表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の門  作者: 赤城康彦
27/31

人魔決戦 六

 もとより人外の魔物である。友情などというものなど存在しない。戦えなくなれば邪魔なだけであり、始末するのは阿修羅にとって当然のことであった。

 顔面を踏み潰された赤鬼はぴくりとも動かず、死んだ。

「ううむ。青鬼はおろか、赤鬼までも」

 覇偉栖はうめいた。あの、臆病風に吹かれて逃げ出した楓太郎が、なぜあんなにまで強くなったのだろうか。

「妙蓮坊め、楓太郎になんぞ術でもかけたか」

 楓太郎の原動力、それは、改心させてくれた妙蓮坊への感謝であり、罪を償うという意識であり、お品をはじめとする村人を守りたい、という気持ちであるなど、覇偉栖には想像の外のことであった。

「万人に仏あり」

 楓太郎は妙蓮坊のその言葉に打たれて、己の中の仏を現出させようと必死だった。

「楓太郎よ、心の固きによりて神仏の守りすなわち強しじゃ。心を強く持て!」

 阿修羅と対峙する楓太郎に妙蓮坊はそう叫んで。言われたとおり、楓太郎は強い心を持とうとさらに必死になったものの。阿修羅の一撃はそうとうこたえたようで、痛みはあとになってひどくなり、息も肩でしている。

 だが、双眸の光に帝釈天の独鈷杵の光は衰えることはなかった。

「お、鬼を二匹もたおしよったぞ……」

 村人たちはごくりと唾を飲み込んだ。まさか人が鬼に勝つなど思いもしなかったことである。そのつぶやきには、心なしか恐怖も入り交じっていた。

(帝釈天よ、我に力を!)

 楓太郎はそう強く念じた。この独鈷杵は帝釈天が修羅、阿修羅を斬った独鈷杵であるという。ならば、今目の前にいる阿修羅に敗れることがあろうか。

 青鬼に赤鬼をたおしたことによって、さらに手ごたえを感じ。心も強くなってゆく。すると、赤い光はその輝きを増した。

「?!」

 独鈷杵がぶるぶると震えだす。何事だ、と楓太郎が不思議がる間もない。なんということであろう、独鈷杵は楓太郎の手を放れて。まるで意志ある者のように、自在に宙を舞い、阿修羅に迫るではないか。

「な、なんだ?!」

 これには楓太郎も驚きを禁じえない。

 もっと驚いたのは阿修羅に黒鬼に、佐久璃覇偉栖であり。お品に妙蓮坊である。

「独鈷杵が飛んでるわ……」

「うむ。楓太郎の心に帝釈天が呼応したのであろうか。よもやかようなことがあるなぞ、わしも知らなんだぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