4月。家での食中毒未遂の事。
なんかこう・・・銀色の煙が出ていたような
「隣に引っ越してきた木之絵馬だ。おすそわけで肉じゃがを作ってきたぞ。食え」
「あ、どうもご丁寧に」
木乃絵馬が家にやってきた。
いやまあ、さすがに和服でやってくるなんて思わなかったけれど。
まずは居間で普通におすそわけの肉じゃがをもらっていた。きちんと風呂敷に鍋ごと包んである。暖かい。
だけども隣の魔人はピリピリとした雰囲気を醸し出していた。
「……何しにきやがったですか、この魔術師。とうとうマスターを篭絡しに来ましたか」
「そんなつもりではない。第一、お前と契約してしまった以上、私にはどうすることもできないし、同行しようとするつもりはない」
木之絵馬が言うと魔人は「ふん」と不機嫌そうにそっぽを向いた。ひょっとしなくてもこの二人、仲悪いな。
「さて本屋。今一度聞くが、瓢のところにくる気はないか?」
「くどいな。俺はどこかの魔術団体とかに所属するつもりはない。怪しげなところに入ったら入ったで面倒そうだしな」
「それについては同感だ。わけのわからないところに入ってそのままいいように弄ばれてしまっては元も子もない」
「……別にお前たちをどうこうしようと言っているわけではない」
「分かってるさ。でもな」
それでも断りたい。なにせ任されることは図書館から魔導書を探すことがおそらく前提になる。だから頼まれたくないのだ。
なぜって本嫌いだから。読みたくないから。手に取りたくないから。
「……実は今お前が食べているその肉じゃが、毒入りだ」
「ながっ!?」
箸を落とす。いそいで吐こうとするが、なかなか吐けない。
「吐いたところで無駄だ。既に毒は体中に回っているだろうからな」
「ぐ、ぐぅ……」
勝ち誇ったようにこちらを見る木乃絵馬。ニヤニヤしながらこちらの様子をうかがっている。
「……ど、どうすれば……毒は……?」
「それはもう、お前が分かっているだろう?」
やっぱりそういうことかコノヤロォ……。
「分かった……入る……瓢さんところに……入る……!」
「賢い選択をありがとう、本屋」
サディスティックに微笑む木乃絵馬。
「ああ、そうだ。先程の肉じゃが。アレに毒が仕込まれていると言ったが……」
その後にぽつりと木乃絵馬が言った。
「アレは嘘だ」
「んだとテメェ!?」
「……まぁ、最初からそんな事じゃないかと思っていたけどね」
「知ってるんなら言えよこの紙束!」
「いや、これは展開的に何も言わない方がおもしろさにスパイスをつけるのではないかと思ってね、いやぁ、黙っていて正解だったあだだだだだだだだ!!」
「死ねっ! そのまま引きちぎられて跡形もなく散れッ!!」
「ままま、マスター! やめてください、本が、本がちぎれてしまいます!」
「離せぇ! 今回という今回は我慢がならん! 一発ちぎってやるゥゥゥゥ!」
※――――
なにやら賑やかになってきた本屋の家を後にして私はすぐ隣の家に入った。というか、私の家なのだが。
中には布団とガスボンベコンロ、一通りのキッチン用品が折りたたみ机に乱雑に置かれていた。
私はとりあえずその中から携帯電話をつかんで瓢に連絡した。
「……私だ」
『おお、どうでしたか?』
「なんとか勧誘に成功したよ。これでひとまずは安心だろう」
『さすが木乃絵馬君です。彼を他の魔術師やその他の方々の手に渡すわけにはいかないですからね』
「…………」
『まぁ、いいでしょう。とかくこれで保護はできました。後は何も起こらないことを祈るだけですね』
「……そんなわけにはいかないだろう。アレを狙ってやってくるのはごまんといるんだぞ。何も起こらないのが不思議だ」
『まぁまぁ。言葉のアヤというモノです。……では。そろそろ眠る時間でしょう? お休みなさい』
「ああ」
そう言って電話を切った。
そのまま布団に倒れ込むようにして眠った。
今回の没ネタ。
「さて本屋。今一度聞くが、瓢のところにくる気はないか?」
「くどいな。俺はどこかの魔術団体とかに所属するつもりはない。怪しげなところに入ったら入ったで面倒そうだしな」
「それについては同感だ。わけのわからないところに入ってそのままいいように弄ばれてしまっては元も子もない」
「今ならなんと家庭用洗剤付き」
「え?」
「金銀パールプレゼントもやっている」
「や、あの、いいッス。帰ってください」
「当社のご予定ではこの後5時から会社の説明会が……」
「帰れ」
――Osiuri kowaiyone!――




