかりと生活をしていて、生きている。それに引き替え、僕は親の仕送りでどうにか息をすることができている。なんてことだ。これはもう、生き物としてジャンルが違うのではないか。種族が違うのにセックスなんてしてはダメなんじゃないか?

進化論をとなえたダーウィンがガチ切れするんじゃないか?

立派に生活している人の性器に僕の性器を挿入して、ピストンするなんて、宝くじで一等を当てるよりむずかしいよ。

どうしよう。

僕だけが異星人だよまるでね、怖いね、怖いね、むしろ怖くないね、期待できないから怖くないね。でもやっぱ怖いね、この人たちに声でもかけられようなものなら、心臓が止まっちゃうかもね。

「止まるかもね」

ぼそりと、独り言をこぼした。

そして、言葉には言霊がある。だからなのだろう、緑のキャップを被っている、目の鋭い男が肩ドンをしてきた。

歩き方からして、ワイルドっていうか、武骨っていうか、意思を通すぜって感じが伝わってきていた。身体の線は細いけど、気持ちで負けねえぜって感じの奴である。

『新宿は人が多いので僕は止まっていたけどぶつかっちゃったのだな』って事で僕の中でまとめたけど、そうは問屋は卸さない。

「なにぼけっとしてんだよ!」

顔が熱くなった。緑の帽子に因縁をつけられたからだ。

「・・・あ、あ、あ」

自分の心臓の音が聞こえる。何を言ったらいいか、何をしたらいいか、声が出ない、体が自然に動いて、下を向く。何かの力で、首が前を向けない。緊張をしすぎて現実感を失うほどだ。怖い。

「あっはっはっはっ」

そしたら、笑い声、なんか結構子供みたいなかわいい声。

ゆっくりと顔を向けると、緑のキャップ男が中性的な笑顔を咲かせていた。

「私ですよ、なんて反応しているんですか」

「は?」

「は? じゃないですよ。騙されすぎです」

「何それ、花澤さん? か。どういうこと? なに? サプライズ?」

「いやいや、ナンパするなら男二人じゃなっきゃってことで、男装ですよ、当たり前じゃないですか」

「あ、はい」

「じゃあ行きますか」

「あ、はい」

あっけにとられながらも、そうして、二人で歩いた。

行先はわからないけど、彼女にはプランがあるのだろう。時折、横顔を覗いてみる。不思議なものだ。さっきまで、モデル系のビューティーさだったのだが、服装を変えるだけでこうも印象が変わるものか。

僕の視線に気づいたのか、男装した花澤さんは、なに? ってかんじで、僕に視線を向ける。

「・・・いや、その、服装だけで変わるんだなっておもって、その、別に視姦していわけではその」

「服装だけではありませんよ」

「・・・え、その、そうなの?」

歩きながら会話をしている状態だ。

赤とねずみ色の煉瓦で色分けされた、歩行者を優先させる感を出している通りである。

「印象ってのは意外に、些細なことで変わるものなのです。今は男っぽい歩き方を意識して動いていますし、声も喉を閉めることにより、低音にしています」

「・・・そんな、そんなことが、可能なんだ、すごいね」

冴えない返事しかできない僕はだめだ、死なないかな? って自分に疑問を抱いてしまう。

「声のトーンだって大事ですよ。抑揚をつけるだけで、話を流される確率が半分以下になります」

「・・・はぁ」

「そして、お兄さん。あなたのように、平坦でぼそぼそって小さくしゃべるのは最低ですよ、ナンパも何もないです。相手からしたら、罰ゲームで、私たちに声かけてきたの? って思われるレベルですよ」

