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史上最悪の出会い

北条蓮太郎は、コンビニのバイトを終えて自転車を漕ぎながら、ため息を漏らした。

高校2年の夏休み前。親の借金で家計が火の車、奨学金だけでは足りず、急遽始めた家庭教師のバイト。

今日の生徒は六つ子の姉妹。名前を聞いただけで頭が痛くなった。

「全員IQ140超えの天才だって? 俺なんか平均以上で満足してるのに……」指定された高級住宅街の門前でインターホンを押す。

ドアが開くと、明るい金髪のショートカット少女が顔を出した。

制服のネクタイを緩めに結び、袖をまくったカジュアルな着こなし。

陽菜、長女だ。「遅いよ、家庭教師さん! 待ってたんだから♡」後ろから他の五人が続々と現れる。

全員同じ顔立ちなのに、髪色と雰囲気が完全に別物。

凛は深い紫のロングヘアをゆるく巻き、耳に小さなシルバーピアス。

澪は深い青のボブヘアに大きめのヘッドホンを首にかけ、指先でスマホを弄っている。

葵はエメラルドグリーンの高めポニーテールにリストバンドを巻き、動きやすそうなスカート丈。

紬は真っ赤なストレートロングを後ろで一本にまとめ、メガネのフレームが細いシルバー。

最後に、シルバーホワイトのゆるふわセミロングの茉白。彼女だけ、制服の上に薄いカーディガンを羽織り、静かに立っていた。陽菜が手を叩いて笑う。「さあ、入って入って! 私たち、親に『家庭教師つけろ』ってうるさくてさ。

でも、正直言うと……蓮太郎くんより賢いって証明できたら、即クビでいいよね?」凛が髪を指で巻きながら冷たく。「私たち、大学受験で全国トップ狙ってるの。

あなたに教わる価値、あるのかしら?」澪は画面を見たままぼそり。「……計算上、効率悪そう」葵が腕を組んでニヤリ。「体育の補習なら任せて! でも勉強は……無理かも?」紬がメガネをクイッと上げて。「教科書の内容、全部暗記済みですけど?」茉白だけは、少し離れて視線を落とし、そっと袖を握っていた。蓮太郎は思わず後ずさる。

(最悪の出会いだ……)リビングに通され、六人が円になって座る。

陽菜がテーブルに教科書をドサッと置く。「じゃあ、早速証明タイム!

今から1時間で、数学の難問10問、全科目混ぜて解いてみて。

私たちより高得点出せたら、認めてあげるよ♡」蓮太郎は苦笑いしながら鞄を開く。「……わかった。やってみる」勝負が始まる。

六人はそれぞれ得意分野で圧倒的に解き進める。

陽菜は国語の長文を笑いながら瞬殺。

凛は美術史の問題を優雅に。

澪はプログラミングの応用を指先で叩くように。

葵は物理の計算を体を揺らしながら。

紬は歴史の年表を完璧に。

茉白は音楽理論の問題を、机の上で指を軽く動かしながら解く。蓮太郎は汗だくで食らいつく。

最後の問題を終えた瞬間、時間切れ。結果……蓮太郎の得点は、六人の平均をわずかに下回った。陽菜が手を叩いて明るく。「やっぱり! じゃあ、もう帰っていいよ〜。バイバイ!」蓮太郎が立ち上がると、茉白が静かに前に出る。「……もう少し、いてくれない?」他の五人が驚いた顔をする中、茉白は小さなメモを蓮太郎の手に滑り込ませる。

そこには、古い写真が印刷されていた。

中学の修学旅行、寺の境内。

迷子になった少年に手を差し伸べる、白髪の少女。蓮太郎の息が止まる。(……あの時の……?)茉白は指を唇に当て、首を小さく振る。

「まだ、言わないで」陽菜が不思議そうに。「ましろ、何してるの?」茉白は穏やかに微笑むだけ。「なんでもないよ。……蓮太郎くん」蓮太郎は動揺を隠して鞄を掴む。「……また来週」ドアを閉めた瞬間、胸がざわついた。

六つの色とりどりの姉妹。

全員が天才で、強烈で、可愛くて。

陽菜の明るい笑顔の下に隠れた、姉としての重い責任感。

凛の冷たい視線の奥に潜む、昔の傷。

澪の無表情の裏側にある、誰にも言えない孤独。

葵の元気の裏に諦めた夢。

紬の完璧さの奥の、失敗への恐れ。

そして茉白の優しい視線に、長い間秘められた何か。蓮太郎は自転車を漕ぎながら思う。(この子たち……全員、俺を試してるみたいだ。

でも、茉白だけは……違う気がする)メモを握りしめ、夜道を走る。

まだ、何もわからない。

でも、なぜか少し、胸が熱かった。(続く)



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