儚く、強く
悪の定義は、勝者によって作られる
敗者は常に悪となり、勝者は常に正義になる
人の長い歴史の中で幾度も繰り返され
幾度も正義が悪を倒してきた
考えれば当たり前である、争いに勝ち
領地なり、覇権なり、一つに纏めようとしたのに
何故自分を悪とみなし、団結を乱す必要がある?
だから勝者は常に正義を語り
どんなに卑怯でも、どんなに罪を重ねても
最後に勝てば、すべて水に流される
とても解りやすくて、馬鹿らしい
なら、最初から自らを悪と呼び
敵対する相手を正義と見なせば
そんな勝者と敗者は意味を無くし
本当の正義とは何かを、人々は気付くかもしれない
「ってあの人は言うんだがよう」
覆面レスラーの出で立ちの怪人は
小難しい事は解らん、と顎を撫でながら言う
化物にとどめを刺されそうだった英雄を救い
豪快に大声で笑うその姿は、逞しさを感じる
「でも、俺でも解る事が一つあってな?」
例えるなら大工の親方を思わせる人柄の怪人は
いっそう大きな声で上司の言葉を借りた
「世界を支配する為に、まず平和を護るのさ!」
悪を倒すのが正義ならば
平和を護る彼らは何なのか、
己の弱さと、疑問に押し潰されそうな英雄は
ゆっくりと意識を失っていった
馬鹿は馬鹿なりに考えがあります