こいつ、ずかずかというな。でもそのとおりだな。

「そうは言われても、無理だよ、ずっとこんな喋り方なんだから直らないよ」

「意識するだけでも違います。何事も一歩づつしか進まないんですよ。やってみましょう」

花澤さんは、まるで家庭教師のようだな。年は弟より下だってのに。

はっとした瞬間、すべすべの花澤さんの手が僕の眼前に唐突に迫る。

「服装をそれなりにしてみると、やっぱり、兄弟だなぁ、佐藤さんに口元とか似ています」

ぞくっとした。突然の出来事だってのもあるけど、まるで、高価な宝石を愛でるようにねっとりと、僕の唇にあっさりと、大胆に触れてきたからだ。

愛でられた記憶なんてないから、僕はもうびっくりして、おしっこが10CCほど漏れた。

花澤さんの愛ではまだ続き、ひるんでいる僕の目を蛇を連想するような鋭い瞳で覗きこんでくる。そして、恐ろしいまでに冷たい声で言う。

「でも目が死んでる」

首元に切れ味がするどい鎌を当てられているような恐怖を感じ、口をパクパクと魚のように動く。なんだこの女。

すると花澤さんは、ポケットから煙草を取り出し銀色に輝くジッポで火をつけ、白い煙を辺りに巻き散らかした。

さすがに、唐突な行動と路上で煙草を吸いだす男装した美女っていう、展開に僕も仰天ではある。急に怪しい雰囲気を出し始めた花澤さんに流されているのが怖くて今の状況を打破したくて勇気を出して言った。

「…い、いけないんだぞ、路上で煙草はもう吸っちゃあだめなんだぞ、あと、年上を尊重してくれよ」

人ごみのなか注目をされるなんて嫌だし、煙草の事で近くを歩いている正義漢にマナー違反を指摘されて、テンションが下がるのもいやだしね。

だけど僕の勇気ある一言も完全に無視されて、すぅーって大げさに呼吸音がして、しっかりと肺に煙をいれた花澤さんは、そのまま十秒間フリーズをする。長い沈黙とタメがあって、それが我慢できなくて、なんか言えよこらって思ったその瞬間、顔を夜空に向け煙を真上に排出し花澤さんは言った。

「これは煙草ではありません」

「煙草だろ」

うねっと首をもたげ僕を見る彼女の眼は焦点が定まっていない。なんだ、様子がおかしいぞ。

「私が吸ったのは合法ハーブです。だから都の条例は乱していません。ハハハ、ハハ、来た来た来たよ」

えーー! 何こいつ。

「ぐるぐるぐるぐる、回っています、そして耳は集中力がまして、思考は同時進行で五つまで可能になりました、口もすらすらすらすら、よく動き、あなたの言いたいこともその冴えないツラでわかります。とにかくあなたは、佐藤さんの兄として全てが足りない。話を聞いた時の見積もりから考えて半分も満たしていない。それは自信のなさからくるものであり、ならば、私が今晩、適当な女を見つけ出して、バンバンセックスさせてやるよ。素材自体は佐藤さんのDNA持っているから、いいんだけど、腐らせてしまっているから、ダメなんですよ、佐藤さんは輝かせるのがうまいから、だから私もあの人と一緒に輝きたい、今回の話は佐藤さんに認めてもらうために引き受けたわけですが、とんだ遠回りだ。とっととやって、とっとと、終わりにしましょう」

さっきまで鋭かった目が、切れ長感を失い、エッジ効いたクールの要素はなくなり、目を見開いたただのラリ太になっている。

ネットの画像でみたことあるけど、完全にラリッている人特有の気配が出てる。

コイツ、常習犯だな。

「なんだその目は、生意気だなおう、こら、合法だろ。私は悪くないよ。お前も吸え。ちゃんと肺に含んで息を止めろ、それがルールだ」

コイツ、地雷女ってやつだ。だけど、美女なのは、間違いない。

煙草のような合法ハーブを口元に近づけられて、それを咥えたならば、唾液の交換で間接キッスのできあがりだ。たまらんね、ハーブとか関係なしに、間接的に美女とキス、これを断る野郎は、インポ野郎だ。

「でもでも、でも、こわいよ」

「いいから吸え、息を止めろ。ルールだよ」

で、吸った。

歯車が動き出して、カチカチカチと金属がかみ合って音をだして、新宿がメリーゴーラウンドのように、周り始めた。肺の内側がチリついて、心臓がポンプになって、血液にハーブの成分を浸透していく感触がたしかにある。

