表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/27

第15話 再会

山を越えた先の小さな村。

朽ちかけた礼拝堂の裏手に、小さな家が建っていた。カナリアは迷いなく扉を叩く。


中から現れた男を見た瞬間、オーウェンの呼吸が止まった。


「おかえり…早かったな…」


見覚えのある横顔、そして記憶の底に沈んでいた声が甦る。


──まさか…ウソだ…


「……!? ……父、さん……?」


男の目が、ゆっくりとオーウェンを捉えた。

その瞳には驚きと、深い後悔が宿っていた。


「オーウェン……」


服装や髪型が変わっていても、見間違えるはずがない。

──10年以上前に蒸発したはずの父だ。


「なぜ……あなたがここに……!?生きていたの…!?」


「…どういうことだ…!?」


オーウェンの言葉にカナリアも動揺を隠さない。


「…この人は、デギオン・ソーン・ハルメレイ、僕の父だ…」


「…ハルメレイって、おじさん……!?」


カナリアが驚くのも無理はない。育ての親がまさか身分を偽っていて、息子までいたというのだから。

オーウェンは動揺を抑えて父に問いかける。


「…なぜ…今まで僕や母の前に姿を現さなかったの? 僕達を危険に巻き込むと思ったの?」


「すまない、オーウェン、カナリア…」


父は僕を中へと誘った。

カナリアは粗末な椅子に腰掛けたが、僕は立ったまま父を見つめる、


父は深く息をつき、語り出す。


「……あの日、王宮からの不信任を突きつけられた日…、カシアンに記憶を奪われ、殺されかけた。ある人が助けてくれたから港街に身を隠すことができた」


「…そう、だったんですか…」


「記憶を取り戻してから、アミナとは何度か意思疎通をしていた」


「…!?」


母は…父が生きていることを知っていた…!?

だが、父の話にオーウェンは納得した。母があの家から出られなくても、ハルメレイ家の“伝達“の力を使えば、それは可能だ。


だから母はあの牢のような家でも耐えることができた。

母はオーウェンに「お父さんを恨まないで」と言っていた。

それとたまに母は気分が良さそうな日があった。

今になってオーウェンのなかで過去の意味が繋がっていく。


「…それで?」


僕はやり場のない感情でいっぱいになっていた。

だけど、心を落ち着けながら冷静に問う。


「アッシュフォルデから逃げるようアミナに言って、屋敷の外で待っていた」


「…それは、でも…」


「…ああ、うまくいかなかった。アッシュフォルデに知られ、アミナは酷い目にあったかもしれない」


当時、オーウェンはまだよくわからなかった、母の苦しみも父の思いも。


「アミナを妻にしたアッシュフォルデはアミナが逃げないよう、お前を遠縁の家に隠した。俺は必ず居場所を突き止めると約束したけどアミナは…」


「──父さん、もういいです、よくわかりましたから…」


──これ以上は聞きたくなかった。


僕はこの後のことを、たぶん父以上に知っている…。


父は母を取り戻そうとしていた。

だけど僕を隠されてしまって、身動きがとれなくなった。

母は僕の無事を祈りながら過ごしたかもしれない。

でも…母はあの家でだんだんと心を病んでいった。


父は結局、僕には辿り着かなかった。

僕が大人になって母と再会した時にはもう手遅れだった….。



今まで黙っていたカナリアが問う。


「おじさん、記憶が戻っているならなぜ今まで黙っていたんですか? あんたはもとは貴族だったのか…!? リリズに…あの人に何したんだ!?」


それはオーウェンの疑問でもあった。


「リリズを襲ったのはまさか、父さんなの…?」


父は一泊置いて、息を吐く。


「ああ、そうだ」


「どうして……!?」


「どうして? お前はわからないのか? ラザロ・ノアール・アッシュフォルデはカシアン・ヴァン・デヴローをそそのかして、お前を介して情報を盗んだ。息子のリリズを使ってだ!」


そんな、まさか…


リリズが、あの時の子ども…?

オーウェンは茫然とする。


──そう…あの日、

ハルメレイ家が預かった大切は情報は僕が喋ってしまった。


そのことでハルメレイ家は信用を失い、家は取り潰された。それから両親は離れ離れになった。


父の話を聞いても、あの時の子がリリズだとは信じられなかった。


仲がよかった

よく遊んでいたのに、

その子どもから聞かれたらことに答えた

ただそれだけだったのに


「リリズ・ヴァン・デヴローとは関わるな…」


父の強い眼差しと言葉が、物理的な力のように胸を打つ。


「───嘘…何で…そんなこと…」


「オーウェン、お前はなぜ奴と関わっている!?」


怒りが、憎悪が流れ込んでくる──


「──はっ……は…ぁ…」


うまく呼吸ができない。

(まさか、共鳴──!!?)

(リリズ以外で…)


父の言葉が追い討ちをかける。


「デヴロー家は汚れている」


言葉が、感情が、僕のなかにこだまする。

あまりのことに息がままならなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