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手にした力
僕は消防士だった。
英雄と怪人が戦った被害で
崩れかけたビルに取り残された
大好きな彼女を助けたかった
でも非力な僕は
倒れてきた柱に押し潰された
救えなかった、助けれなかった
彼女も救えず、真っ暗な世界に落ち
絶望する中で声が聞こえてきた
(力が欲しいか、と)
だから僕は望んだんだ
単純な「力」を望んだんだ
英雄との激しい戦い
逸れた攻撃で崩れるビルの中
倒れそうな柱を支える彼は
炎に焙られボロボロの身体で
「だからもう良いんだ」
はっきり分かる笑顔で
「今度は救えたから」
勝者の様な口振りで
眼前の英雄に願う
「僕を殺してくれ…」
逃げた人々は口を揃え
こう証言したという
『蟹の怪人が助けてくれた』
焼き蟹って美味ですよね