街の喧騒が、ある一定の完成されたリズムで刻み、人のざわめきが、ゴスペルの旋律のように耳に心地いい。

集中すれば、ここいら中の会話は全て判別できそうな、全能感も生まれ、僕はもう、セックスしたろうっていう気持ちより、あんたたち、モブ達の心の中に一生すみつくような一つ上の存在として君臨してやろうかなって気分になった。

でもやめておこう。モブ達のレベルの低い世界に参入するのはナンセンスだ。

「おい、花澤。ホテル行くぞ」

さっきまで僕の唇を愛でていた、手に畏怖を覚えていたのが愚からしく感じたので、今度はこっちから、つかんで、ついでにホテルでもいって、愛してやろうかと思う。

だってコイツは処女で、女っていうのは、どんな不細工でも、男装していても、性格が歪んでいても、つきつめると、おとぎ話のお姫様だから、愛してやらないといけない。

手を引き寄せ、腰を軽く抱き、小走りでホテルまで促す。

金はないがクレジットカードがある。今夜はパークハイヤットのスウィートルームだ。そんで挿入だな。

俺は花澤の手を握り、新宿のパークハイヤットを目指した。

二十五歳になった俺レベルになると、スウィートルームで、アダルトなセックスをするのがふさわしい。そう思うようになった。イメージでしかないけど、大人はパークハイヤットでセックスするのが、一流なのだ。そんなイメージなのである。パークハイヤットはそんなイメージなのだ。

問題はイメージが先行して、パークハイヤットの位置がさっぱりわからないことである。

「花澤よ、新宿にいればすぐにパークハイヤットの建物がみえると思ったが、見えないな、どこにあるんだ」

ハーブで強気になった俺は、女を呼び捨てだ。俺、かっこいい。

花澤の顔をみると、完全にメスの顔になっている。顔もなんか赤い。

「・・・・・・・」

「おい、花澤、どうした、なんか言ってくれ、花澤よ」

それでもなにも言わない花澤に思わず必死に問いかける。

ハーブにより、全能感にあふれるある意味、神となったこの俺ですら焦るほど、花澤は無言で明らかに異変が出ている。

「おい、どうした? 佐藤の兄だぞ俺は。俺とセックスできるんだぞ? 光栄に思いなさい。はやくスマホでもいいから取り出して、パークハイヤットと場所を調べなさい。それともオナホでも買いにいくか?」

もうなんか、スマホっていったから、ノリでオナホって単語を出したくなっちゃって、意味がよくわかんなくなってる。

地面に右足を踏ん張って、ブレーキをかけて、九十度身体の向きを変えてみる。

花澤の様子をしっかりと丁寧にまんべんなく確認しないとだめだと思ったからだ。そして見た。なんと驚くべきことに、顔色がナスのようになっていた。

まじかよ、どうなってんだよ。って思ったけど、さっき赤かったとおもったのは、赤紫のようだったような気がした。進化して完全に紫になったのだと予想もできる。

「どうした花澤、お前どうした?」

手をつないだまま歩みを止めると、花澤はもう辛抱たまらんとばかりに膝をつく。肩で息をしている。

男装しているから、イケメンにみえるわけだけど、そして偏見だけどイケメンイコールスポーツ万能ってイメージだけど、そんな奴が、ひきこもりの僕のスピードについていけなくって、跪いている錯覚に陥る。

おいおいおいおい、どうしたのだね、花澤氏ぃ。俺のスピードについてこれなかったのかね?

そんな優越感の気分なのだ。

辺りを見回すと、ここはどうやら新宿の伊勢丹付近の細い道であるようだ。新宿通りはすごく歩行者や車が走っているけど、ここは、結構静かなものだ。

花澤は膝をついて、まだ、はぁはぁ言っている。俺が勝者、花澤が敗者の図のようだ。

ひきこもりのこの俺が、イケメンでスポーツ万能でありながら、美女の顔を併せ持つすごい人間に勝ったのだ。

さらに今からこいつとセックスをする。体位とか、よくわからないけどするのだ。腰ふりの練習などまったくしてないけど、つくのだ。ピストンをしまくってやる形になるのだ。

その結果、花澤の腰が砕ける手前になってもしょうがないと思っているほどだ。

いつまでも道に跪いているんじゃないよ、とっととホテルにいくぞ?

