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花仕舞師  作者: RISING SUN
第十一章──勇(いさみ)の心、恐れを越えた少年
178/252

178話

散った人集りに残る清たち。

「清さま、でこ……」

 根子がそっと、取り出した手拭いで清の額を押さえる。

「よい、それよりも灰塊殿のご子息の手当てを……」

 根子は世實代の額をまじまじと見る。

「わぁ、でかい、(こぶ)

 血が滴る瘤に手拭いをあてようとする。

 世實代は顔を赤らめ手を払う。

「このくらい平気じゃ」

 世實代は背を向け立ち上がる。

「手を差し伸ぶる者の(こころ)は、に受け容るるがよろし」

 少し頬を膨らませた根子。

「それとこれとは別じゃ」

 そう言うとさらに顔を赤らめる世實代。

「どれ、見せておくんなまし、でかい瘤は恥ずかしいゆえ」

 清は膝を降り、優しく世實代を見つめた。先ほどまでの凛とした姿は消え言葉尻も優しく、母、菊以外に優しくされることに世實代は戸惑った。


 ──久しぶりじゃ、こう優しゅうされるのは……──


「まこと、礼を申し上げる。われは十執刀(じゅうしっとう)世實代と申す。それより、そなたは父上をご存知か! どこにおるかご存知か?」

 世實代は縋りつくように灰塊の居所を探ろうとした。

「それを知ってどうされる?」

「もちろん、会いに行くに決まっとる! ここに連れ戻す。父上は何も間違っとらんと……」

 清は立ち上がり、目を伏せた。すっと息を吸う。目を見開く。先程まで怪我を心配する気は消えた。それは民衆の前に立ちはだかり、民衆の前で凛とし、立ち塞がった目だ。

「世實代殿……そなた、非常なる(うつつ)、受け入れる『勇』はお持ちか?」

 清の言葉は重みを感じる。逃れられない重石(おもし)を何重も身に纏まされる重み。

「それは……それは……」

 気を抜くと『(おそれ)』がそっと顔を出し、世實代を手招く。仄暗い闇の中から不気味な白い手がにょきりと伸びてきてゆらゆらと招く。

「どうされる……? 手前は知っておるぞ。そなたの父上、灰塊殿の場所を……しかし、それがし、世實代殿にとって非常なきこと……それとも聞かずに去るか……世實代殿が決められよ」

 清の瞳から重圧がかかる。


 ──ただ知りたいと言えばよい──


 そう思いながらも先程までまで手招いていた白い手が世實代の身体に絡まる。その白い手の持ち主が耳元で囁く。


 ──何も知らずとも……あれの言うことはまやかしなり。楽じゃろう……『勇』から逃れ『怯』の道が……ほれ……証拠に心が安堵しとる……何も苦しゅうなる道を歩む必要なし……ほれ、こっちにおいで……早うおいで……──


 囁く声が鮮明になってくる。

「手前はこのまま去りしがよござんすのようですな」

 清は背を向けようとする。


 ──ほら……ほら……ほら……惑わし者が去るぞ。これで楽に……──


「うるさい……! 我は十執刀世實代なり。誉高き灰塊の子。ならば進むのみ! 待たれよ、清殿」

 清は立ち止まる。

「作用ですか……ならば承知した。これが灰塊殿の最期の刻の真実──届け──花文!」

 清は世實代に花文を使う。色とりどりに包まれた花の流れが世實代の心に届く。

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