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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep161:合格祝いの焼き菓子シュクセ

 オッサンが日本にいる間に、騎士採用試験は終わった。

 王族につく護衛騎士に任命されたのはウォルクリス一人で、他の受験者は近衛騎士団の団員になるか不合格かのどちらからしい。

 ウォルクリス以外の受験者は現役の騎士なので、近衛騎士には不採用でも、ガリア王国騎士として国内のどこかに配属される。

 不合格者たちが希望する配属先は、辺境の地リシュ領が圧倒的に多かった。


「俺、リシュ騎士団配属を希望したよ」

「リシュ領といえば、美味いものの宝庫だな」

「美人の料理人さんがいたよな」

「そうそう。ハーフエルフの美女で、メシめちゃくちゃ美味いんだよ」

「ベルさんか? 彼女は領主様の専属になったらしいぞ」

「何っ?!」


 合格発表と配属先が張り出された近衛騎士団の建物前で、受験生たちがリシュ領の話題で盛り上がる。

 だがその情報は去年の春前までだった。

 インターネットやSNSが無いこの世界では、遠方の情報の伝達は遅れがちだ。

 今年の春からは、アウラウダがリシュ騎士団の料理人になっている。

 そこまで知る者は、王都の騎士たちにはいないのかもしれない。


(来年の今頃は、アウラウダの料理の話題で盛り上がってるかもしれないな)


 僕はコックコート姿のアウラウダを思い浮かべた。

 アウラウダの調理レベルは高い。

 スープパスタやうどんを作れる数少ない料理人でもある。

 きっと来年は、アウラウダが作る料理を楽しみにリシュ領へ行く騎士がいるかもしれない。



 ◇◆◇◆◇



 転移の魔道具を持つ僕にとって、リシュ領は気軽に行き来できる場所だ。

 本棚を両手で押し開けて隠し部屋から出ると、見慣れた背中があった。


「合格したようだな」

「はい」

「ベルとアウラにも報告してあげなさい」

「行ってきます」


 領主様は、僕の顔を見ただけで合格だと分かったみたいだ。

 それに、アウラウダを愛称で呼ぶようになっている。

 穏やかで優しさが感じられる声は、一年前とはもはや別人のようだった。



「ベルさん、アウラ、合格したよ!」

「ウォル、おめでとう!」

「これ、姫様と二人で食べてくれ」


 リシュ城の調理場にいたベルさんとアウラウダは、僕が報せた結果を祝ってくれた。

 アウラウダが蔓草を編んだ籠に入れて差し出すのは、粉末状にしたナッツとメレンゲと砂糖を合わせて焼き上げたシュクセという菓子だ。

 低温でじっくり焼き上げられていて、表面はカリッと中はサクサク、ナッツの風味が香ばしい。

 シュクセにはガリア王国の言葉で「成功」という意味があり、合格祝いや出世祝いに贈られる菓子だった。


「これを用意してたってことは、合格したの知ってた?」

「ううん、今初めて聞いたわ」

「ウォルなら絶対合格するって思ってたから焼いといたんだよ」


 二人がウォルクリスの合格を信じてくれたことは凄く嬉しい。

 一方、これで落ちてたら気まずかったろうなぁとコッソリ思うオッサンであった。

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