ep107:僕と【僕】のこれから
校舎の外に出ると、二人の女神が僕を待っていた。
全てを知るラ・テール様は、目を潤ませながら微笑む。
事情を聞いたイリキーヤ様は、腕組みをしながらも表情を緩めていた。
「ラ・テールの日本行きが、食べ物目当てだけじゃないのは理解したわ」
腕組みをしたまま、イリキーヤ様は言う。
過去に繰り返された異世界転移は、特に問題は無いので気にしないことにするらしい。
「日本の建物を神の庭に転移していたなんて仰天ものだけど、今更慌ててもしょうがないし。ラ・テールがこうして無事に帰ってきたのだから、もういいわ」
「イリキーヤが納得してくれて良かった」
軽く溜息をつくイリキーヤ様に、ラ・テール様が微笑む。
異世界に僕の料理を広めてラ・テール様を呼び戻す計画は、意外な方向で解決となった。
「じゃあ、これで僕とウォルクリスの入れ替わり生活は終わりですか?」
「いえ、もうちょっと料理を広めてもらうわ」
僕の入れ替わり生活は、まだ続くらしい。
ラ・テール様が戻ってきた理由は、料理が広まったからではなかったけれど。
火食の神であるイリキーヤ様にとって、新たな料理が広まることは好ましいことだった。
「なら、ショウをガリア王国に転移……」
「だめよ、そんなことしたら『勇者が現れた』って大騒ぎになるから!」
呑気に言いかけるラ・テール様に、イリキーヤ様のツッコミが入る。
どうやら、異世界転移者は能力の有無に関係なく勇者扱いされるらしい。
「何のために私が入れ替わりの神力を使ったと思ってるの。目立たないように無難に済ませたいからよ」
イリキーヤ様は、ことを穏便に済ませたい派のようだ。
それについては、無難に暮らしたいオッサンも同感である。
「なら、引き続き入れ替わりながら色々な料理を広めたらよいですか?」
「ええ。そうしてもらえると嬉しいわ。御褒美はちゃんと用意しておくから、よろしくね」
「分かりました」
こうして、僕は引き続き入れ替わり生活を続けることになった。
今までと違うのは、ラ・テール様の【庭】へも望めば行けるようになったこと。
豊穣の神であるラ・テール様の庭園には、様々な種類の美味しそうな果実や野菜や穀類が植えられている。
「ここへは、ウォルクリスになってるときも来られるから。いつでも来て」
記憶が戻った僕にとって、ラ・テール様の庭は遊び慣れた公園みたいな場所だ。
様々な植物を見るのが大好きな子供だった僕は、そこにあるもののほとんどを覚えている。
「使いたい食材があるとき、貰いに来てもいいですか?」
「いいわよ。私にも何か作って」
神の庭の植物がどんな効果をもつかは、幼少期の記憶にある。
今後は、新しい料理を広めたら、ラ・テール様にもお届けしよう。




