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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep120:エルピージ狩り

 黒いスライム「エルピージ」は、ぷるんとしたゼリー状の丸い身体をもつ下級魔物だ。

 討伐難易度は低く、かけだし冒険者が仕事始めに狩るレベルとも言われている。


「あんまりいませんわね」


 指先から放った氷の針でスライムを串刺しにしながら、ヴィオレット様が物足りない顔で言う。

 辺りに点々と落ちているさまざまな色のスライムは、全部彼女が一人で倒したものだ。


「今の時期は、薪や燃料をよく使いますからね。冒険者だけでなく、農民もエルピージ狩りに来るので数が少ないのです」


 ドロップ品を拾い集めながら、ヴィオレット様専属護衛騎士のエフォールさんが言う。

 護衛なんだが、お転婆姫のヴィオレット様は騎士たちが動くよりも早くスライムを倒してしまうので、ドロップ品の回収以外に出番が無いままだ。


 この世界の暖房器具は、火属性の魔石を使った魔道具は高級品で、庶民の多くはプワルと呼ばれる石油ストーブに似た物を使っている。

 プワルは、エルピージから採れる可燃性の液体を燃料とする。

 そのため、暖房が必要な冬場は燃料の需要が高まり、多くのエルピージが狩られて数が減るのだった。


「ヴィオレット様、群れがいましたよ」


 もう一人の専属騎士アバンドンさんはといえば、枝分かれした通路を偵察に行って、スライムを引き連れて帰ってきた。

 歩いてくる彼の後ろを、色とりどりのスライムがポヨンポヨンと跳ねながらついてくる。

 スライムたちはアバンドンさんに体当たりしているが、彼は涼しい顔で歩いている。

 怪我はしないが、バレーボールが当たるくらいの衝撃がある筈なんだけど。

 アバンドンさんはよろめきもせず平然としていて、ぶつかったスライムが跳ね返されていた。


「ご苦労様」


 ヴィオレット様はスライムの群れに片手を向けた。

 五指の先から氷の針が現れて、スライムめがけて飛ぶ。

 氷の針は機関銃の弾丸のように次々と現れては飛び、スライムたちを串刺しにする。

 スライムは串刺しにされた途端に凍り付き、地面に転がる。

 あっという間に、全てのスライムが動かなくなった。

 近くにいるアバンドンさんに氷の針が当たることはなく、氷の針がスライムだけを攻撃する命中率が凄い。


「リュンヌ様、こちらをどうぞ」


 一方、別の通路から帰ってきたリュンヌ様専属騎士のイムパスさんも、同じようにスライムを連れて帰ってきた。

 三匹のスライムが、ポヨンポヨンと体当たりしている。

 しかしイムパスさんもアバンドンさんと同じで、びくともせずに跳ね返していた。


「ありがとう」


 リュンヌ様は右手を僕の左腕に絡めたまま、空いている左手の人差し指をスライムたちに向ける。

 白い光線が指先から飛び出して、器用に角度を変えながらスライムを貫く。

 貫かれたスライムは、感電したように二~三秒ほど痙攣した後、動かなくなる。

 三匹のスライムは、秒で倒されてしまった。

 こちらもスライムだけを貫き、イムパスさんには掠りもしない。


 洞窟での狩りは、広場のような場所で姫様たちが待機して、四人の騎士たちが釣ってきたスライムを魔法で倒すという簡単な作業だった。

 僕はといえば、騎士たちが拾い集めるドロップ品を受け取り、マジックバッグに入れるだけだ。


(陛下は姫様たちが無双すると分かってたから、あっさり許可したんだな)


 二人の美少女が笑顔でスライムを殲滅する光景を見るだけの僕は、苦笑するしかなかった。

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