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深森の魔女と月狼

作者: SylvaNocturne
掲載日:2026/03/08

初投稿です。よろしくお願いします!

「……また人間が森に入ったわね」


銀の髪を揺らしながら、魔女シルヴァは静かに呟いた。


森の奥。

蔦に覆われた古い家の前で、彼女はじっと暗い木々の向こうを見つめている。


その足元で、大きな狼がゆっくりと顔を上げた。


月のように淡く光る瞳。


『三人だ。武器を持っている』


低く落ち着いた声が、シルヴァの頭の中に響く。


ルナ。

狼の姿をした、森の精霊であり彼女の使い魔だ。


「そう」


シルヴァの声には感情がほとんどない。


「なら、帰ってもらいましょう」


森に入る人間は嫌いだ。

いや――正しく言えば、もう関わりたくない。


かつて人間と共に生きていた頃、彼らは魔女である彼女を恐れ、遠ざけ、やがて刃を向けた。


どれだけ助けても、返ってくるのは疑いと恐怖だけ。


だからシルヴァは森に住むことを選んだ。


静かに、誰とも関わらずに生きるために。


だが――


「最近、人間が多いわね」


森の奥を見つめながら、シルヴァは小さく息をつく。


王国で何かが起きているのかもしれない。


その時だった。


遠くの木々の向こうで、かすかに剣の光が揺れた。


森の奥で、金属のぶつかる音がかすかに響いた。


人間たちだ。


シルヴァは静かに目を細める。


「……少し脅かせば帰るでしょう」


彼女が手を軽く上げた瞬間、森がざわめいた。


地面から細い根がゆっくりと伸びる。

木々の枝が揺れ、進もうとする騎士たちの前に立ちはだかった。


「な、なんだこれは!」


「森が……動いている!?」


恐怖に満ちた声が森に響く。


騎士たちは慌てて後退した。

やがて、その足音はどんどん遠ざかっていく。


「……終わりね」


シルヴァが小さく呟いた、その時だった。


『……一人いる』


ルナの声が頭の中に響く。


シルヴァはわずかに眉を動かした。


「逃げなかったの?」


『いや。違う』


狼の金色の瞳が森の奥を見つめる。


『……こっちに来る』


静かな足音が近づいてきた。


やがて木々の影から、一人の青年が姿を現す。


黒い髪。

騎士の装い。

そして腰には剣。


シルヴァとルナを見つめながら、青年は足を止めた。


「……あなたが」


わずかに息を整えながら言う。


「森の魔女、シルヴァか」


ルナが低く唸った。


シルヴァはただ静かに青年を見返す。


「そうよ」


その声は驚くほど冷たい。


「それで? 命が惜しくないの?」


青年は少しだけ苦く笑った。


「俺は王国の命令で来ただけだ」


月明かりの下で、彼は真っ直ぐシルヴァを見る。


「王子ルシアン。……あなたを討伐するために来た」






最後まで読んで下さってありがとうございます。

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