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地獄の門  作者: 赤城康彦
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人魔決戦 三

「佐久璃覇偉栖!」

 その声は阿修羅に鬼どもの雄叫びに掻き消されて、肩の男には届かなかった。それより目は楓太郎に向けられた。

「おおお――」

 鬼どもに勝るとも劣らぬ雄叫びを上げて、まず青鬼に向かって帝釈天の独鈷杵を振りかざした。

 青鬼は己に向かってくる者に気付き、拳を唸らせて楓太郎を粉砕しようとするが――

 独鈷杵の赤い光はひらめき、鬼の拳を、肘まで割った。

「がああ――」

 青鬼は苦痛の悲鳴をあげて、肘まで割られた腕を押さえた。次の瞬間、赤い光は青鬼の腹に突き刺さり。そのまま丹田たんでんへと斬り下げられてゆけば。腹からはらわた飛び出て、青鬼は悲鳴を上げてどおっと倒れてのたうち回り。

 赤い光は腹から抜かれて、楓太郎とともに首まで駆けて、

「おおっ!」

 楓太郎会心の一撃。赤い光は青鬼の首めがけて振り下ろされて、血しぶきを上げて胴と切り離されてしまった。

 まさに一瞬の出来事であった。

「すごい……」

 お品に他の村人たちは楓太郎が青鬼をたおすのを見て、呆然とする。ここまで強かったのか、と。

「何ッ!」

 これに覇偉栖は驚きを隠せず、肩に乗る黒鬼とともに青鬼の方へと振り返った。

 見れば赤い光を放つ独鈷杵を持つ男が青鬼の首を斬っているではないか。

「馬鹿な」

 覇偉栖はにがにがしくうめいた。

 鬼が人に敗れるなど、ありえぬことである。が、赤い光を放つ独鈷杵を目にして、合点がいったようである。

「あれは、帝釈天の独鈷杵!」

 ということは、

「妙蓮坊!」

 ふと、視界に見覚えのある僧侶が入った。

「妙蓮坊……」

 覇偉栖はうめく。

 止まれ、と右腕を挙げて、阿修羅と黒鬼、赤鬼に命じ。じっと妙蓮坊を見据えた。

「覇偉栖よ、久しいの」

「まこと、お久しぶりにございますな。お師匠さま」

 その言葉に楓太郎とお品は驚きを禁じえない。妙蓮坊が覇偉栖の師匠であったなど。

 妙蓮坊は眉をしかめて、阿修羅に鬼ども、覇偉栖を見据えていた。

「ぬしゃ、地獄の門を体得したのか」

「左様。帝釈天の独鈷杵をお託しになられぬけちな師匠に破門されてより、それがし苦難の末にこの術を体得した次第」

「おぬしの邪悪な心はそこまで肥大しておったのか」

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