第2話 シュオーマ王国入国・後編
「あ〜……面倒臭さいな〜もう」
馬車の先頭。
そこには、長槍を構えたグロースと、斧を構えた強盗が数人。
「ヘッヘッヘ、大人しく命を差し出しな!」
強盗の一人がグロースに接近。
「……嫌だな。俺ぁ痛いのは嫌いなんで」
ヒュンッ!!
グロースは槍を構え、強盗に対し突きを放つ!!
「うおっ!?」
突然の攻撃に、強盗は尻もち。
「あ……外したか。あ〜槍重い」
と言いつつ、グロースは突きを連発。
「うわっ、ちょっ、不意打ち止めっ!!」
強盗は尻を地面に付けながら後退。
「……なかなか当たらねぇな」
ヒュンッヒュンッ!!
槍は強盗のすれすれを通り、地面にブスリ。
「うぬぬぅ……!! 野郎共、全員で掛かれ!!」
『オー!!!』
強盗はグロースの槍を避けながら、他の強盗へ命令。
「1対多数か……じゃ、もう手加減はしねぇ」
その時、グロースの目つきが変わった。
「野郎共、掛かれ!!」
『オー!!!』
強盗は斧を振り上げ、
そして……
「……ふぅ」
「なっ……!!」
次の瞬間、命令を出した強盗以外、ここにいた全ての強盗が真っ赤に染まっていた。
「弱いのにでしゃばるな。死ぬぞ?」
グロース=ウィリア、22歳。
彼は、その槍先を最後の強盗に向けた。
「な……ななな……」
強盗は完全に戦意を失っていた。
その顔は恐怖に引き攣り、体は震えている。
「……俺達はな、この国を変えるんだ」
グロースは槍先を強盗の顔すれすれに突き付ける。
「お前みたいな野蛮な野郎は、邪魔なんだ」
そして………
グザッ……
「ぐぁ……ぁ………」
槍は強盗の頭部を貫通した。
槍先は、真っ赤に染まった。
「ぐあっ……」
「へっ、弱い奴ばかりだな」
馬車の中、そこもまた地獄絵図と化していた。
「レルラ、リアーナ、無事か?」
返り血を浴び、真っ赤な鎧がさらに真っ赤になったボンガ。
その鎚にも血が。
「ふぅ〜、こりゃ気が滅入るな……」
レルラもまた、大量の返り血を浴び、服や剣は赤く染まっている。
「……もう最悪。お風呂入りたい」
リアーナは逆に、あまり返り血を浴びていない。
「んだよ、リアーナはほとんど血、浴びてねぇじゃんか」
「……私の武器は弓だから、返り血は浴びないの。それより、血生臭い」
リアーナは鋭い目つきでレルラを睨み付ける。
「なっ……し、仕方なねぇだろ!! 俺は接近主体の剣士なんだから!!」
レルラ反論。
「……臭いのは嫌。あっち行って」
リアーナ=フェザナン、17歳。
性格はキツめ。
「テメェ……」
レルラの怒りを完全無視し、リアーナは弓の手入れを始める。
「全く……」
レルラは込み上げる怒りを何とか沈め、馬車の外に山積みになっている物に視線を向ける。
「…………」
無数の赤で彩られたそれは、死体の山―――
強盗達の屍の山だった。
「…………」
辺りにハエが飛び交い始めた。
そして、異臭も漂い始める。
「……おいジジィ」
「ジジィじゃねぇ。ボンガだ」
ボンガは鎧をから拭き中。
「早く……先へ進もう。シュオーマの首都へ」
レルラの顔は、悲痛なものだった。