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花仕舞師  作者: RISING SUN
第十二章──和(やわらぎ)の調和、争いの終わりし者
199/252

199話

「われが判断を誤ったせいで……」

 花護人筆頭、花天照が項垂れ、目を伏せている。

「なぜ、人外なる我々が清さまの元へ行けず? いくら見張り厳しかろうとする抜けられるはずでは……?」

 根音が喰ってかかる。

「ガキ……(ことわり)理くらいわかるじゃろうて……我々は花仕舞師がおっての花護人。しかしながら今はその主が不在。つまるところ清さまが花仕舞師として心を閉ざしておる。ならば我々は動けず」

 根子が言葉を荒げる。

「何を跳ねっ返り!」

 根音はどうしようもない苛立ちを隠せずにいる。

「落ち着きなさい、花根孖(はなねし)たちよ。しかし、あの時、清さまが捕えられる時、花根孖の根音と根子を、いくら清さまの(めい)とは言え、引き離したのがそもそもの誤りの元凶。いかなる時も二人は側に置いておかねばならなかった」

 花天照の言葉には力がない。

「ただ居場所はわかっておるのだろう?」

 花枝弐の花水鏡が口を挟む。

「わかっておる……先ほど痣の気配を感じた。花紋様の痣を持つ者の側におる、それはあの城におる。そう……以前、現路殿を仕舞った城」

「清さまと繋がれば飛んですぐにでも身元、参上できるものを……」

 花枝参、花翅(はなばね)が苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。

 花天照は遠く、小高い丘にそびえる悠前(ゆうぜん)の城を見ていた。小高い丘の頂に、その城は天を突くようにそびえ立っていた。幾重にも重なる石垣は、まるで訪れる者を睨み据える瞳のようで、足を踏み入れる者の心を容赦なく試す。天守は空を割り裂く黒い刃のようにそびえ、招き入れる慈悲など一切なし。近づこうとすれば身も心も粉々に打ち砕くが如く。それは、選ばれし者のみが辿り着ける、拒絶と威圧の象徴──まるで、生き物のように鼓動しながら、余人の侵入を嘲るかのように佇んでいた。それは清のようであった。

「清さまが心を閉ざせば、我々と共鳴せねば我々は花護人としての価値なし……もし、頼れる存在とすればこの世にひとりしかおらぬ」

 花枝陸、花誓(はなうけ)は呟く。

「本懐成し遂げるためならば、いかなる困難も打破する……人か鬼か……」

「そう、静さま……静さまがいかに動くかで、この現状が打破できる、ただ憎悪、日に日に増す清さまの心に届くかどうか……」

花灯の籠の番人右手はなともしのかごめのばんにんめては沈黙を貫く。

 花天照以下花護人たちははただ祈るしかなかった。

「清さまにとって御敵である静さまに頼らざるは、なんたる皮肉よ……」

 眼下に広がる城は花護人たちにとって、固く閉ざされた門のようであった。

「大丈夫……清さまなら……」

 根子が呟やいた。

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