いつも其処に
化物の奇声と怪人の雄叫びが飛び交う戦場で
白衣の怪人は空に両手を広げ、瞳を詰むる
何かを懐かしむ様な仕草に構わず
眼前に迫る化物は牙を剥き出し、腕を振り上げる
鋭い爪が屈強な筋肉によって振り払われた時
激痛に耐えられず叫んだのは
「うるさいですね、まったく」
化物の方だった
良く見ると化物の腕は在らぬ方向に曲がり
骨が折れるか砕かれているのが見てとれる
おそらく怪人に腕を振るった瞬間にへし折ったのか
常人は勿論、英雄の目でも見えなかった
合気道を思わせる構えの怪人は瀕死の英雄を庇い
次々と化物を投げ飛ばし、腕や指を折っていく
「私は医者だからねぇ、治し方は知ってるよ?」
そう呟きながら白衣の内側から小さな刃物
医療用のメスを取り出した
「そして治し方を知ってるって事は」
メスを化物に向かって、ダーツの様に投げ
手や足を折られた化物にとどめを刺していく
「壊し方も知っているのさ」
周囲の敵をあらかた片付けた白衣の怪人は
瀕死の英雄を治療しながらこう言った
「おや?この前の患者さんか、経過はどうかな?」
手当てを施し怪人の表情は
悪の怪人でも無く、化物を倒す強者でもない
患者を救おうとする、医者のものだった
ちぇんちぇーなのよさ




