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跳躍力
高く跳ぶこと好きだった
少しでも高く、誰より高く
それが願いで、それが望みで
それだけが生き甲斐だった
トランポリンのバネに跳ねられ
上昇していく瞬間の高揚感
頂点に達した時の浮遊感
失速がもたらす悲壮感
まるで芸術を一瞬で作り
一瞬で堪能し、一瞬で壊す様な
そんな感動を楽しめる
跳ぶという行為が大好きだった
そんな私に聞いたら
こう答えるに決まってるだろう?
「高く跳びたい、高く」
身構える英雄は翼をもがれ
白い体が赤く染まっていた
「不粋な羽だね、まったく」
憮然顔の怪人は表情の通り
不機嫌な口調で英雄に言った
「まるで虫みたいに飛び回って」
実に不愉快だ、と怒りを混じらせ
眼前の英雄に敵意を強める
「無様に地べたを這いずり回るが良いさ」
そう台詞を残し、蛙の怪人は
高く跳び、英雄に向かって墜ちていく
トランポリンって体力使いますよね