人魔決戦 五
(どうする)
阿修羅と赤鬼の攻めをかわしながら、楓太郎は考えた。両方一緒に相手にしてもだめだ。どちらか一方に集中せねば、と考えた。
そうと決まれば狙いを赤鬼にさだめて、迫り来る八つの拳をさけながら、しきりに赤い腕の動きを注視する。
その時、脳裏に閃くもの。
赤鬼の拳が迫るが、楓太郎は避けようとせず。真正面に立って独鈷杵を突き出せば。
まるで独鈷杵の赤い光に誘われるように、吸い込まれるように、赤鬼の拳は迫った。それを見るとともに、脚を浮かせて跳躍する。
赤鬼の拳は独鈷杵の赤い光が深々と突き刺さる。それと同時に、阿修羅の拳が迫り。楓太郎の脇にぶつけられ。吹っ飛ばされて地に叩きつけられてしまった。しかし先に足を浮かせて跳躍していたので、打撃の痛みはそれほどでもない。と言いたかったが、口から血が溢れて、ごぶ、と吐き出される。
赤鬼は拳を刺された痛みでややひるんだが、痛みが怒りに変わって、起き上がろうとする楓太郎へ蹴りを食らわそうとする。
「う、く」
うめきながら、咄嗟に蹴りを交わしながら立ち上がる。独鈷杵はしっかりと手に握っている。赤鬼の拳に赤い光が突き刺さったとともに、光を鎮めたので阿修羅の拳を食らっても手放さずにすんだのだ。
再び赤い光を出し。迫り来る拳に脚を交わす。
しかし赤鬼の動きはやや遅くなっている。拳を貫かれた痛みのためかもしれぬ。
「でかい奴めが!」
楓太郎は一喝し、阿修羅を無視して赤鬼に迫った。赤鬼も受けて立つと迫った。拳が迫る。それをしっかと見つめて。咄嗟に頭を下げて身をかがめた。さすれば、赤鬼の股間が迫る。さらに身をかがめて、腕を少し上げて独鈷杵を掲げれば。
楓太郎は赤鬼の股をくぐり、それとともに独鈷杵の赤い光は赤鬼の股下から臍までを切り裂いたではないか。
これには赤鬼もたまらず、
「ぐおお――」
と叫んで、倒れてのたうちまわり。のたうちまわれば、切り裂かれた部分から血が、腸が溢れ出る。
咄嗟にのたうちまわる鬼の首元までゆき、首を叩き斬ろうとすれば。阿修羅の脚が迫り、「ちっ」と舌打ちしながらさければ。
阿修羅の脚は楓太郎ではなく、赤鬼の顔面を踏み潰してしまったではないか。
「味方を、なんて奴だ」




