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花仕舞師  作者: RISING SUN
第十章──畏(かしこみ)の祈り、神を信じた巫女
168/252

168話

天より出でし、花護人筆頭、花天照が壮大な翼を広げ、両手を組み目を伏せ、降臨す。それに対し花傀儡筆頭、花化従が、道中下駄を外八文字の調子で鳴らし、花断の面を付け、唐傘、花傘を優雅に振る。筆頭二人が互いの主に寄り、息吹を吹き掛ける。


 ポッ──、ポッ──


 清、静互いの持つ線香花火に火が灯る。淡い光が月、花灯りの中、新たな輝きとして灯る。線香花火に火が灯されるとお互いの番人が顔を現す。花護人の番人花灯の籠の番人花右手はなともしのかごめのばんにんめては地中から地を割り這い出ると清の線香花火を受け取り、灯火を護るが如く右手を添える。一方、闇より静かに現れる仇花灯の籠の番人右手はなともしのかごめのばんにんゆんでは静から線香花火を浮けとると左手を翳し、火を護る。

 筆頭同士の舞の応酬。天を優雅に舞い風をお越し、外陣の穢れを払うかのように花天照が舞えば、下駄を鳴らし、花化従が花傘を何度も振るい、風を遮るかのよう。

 花天照が目を開くと金色の瞳が覗く。一瞬で社の(おく)が吹き飛び、花仕舞師の舞いの舞台が広がる。御簾をも吹き飛び、神座の祈りの姿が現れる。

 花天照、花化従の身体からそれぞれ枝が五本ずつ、伸び地中に刺さる。


ポンッ──ポンッ──


地より伸びし枝から真白の蕾が五つ、漆黒の蕾が捻りあがるように、ほころぶ。

 清が『(おそれ)』の徳を呼び起こすように花告(はなつげ)を唱え、静は負の徳『(かなしみ)』を呼び起こす、花現身(はなうつしみ)の言葉を詠う。



 ──かしこみは祈りに似て、触れずとも、涙に咲く──


 ──哀しみの花よ、何処に散るか。涙の雫となりて、ひとひら、落ちゆく──


 互いの告げ終わると第一の真白と漆黒の蕾が鮮やかに開き花が咲く。現れしは花護人花枝弐、花水鏡(はなみかがみ)、花傀儡仇花枝弐、花雫(はなしずく)。一面、水鏡の世界と雨降る世界が広がる。銀色の髪と瞳、水鏡の衣を纏いし、舞う花水鏡と青く澄み濡れた髪と瞳を揺らし雫の衣を纏う花雫。神座の心を鏡に映し出し、『畏』の徳を描き出す蕾の舞を舞えば、負けじと雫で揺らし、『哀』に宿る未練や後悔を滲み出させる緋蕾の舞──。

「なんたる舞い……これが花神威ノ命さまが、人を安らかに仕舞うために与えた舞とは……そして哀さえ、人の心を映し出す。導かれるは理想と現実、それが人であることの摂理か……」

 目の前で繰り広げられる見事な舞いに神座は祈り続ける。


舞の最中、また風に紛れ、花神威ノ命の声が聞こえる。


 ──神座よ……祈りをほどけ、汝は十分に祈り続けた。汝は紛れもなく『畏』に生きた巫女なり──


 しかし、神座は祈りを止めず。

「花神威ノ命さま……それがしは祈り続けます。花神威ノ命さまを信じ続けるがゆえ、そして、祈りが礎となるがために……」

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