俺は花澤の顔を覗こうと、膝ついて下から花澤を見上げる形をとった。さっきまでナスのような顔色をしていたから、ことによると、大惨事になっているかもという可能性も否定できないと心配になったというのもある。

「おい大丈」

ひきこもりが調子にのるものではない。自分の生活すらままなっていないのに、相手を心配するなど五年は早かった。

セリフの途中でまず感じたのは、物的圧力だった。顔を何かに押されているって思考が働いたと思ったら、酸っぱい臭いが鼻をつき、よくやく気がつく。ゲロのシャワーを顔面にくらっているってことに。

一番の問題は目だった。

ゲロをくらったことっていうも大変だが、視界がふさがれたことがやばい。

目がみえなくなったことにより、普通だったらくらった瞬間に身体をひっこめ、ゲロを回避することができるはずだが、その動きができない。っていうか、動きたくなくなった。

ただ茫然と花澤が吐くゲロが終わるのを、ゲロをくらいながら願うだけしかできなくなってしまった。いや避ける気になれば避けられるのだがなんだかもう、後悔と反省ばかりで動いてはダメな気がしているのだった。

ああ、ハーブで気が大きくなっていた罰かな。一人称が僕から俺に変えたのがよくないのかな。やっぱり僕は僕に戻ろう。そして、謙虚になって生きていこう。ゲロのシャワーは懺悔をさせる。

時間にして、二十秒、体感時間で五分、僕はゲロを顔にくらい続けた。なんかもう、帰りたいって気持ちだけが僕のすべてになった。

「本当に、本当にすいません。実は私、緊張しいで、佐藤先輩のお兄さんと行動となると、緊張するなって思って、紛らわすために、限界以上のハーブを吸ってしまっていたんです」

吐き終わって、息を整えたのちの謝罪の言葉である。

「・・・うん、まあ、いいよ、ゲロぐらいどうってことないよっていうか、僕は常にゲロより汚い、ゲボ人間だから、むしろ綺麗になったようなもんだよね、ありがとう」

もやは、自分でも何言ってるんだよって、レベルになってる。

「それもそうですね、ハハ」

無邪気な笑顔で肯定されたがさすがにそれはちょっと違うんじゃないって思った。自虐はスルーしろよ、お前のせいでもあるんだからさ。まあいいよ、もういいよ、とにかく、僕たちはチームとして最低だよ。七時に合流して、ナンパでもしてセックスに向かおうとなったけど、もう、時間も九時過ぎてるし、折角買った清潔な服も、ゲロまみれの酸味で、ナンパなんて到底無理だよね。

それもあるけど、気持ちがもう、帰りたくなっているのが一番でかいけどね。

「ハーブはもうやめましょう。そして今日はもう帰りましょう。佐藤さんの顔からは私のゲロの匂いと、夕方に飲んだ、バニラクリームフラペチーノの匂いがして胃がムカムカしてきます。本当に好きなんですよバニラクリームフラペーチーノが。嫌いになりたくないから帰りましょう」

「結局、したことといえば、服を買ってちょっと走っただけだけどな」

「帰りましょう。日を改めましょう」

「うん、そうしよう」

考えはまとまった。

花澤と別れ、各々で家路についた。

タクシーに乗る金がないし、電車もゲロまみれで乗るのも気が引けるので、五キロの帰路を歩いて家に向かう。久々に歩いたせいで、地球の重力が憎たらしいほど足が痛い。

歩いていると脳みそは回る。最低だったな。だけど、不思議だ。最低なんだけど、今までになかった、充実もあったな。一緒に服を買って、歩いて、ハーブ吸って、ゲロをかけられた。ははは、なんだこれ。不毛だ。だけど、すっかりこれはもう、花澤とは他人ではないよね、これはもうね。他人ではなく、仲間だよ。あいつはどう思っただろうか。地面を踏みしめる足に力がこもり、グッという音が耳に届く。僕は初めて地に足がつくという言葉を実感した気がする。

