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花仕舞師  作者: RISING SUN
第九章──忍(しのび)の想い、秘めし愛の守り手
146/252

146話

「どんな形にせよ……我が夜月の命を殺めた……」

 紅花はすべてを洗いざらい清に告白した。それは少しだけ心が軽くなる瞬間だった。

「そののち、なんとか里に戻ることができたのは緋美の存在ゆえ。見隠(みがくれ)の里の党首に緋美を譲り受けると胸の内を語った時は渋れてな、仕方なく見隠のある国の領主に直訴申し立てた。まことあの時は緋美のために必死だったのだろう。死すら恐れていなかった。緋美を守るため。そして、運よく見隠の里がある東洲(とうしゅう)ノ国、時の領主、鷹司弓定(たかつかさゆみさだ)さまに温情を受けることができた。話のわかる殿であり、代々鷹司家は慈悲深き家系、見隠が仕える所以でもあった」

「鷹司家ですか……」

 清はある人物の名を思い出していた。

「それから里を抜けることを許され、緋美を抱え旅立ち流れ流されこの千種座の前進、旅芝居座千種に拾われ、女方として芸に身を置きここに至っている。その際、座元、市三朗殿にある程度のことは話、素性を認めてもらっていた。それが仁義と思うたからだ。ただ夜月の本心は直隠しにしてきたが……」

 紅花は深いため息をついた。

「そして、『花死奇談』演劇終わり次第、次回作『花死奇談、|真綴、端女の姫、信物語《まことのつづり、はしめのひめ、たよりものがたり》』なるものの舞台が始まる。そこで、その端女の姫を緋美が演じる。しかしながら何が良いのかもう……わからない。本来、初舞台、喜ばしいことなのだが……」

「『端女の姫、信物語』ですか?」

 清にはすべからず運命を感じ始める。


 ──端女の姫があの方を指すのならば……緋美殿を救い出すことができるかもしれない──


「紅花殿……『真綴、端女の姫、信物語』という演目でございまするか?」

「そうだ。座元がどこから仕入れてきた台帳かわからぬのだが……急遽決まり申した」

 清はそれを聞き根子に問う。

「根子……この『真綴』とは存じ上げておるか?」

「いえ……初耳でございまする。『花死奇談』は我ら花仕舞師を元にした御伽話。しかしながら『真綴』なるものは知りませぬ」

 根子もきょとんとした表情を浮かべる。

「根子の知識にそれがないとうことは、それは遠い事柄を示したものではないのですね……それと……紅花殿、つかぬことお聞きしたいことがございます」

「なんぞ……?」

「鷹司弓定さまはご存命で?」

「いや、弓定さまは、逝去され今はご子息が世襲されたと聞いておる」

「それでは今のお殿さまは?」

「確か……文綱(ふみつな)さまだったはず……」

「そうですか……」


 ──『真綴』……それは誰が(したた)めたかはわからぬ。しかしながら、もし私の憶測が正しければ……──


「紅花殿……もし、よろしければその台帳とやらを見せて頂けませぬか? 緋美殿を、そして紅花殿をある加護が賜れるかも知れませぬ。紅花殿が覚悟を持って話して頂いたおかげです」

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