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花仕舞師  作者: RISING SUN
第九章──忍(しのび)の想い、秘めし愛の守り手
140/252

140話

「何があった……何がそうさせた……「母上さまが逝った事実を心に留めれば……」!? もしや……」

 紅花は緋美のあまりの変貌にある答えを見いだした。

「しかし、そのまことを知るのは座元のみ、ただ座元とは先ほど打ち合わせをしていた、座元が話したことは考えにくい」

 紅花は頭に巡らせる。

「いかがされましたか? 千種座の紅花殿とお見受けいたしますが……」

 清が声をかける。

「……やや、そなたは……いつぞやの……」

 緋美が団子屋前でぶつかった子の連れの女と思った。

「はい、そうでございます。先ほどの童女、あの日、見た姿とあまりにも変わりようでございましたが……」

 清は紅花の動揺、緋美の変わりように、素直に問いただした。

「いや、なんでもござらん。急ぎますゆえ……」

 紅花は急ぎ足でその場を去ろうとした。

「お待ちください……実は、先日から『花紋様』の痣が左手に浮き出ておるゆえにこちらに参上いたしました。その痣、こちらとしても看破できない事情ゆえ……」

「花紋様? 花紋様とはなんぞ? いつぞや漆黒の衣纏いし女もそのようなことを言っておった……ここには痣など何も……」

「漆黒の着物……? ここに……もしや、あの童女の変わりよう、手前の姉さまが……」

「そなたの姉さま……? もしや、お主らが緋美に何かしたのか!?」

 言葉の調子があがる紅花。

「それはわかりかねますが、漆黒の着物とはたぶんながら手前の姉かと……それと「花紋様」、つまり幽世への橋渡し、死への宣告を告げる痣でございます。それは逃れられぬ宿命。そしてそれは今、左手の甲で緋々(あかあか)と色づいております。そしてそれは花仕舞師なる者たちだけが見ることのできるしるし……」

「何をわからぬことを……」

 焦りからか苛立ちを覚える紅花。

「手前どもは花仕舞師にございます……痣を持つ者を徳を持って未練を打ち破り、浄化しあの世へ導く存在でございます」

「花仕舞師と……?」

 さらに頭の中で整うことが困難になる紅花。

「あなたさまが演じた死仕舞師……まことの姿が花仕舞師」

 清は毅然と言い放つ。

「では、そなたは物の怪のたぐいか?」

 汗が額から滲み出る。桜の花弁がそよそよとひとひら舞っている。

「いえ、違います。『花死奇談』あれは花仕舞師を畏れ敬った御伽話に仕立てたもの……まことは物の怪に非らず人であり、物の怪のたぐいで言うならば私ら花護人でございます。私らは花仕舞師である舞を興ずる者の補佐的役目……」

 根子が口を挟みすべての細い糸が絡み合いはじめる。

「そうか……だからあの時、お主の姉は言ったのか……「の舞を見届けることになる。死仕舞師……真の名、花仕舞師の舞を……」と」

 紅花はぽつりと呟いた。

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