アパートに着きポケットから鍵をとりだして、鍵穴に挿入し回す。カチンという音がしてアパートの鍵を解除したわけだ。

僕のちんこも、早いこと挿入してピストンをして、分身の種を放出したいものだ。出来る限り薄くて無臭のコンドームをチョイスして、膣の感触を体感したいものである。

自分の部屋について、ゲロまみれの服を脱ぎ、風呂場で軽く水洗いをする。

いくら美女のゲロだからって、臭いものはやはり臭いのだ。きつかった。水洗いで大半の汚れを落としたのち、洗濯物を溜めこむカゴに放りこんだ。シャワーをあびて、さてと、今日は今からどうしてくれようかってなった。

僕はもう、眠くなったら寝る。逆に言えば眠くなるまで寝ないっていう、オンラインゲーマーみたいな生活だから、今からどうしてくれようかってなる。

オンラインって言えば、ヤフー知恵袋にまだ返信をしていなかったのだ。

顔も何も知らないが、千人切りをしたという人の温かいメッセージにより、僕は今日、新宿にいくという、冒険アドベンチャーを実行できた。お礼をしないといけない。

パソコンを立ち上げて、ヤフー知恵袋を開く。

『セックスシタロウさんへ、セックスをするのは簡単っていってしまえば簡単です。だけど難しいともいえます。両方の要素を持っています。それはなんでかっていうと、例えば風俗で性交渉をしたとしましょう。法律では禁止はされていますが、事故であなたの男根が挿入を開始したとしましょう。はい、それはセックスです。しかし、完全なセックスではありません。なぜなら、セックスとは心も体も繋がりようやくセックスなのです。理解していただけましたか? 私ごとになりますが、体験人数は千人です。千切りです。夜の帝王です。遊びの帝王です。しかし、完全なセックスは二桁いったかどうかでしょう。セックスシタロウさん。あなたは遠く険しい道の一歩を踏み出しましょう。安易な形上のセックスではなく、完全なセックスを目指しましょう。そういうことです。ようやくここで、私からの本当のアドバイス。友人と一緒にセックスを目指しましょう。お互いに助け合い喜びを倍に、悲しみを半分にしてセックスに向かって行きましょう。セックスは強大です。経験豊富な私でさえ次のセックスはいつになるかわかりません。一年後、十年後、二十年後、はたまた、明日か。セックスの神に祝福あれ』

やっぱ素晴らしいな。

千切りの人を素晴らしいと感銘を受けた人は僕だけではないようだ。普通ならば、僕の質問にどんどんとアンサーを出す人がいるのがヤフー知恵袋なのだが、『千切りの君』の言葉に反応をしている人しかいない。

『現代社会において、セックスは娯楽になり下がったと感じていましたが、そうじゃないんですね、そういった意味では僕は童貞なのかもしれません。このページに巡り会えて本当によかった』


『わたくし事になりますが、ここのところ、鬱気味でありまして、ニーチェの言葉の本を読んでいたのですが、千切りの君の言葉の方が、千倍万倍いや億倍の衝撃がありました。大学時代に味わった初めての恋人とのセックスを思い出して、私の人生を輝くべき栄光に仕立て上げようと強く思いました。ありがとうございました』


『あなたの言葉、産経新聞のコンテストに応募したらいかがですか? 絶対にいいところまでいきますよ。なんだったら僕の方からやっておきましょうか? 実は僕は産経新聞の第二制作班ですから』


『俺の友達にもどうしようもない夜遊びのチャラ男がいるんだけど、あんたの言葉を転送したら、感動したって返信きたよ』


などなど、僕の質問などオールスルーで『千切りの君』を絶賛するコメントが、たったの十二時間で沢山ついた。光栄な話である。腐ったような僕の質問で、これほどまでの影響力を及ぼす名言が生まれたのだ。

ハッピーエンドだな。



第二話を書こうとしてますが、地球の高重力でキーボードがなかなか叩けません。構想はしているのですが、なかなかね。でも書きたいです。

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