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地獄の門  作者: 赤城康彦
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楓山に血風吹き荒ぶ 一

「それでは、お下知に従い赤葉楓太郎を成敗いたします」

「う、うむ……」

「あ、そうそう。お願いがあります」

「なんじゃ?」

「証人として幾人かのご家来衆も一緒に来ていただければありがたいのですが」

「証人か、なるほど。もっともなことじゃ」

 ということで、五名の家来とともに、覇偉栖は楓山に向かうことになった。

 覇偉栖はにやりと笑うと、城主の間を辞し。城を出て、家来たちとともに楓山に向かった。

 してやったり。覇偉栖は得意になっている。自ら術を見せびらかすのではなく。重時から見たいと言わせることで、自分を信用させることに成功したのだ。

 しかしこの男、何を企んでいるでのあろう。それはまだわからない。

 いまは、己の魔術をもって赤葉楓太郎を成敗するのだ。覇偉栖はまだ見ぬ赤葉楓太郎が己の魔術の前に狼狽し逃げ惑い、無惨に殺される様を想像して、口をゆがめて不敵に笑っていた。

 それを見る同行の家来は不気味さを感じて、口をつぐみ押し黙っている。殿から魔術師であると聞かされて、どのような魔術かをまだ知らぬ家来たちは、その雰囲気に圧されていた。

 城下から楓山へは一日の旅である。

 出発の翌日の昼過ぎに、一行は楓山にたどり着いた。

「さて、それでは赤葉楓太郎めを成敗にまいりますかな」

 家来たちにそう言うと、覇偉栖は先頭を歩いて楓山に入ってゆく。その足取りも軽く、上り坂を、すすす、とすべるように早足で上ってゆく。

 この男、魔術のみならずなんらかの体術も心得ているようであり、後ろを歩く家来たちは引き離されてゆく。が、無理に着いてゆく者もなかった。

 得体が知れないのである。そんな男には、あまり近づきたくないのも無理もなかろう。

 しばらく歩いていると、視線を感じた。覇偉栖はにやりと笑う。

 上り坂を軽快に上っているのをやめて立ち止まり。周囲を見渡すと、

「赤葉楓太郎よ!」

 と、大声で呼ばわった。

「聞こえているか、赤葉楓太郎。この佐久璃覇偉栖、うぬを成敗しにまいった。度胸があるなら、姿を見せよ!」

 少し離れたところにいる家来たちは、何を言っているんだ、と驚き、ひとかたまりになって太刀を抜き、恐々と周囲をうかがっている。 

 佐久璃覇偉栖も怖いが、その強さを実感している赤葉楓太郎はもっと怖いのである。

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