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地獄の門  作者: 赤城康彦
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楓山に血風吹き荒ぶ 四

 鬼はその俊足で逃げる子分に追いつき、後ろから蹴りを繰り出せば胴が破裂しはらわたをぶちまけ。あるいは両腕を掴まれれば、そのまま腕が引き千切られて、倒れてのたうつところへ足が頭を踏み潰し。

 あるいは足をつかまれて、そのまま股を裂かれて……。

 鬼による一方的な殺戮が繰り広げられていた。

「ひ、ひいい」

 楓太郎は無様にも失禁して、足をどうにか動かして逃げ出す。それを見て覇偉栖はにやりと笑うが、鬼は追いかけない。

 付き添いの家来は後ろから、

「どうしたのじゃ。楓太郎が逃げるぞ」

 と言うが。覇偉栖は漆黒の闇の影に顔を覆われたまま、ふっと笑って首を横に振った。

「あれでよろしい」

「なぜじゃ」

「ああいった悪党は、なまじ殺すよりも生かした方がより惨めな目にあうのでございます」

「しかし……」

「まあまあ」

 そう言ううちに、子分どもは皆殺しにされた。誰も彼も、五体を残さず。血肉をばら撒けて、という無惨なものであった。

 その中で、覇偉栖は楓太郎ひとり逃がしたのである。

「もうよい。戻れ」

 そう言うと、鬼はその巨躯が霧のようにうっすらとしたものになったかと思えば、引き寄せられるようにほんとうに黒い霧になって覇偉栖の顔に吸い込まれていった。

「いかがでございます」

「……」

 漆黒の闇の影もなくなって、もとの素顔で家来たちに笑顔で振り向く。その笑顔は、殺戮を楽しんでの、残忍な笑顔であった。

「う、ううむ……」

 家来たちは言葉もない。しかし、

「楓太郎を逃したのは……」

 納得いかない、とひとり、ようやく口にした。だが覇偉栖はこともなげに、

「あれでようございます」

 と言った。

「よいと言っても。また楓太郎が楓山にあらわれて悪さをするかもしれんぞ。いや、我々に仕返しをするかもしれんぞ」

「それは、ないでしょう。もし十日以内にまた赤葉楓太郎があらわれて悪さをすれば、それがしの首を差し出しましょう」

「そこまで言うなら…・・・」

 子分どもの無惨な死に様を見て、唖然とする一方で楓太郎の復讐を怖れる家来は覇偉栖にうながされて、楓山を後にした。

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