表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の門  作者: 赤城康彦
13/31

改心 二

 お品と妙蓮坊は楓太郎を両側から支えて歩く。

 歩けば集落に入り、人々は怪訝な顔をして三人を見送った。

「妙蓮坊さま、皆に教えなくていいの?」

「いま慌てて教えれば恐慌を来たす。まずは寺で彼の話を聞こう」

「そうですね」

 楓太郎は支えられながら、黙って、己のこれからを考えた。偽名を使えば、助かるかもしれない。などと考えていたとき。

「ぬしゃ、赤葉楓太郎じゃろう」

 と、妙蓮坊は小声でぽそっと言った。言われて楓太郎はどきりと、妙蓮坊を見やった。

「赤葉楓太郎?」

「しっ」

 お品が不思議そうにするのを見て、妙蓮坊は黙るようにうながした。

「俺を知っているのか?」

「まあな。じゃが話は寺でじゃ。それまで黙っておれ」

 人々の怪訝な眼差しを受けながら、三人は寺に入った。

 お堂に入れば、中央に南無妙法蓮華経と書かれた大曼荼羅が掛けられている厨子ずしがあった。

 その大曼荼羅の入った厨子の前に檀があり、供養の品がいくらか供えられて。それ以外にはなにもなく、簡素な小寺であった。

「あ、あたし水を汲んできます」

「うむ」

 楓太郎をお堂の真ん中に座らせると、お品は立ち上がって井戸に向かった。妙蓮坊も座り楓太郎と向き合っている。

「このような成り行きで赤葉楓太郎に会うとは思わなんだぞ」

「……」

 楓太郎はしばし黙ったあと、

「俺をどうする?」

 と言った。妙蓮坊はふっと笑い、

「そうさな」

 と腕を組んで思案する仕草を見せる。

「本当にぬしゃ悪人面じゃのう」

「からかうな」

「いやすまぬ。そうじゃのう、おぬしをどうしようかのう」

「……」

 そうしているうちにお品が水を入れたお碗を持ってきて、ふたりの前に置く。

 楓太郎は碗を手にして、水を一気に飲んで、一息つく。

「落ち着いたかの?」

 妙蓮坊は笑顔で言う。相手が赤葉楓太郎と知ったうえでだ。楓太郎もこんな対応をされたことがなくて、少し戸惑っているようだ。

「ねえ、妙蓮坊さま。この人、赤葉楓太郎っていうの? どうして知っているの?」

「うむ、わしが各地を巡業しておったころにな、番場重時なる大名の領にて、こやつの人相書きを見たのよ」

「え、人相書き?」

「左様。こやつはの、なうての山賊じゃて」

 妙蓮坊はかっかっかと笑いながら楓太郎を指差した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