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地獄の門  作者: 赤城康彦
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楓山に血風吹き荒ぶ 三

「な、な、そんな馬鹿な!」

 覇偉栖の脳天まで迫った太刀は、その顔から飛び出した拳によって叩き折られてしまい。

 それが信じられず、太刀が折られた瞬間に咄嗟に後ずさった。

「な、なんじゃあれは」

 驚く付き添いの家来たちに、子分ども。

 人の顔から腕が出ている。そんなことがあるのか。これは夢か幻か。いやしかし、そうではない。事実、太刀を叩き折ったではないか。

「まだまだ。お楽しみはこれからだ!」

 不気味な覇偉栖の声がこだまするや、腕はさらに顔から出て、肩が出てくる。それはもまた、漆黒の闇を思わせるほどに黒いものであった。

「お、鬼じゃ……」

 付き添いの家来たちは皆腰を抜かして尻餅をついてしまい。同じように、子分どもも腰を抜かし尻餅をついてしまっている。

 そんな中で楓太郎だけがどうにか立てている。

「鬼……」

 震える声で、そう言った。

 そう、漆黒の闇の影に覆われた覇偉栖の顔から出てくるのは、鬼であった。

 身の丈は人の倍あり。頭にはとがった角があり。口からはまるで獣のように牙がのぞき。全身が漆黒の闇を思わせる黒づくめの姿であった。

 そんな鬼が、人の顔から出たのである!

 そんなことはありえぬ。しかし、ありえるのだ。今実際に、目にしているではないか。

「やれい!」

 覇偉栖が鬼に命じれば、

「おおお――」

 と不気味な雄叫びをあげて駆け出し。その脚力も人間離れしてか、駆ける足が地を蹴るたびに地響きするほどである。

「う、うわああー」 

 鬼はまず、悲鳴をあげる子分どもに襲い掛かった。

 子分どもは尻餅をつき、満足に動けないでいた。そこへ容赦なく鬼は襲い。

 まずひとり、あわあわと震えている者に向かい足をぶうんうならせて蹴りをいれれば。

 一瞬にしてその顔面がスイカのように割れ。血と肉と頭骨と、脳漿が飛び散った。

 続けてとなりにいた者に向かい拳をうならせば、同じように顔面は叩き割られてしまった。

「ひ、ひええ」

 この惨状にさしもの風太郎も悲鳴をあげて、腰を抜かして尻餅をついてしまっていた。

 付き添いの家来たちも、容赦のない殺戮を繰り広げる鬼に怖じて。長年のかたきであった楓太郎一味がたおされてゆくのを、素直に喜べなかった。

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