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地獄の門  作者: 赤城康彦
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謎の男・佐久璃覇偉栖 二

 佐久璃覇偉栖なる男は不敵な笑みを浮かべて、重時の前で跪く。

「佐久璃覇偉栖でございます」

「うむ……。赤葉楓太郎を仕留める術を持っておるとな」

「はい」

「それは、どのようなものじゃ」

「それは、詳しくは申し上げられませぬ。が、そうですな、我が秘術にて」

「秘術、じゃと」

「いかにも。それがし修行を積み、ひととおりの秘術を使いこなすことが出来まする」

「それは、左道さどうの術、魔術の類か」

「そう思ってもかまいませぬ」

 城主の間がざわめく。この男、魔術を心得ているという。にわかには信じられぬ話である。

 重時は疑いの目を覇偉栖に向ける。よもやからかいに来たのではあるまいか、と。

「お信じになりませぬか」

「当たり前じゃ」

 重時は憮然とする。赤葉楓太郎を仕留める術を持っているというから、どのような剛の者かと思えば。やせ細った山師風情の男ではないか。その容貌のみ見て信じられるわけもない。

 しかし覇偉栖はにやりと笑って、

「では、すこしばかり我が術をお見せいたしましょう」

 と言うと、おもむろに右手を差し出すと、「はっ」と小さな掛け声をかける。するとどうであろう、右手の上に炎が浮かんだではないか。

 次に左手を差し出せば、同じように炎が浮かんだ。

「よっくご覧なされ」

 念を込めたのか、覇偉栖の目が鋭くなると。右手の炎は竜に、左手の炎は鳳凰の姿をかたちどるではないか。これには、重時をはじめ家来たちは仰天し、覇偉栖と炎を交互にまじまじと見やった。

「お、おぬしまこと秘術を心得ておるのか」

「左様にございます」

 覇偉栖はにっこりと愛想よく笑うと、素早く両腕を交差させて、炎を消した。

「……」

 城主の間に沈黙が垂れ込めた。

 誰しも、このような術を見るのは初めてである。

「いかがでございますかな。これで、お信じになられましたか?」

「ううむ」

 重時はうめいた。驚いた。このような男がいようとは。しかし気がかりもあった。

「赤葉楓太郎を仕留めるのはよいとして。おぬし、何が目当てじゃ。やはり褒美がほしいのか」

「いいえ」

 覇偉栖は首を横に振った。

「それがし、殿の憂いを取り除かんと願ういち領民にすぎませぬ」

「というと?」

「褒美は無用。先ほども申したように、いち領民としてでございます」

「ふうむ」

 重時は、覇偉栖をまじまじと見やった。

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