4月。クラスメイトの妄想のこと。
緑川視点です。
「なぁ緑川、これなんて読むんだ?」
「……はぅ。こ、これは……」
そうやって私たちはちょこちょこと蔵書点検をしていました。
といっても本の題名は基本、あいうえお順に並んでいるため、そんなに苦労はしませんでした。やはり、借りる人が極端に少ないのでしょうか。妙に埃がかぶっていますし……。
今度暇があったら図書館の掃除でもしようかと思います。
もちろん、その時には本屋君を誘って、ですが。
というか、本屋君と一緒の委員会になれて、本当によかったと思います。
一緒に瀬戸君もついてきましたけど……本屋君の友達ですし、仕方ありませんよね。
って、冷静になって考えている場合ではありませんでした。
本屋君はホントに本を読まないらしく、漢字などがさっぱり分からないそうです……本屋君はそれを一言も喋りませんでしたが、その度にこちらに聞いてきますので、何となく分かりました。本屋君はホントに本を読まないなぁ、と。
で、でも……こ、今回私に渡された本は……こ、これって……!
「……あ、あの……こ、これは『激烈的春画集』……って読む……と、お、思います……」
し、し、春画じゃないですか!
私はそれを見て、頭から軽く湯気が出そうになりました。
表紙こそは文字だけですが、そ、その……男の人と女の人のあられもない姿が所狭しと並んだ画集がだくさんあるものです。
なんでこんな物が……と言うよりここには「本」であれば何でもそろってるんですか!? 時々私の理解の範疇を超えた物が出てくるときがありますよ!?
先程だって料理の本が出てきたと思ったら訳が分からない図形がたくさん書いてあるノートが出てくるし……ホントにここは学校の図書室なんですか!?
「なるほど。『激烈的春画集』かぁ。漢字で書かれてるから、中国の本か? なんか訳の分からん漢字がたくさんあるし……」
は、はやく……その本をこちらに渡してもらわないと……!
も、本屋君が、へ、へ、変態と思われてしまいます!
もしも、もしも本屋君がそんな物を他の人に見られていたら……。
『わー本屋、何持ってるんだ!』
『え? いやこれは図書館の本で』
『本屋はそんなど変態だったんだなー! よーし学校のみんなに言いふらすぞー!』
というような事になりかねません!
「ち、ちなみにこれ……に、日本の物です……」
あぁっ! こんな時に私は何で変なフォローを!?
自分自身で自己嫌悪を起こしながらも、本屋君が持っている本を何とかして取らないと……。
「……も、本屋君、そ、そそそその本は私があ、預かっておきますから、本屋君は、その、か、確認作業を行っていてください」
自分でも分かるくらいに動揺して、私は本屋君に向かって手を伸ばしました。
「え? でもこれこの場所にあったぞ?」
「……ここっ、この本棚は『さ』段です! 本来ならば『け』段に入れておかなければいけないものです!」
そうか、と本屋君は納得したようです。
よし。あとは私が元の本棚に戻しておけば……。
「んじゃぁ、これ、てきとーにどっかに入れとくから」
何でそうなるんですかぁ――――――――!?
私が仰天している最中にも、本屋君は本を持ったまま歩き出そうとしていました。
もちろん私は、
「……だ、駄目です……よ? ち、ちゃんと……その、も、元の場所じゃないと……」
こんな時に何で正論を言うんですか私~!
で、でもふ、普段触る機会がない、も、本屋君のに、ににににににに二の腕をつかめているわけで。
「かたっくるしいなぁ……いーじゃん。別にわからねぇんだし」
「……だ、だめです……ち、ちゃんと、その、も、元の場所に……も、戻しておかないと……」
段々と後ろの方にさしかかるにつれて声が出なくなってきました。
恥ずかしさと、うれしさが私の中で混ぜ合わさって今自分が何をしているのかさえ分からなくなってきてしまいました。
「お、おい? 緑川? どうした? 顔が赤いぞ? 保健室言った方が――」
ほ、ほ、保健室!?
『ほ、保健室で何をするんですか、本屋君』
『安心しろ、緑川。少し俺たちは大人の階段を上るんだ』
『ああっ……本屋君、駄目です、せめてっ、せめてこういう事は両者の合意の元で……』
『かまうこたぁない。なぁに。エロゲーでこんな事は日常茶飯事、だろ?』
「……そしてそのまま本屋君と二人でラヴィンニューな世界へ行って二人でキャッキャウフフいちゃいちゃラブラブな出来事があって既成事実でデュフフフ……」
「み、緑川? 大丈夫か? やっぱり保健室に」
「ほ、保健室!? い、いや、でも……その……や、やっぱりしつれいしまふ~~~っ!!」
「あ、お、おい! 緑川!?」
本屋君の声が聞こえてきましたが、もはやそのとき、私の耳には入っていなかったんだと思います。
だってその時には頭の中がシアワセ色でいっぱいでしたので。




