7話 欲しがる妹アナベルは『ざまぁ』されたかった
今回は文字数少なめです。
登場人物紹介も更新しています。
お姉様は気まずそうな顔に、聖女ミシエラ様は笑みを深めて私たちを見る。え?聖女様、なんでそんなにキラキラした笑顔なんですか?
「ドアの隙間から貴女たちの話し声が聞こえてきて、気になって……盗み聞きしては駄目だと思ったけど、つい……」
「うふふ。『アナベルに妙な真似をしたら、ルグラン様でも許さない!』って、止めに入る気満々でしたよね」
「せ!聖女ミシエラ様!それは内緒にして下さい!」
「は、話を聞いていた?いつから?」
お姉様と聖女様は、ポッと頬をあからめた。
「はっきりと聞こえたのは、ルグラン様が『君と出会えたことは、俺の人生最大の幸運だ』と、言った辺りからよ」
「ええ、私もその辺りからです。まさかあのエリックが、こんなに情熱的なプロポーズをするなんて。意外ですわ」
「へ?プロポーズ?」
呆然とする私を隠すように、ルグラン様が立ち上がった。
「ミシエラ。それはどういう意味だ。俺だって、愛する人を口説く時は言葉を尽くすさ」
「はいはい。こんなに綺麗で素敵な婚約者が出来て良かったですね。マルグリットさんから、アナベルさんにプロポーズする許可を得た時はどうなることかと思いましたけど」
「ああ、アナベル嬢が俺の誓いを受け入れてくれてよかった」
ルグラン様は振り返り、にっこり微笑んだ。
あ。そういえばさっき、『ドアは開けてる』とか『精神年齢が同世代以上なら別』とか何とか言ってたような……。
ははーん。成る程。はめやがったなコイツ!
私はお姉様たちに気づかれないよう、ルグラン様に小声で抗議した。
「最初から二人を誤解させるつもりだったんですね。最低」
ルグラン様も小声で返す。
「婚約でもしないと、貴族令嬢である君と自由に会えないからな。もちろん、恋愛的な意味で君に惹かれているし、結婚したいと思っているのは本当だ」
「本当に?なんか胡散臭いなあ。あ、しまった!」
「はは!敬語じゃ無い方が話しやすいし、嬉しいよ。君と俺は対等な関係なんだから」
フッと、不安そうな表情になった。
「……これから全力で口説く。信頼されるよう尽くす。それでも、どうしても嫌なら君から婚約破棄してくれ」
私は深い深い溜息を吐いた。ああ、溜息を吐くと幸せが逃げる。こっちには、そんな言葉ないかもだけど。
深く息を吸って、ハッキリした声を出した。お姉様と聖女ミシエラ様にも聞こえるように。
「プロポーズしたくせに気弱なことを言わないで!俺に惚れさせてやる!くらい言いなさい!」
「!」
びっくりした顔可愛いなあ。あーあ、腹を括るか。
私は立ち上がり、ルグラン様にだけ聞こえるように囁いた。
「……たしかに騙し討ちだったし、出会ったばかりだから戸惑ったけど……貴方と婚約するのは嫌じゃない……わあ!?」
「ははははは!俺の婚約者は最高だ!」
ルグラン様は私を抱き上げ、くるくる回って大爆笑だ。なんだこれ。
「ちょっと!やめて!恥ずかしい!テンション高過ぎ!降ろせー!」
「ははははは!もう少しだけこうさせてくれ!」
「あらあら仲良しねえ」
「アナベル、幸せになってね。でも寂しいから、まだしばらくは結婚しないで欲しいわ」
ああ、なんだか面倒くさいイケメンに捕まったなあ。
私、今生ではイケメンに呪われる運命なのかもしれない。
それこそ、苛烈な『ざまぁ』で破滅した小説の私みたいに。これって原作補正?
だとすれば。やっぱり私って、苛烈ざまぁで破滅するのかな?
今からでも、適切なざまぁを受けて物語から退場するべき?
「アナベル嬢」
暗い気持ちになっていたその時、ルグラン様が引き続き回りながら、私の顔を覗き込むようにして囁いた。
「まだ起こってない不幸を恐れる前に、今を楽しもう。君も俺も生きているし、ひとまず予定されていた苛烈な『ざまぁ』は回避できたんだから」
その言葉に、暗い気持ちが吹き飛んだ。
「うん。そうだね。これから先の『ざまぁ』は、小説ほど酷くはなさそうだし、そこまで悲観的にならなくてもいいかも」
「なんで『ざまぁ』されるのが前提なんだ?『これからも全ての『ざまぁ』を回避するぞ!』くらい言えよ」
「あはは!そうだね!」
私がさっき言った言葉を返されて、気が軽くなるどころか楽しくなってきた。
「まだノープランだし、とりあえず『目指せ『苛烈ざまぁ』回避!』にしとくよ。もちろんルグラン様も手伝ってね」
「ああ。もちろんだ」
大半の問題は片付いていないし、ルグラン様が回り続けるせいでクラクラしてきたけど、ルグラン様の力強い眼差しを見ていると、何とかなるような気がした。
とりあえず『目指せ!苛烈ざまぁ回避!』
◆◆◆◆◆◆
最終回っぽいですが続きます。次回からはルグラン視点です。
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異世界恋愛小説です。ダーク、ざまあ、因果応報のハッピーエンドです。




