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第85話 アルフェイドとの交流

「……何だと?」


 オズラルドが目を剥く。

 リーゼも、とっさに身構えたものの……。

 しかし、オズラルドはそのまま激昂するでもなく、微かに目を伏せて頷くのみだった。


「お前も、それを言うのか……」

「えっ?」


 オズラルドの頭の中に、誰が浮かんだのか、リーゼには分からない。

 彼はそのまま落ち着いた様子で、淡々と呟いた。


「……ならば。のらりくらりと自分を偽り、国民を見ているようで、自分の評価ばかり気を取られて、どんな人間にも愛想を振り向くことしか出来ない、シエルのような者が王に相応しいと……。そういうことなのか?」

「それは、私にも分かりません」

「分からない?」

「分かりません……けど。ただ、私はあの方が好きで……信じています。あの方なら、きっと……この国を変えてくれるはずだって」


 オズラルドから目を逸らさず、リーゼはきっぱり宣言した。


「王太子殿下は私のような者にも偏見を持たず、手を差し伸べてくださいました。皆、王太子殿下がいらっしゃると笑顔になります。それはあの方が身分や階級で、人を見ないからです。王様になるということは、優しさだけでは、どうにもならないこともあるかもしれません。それでも、まず慈愛の心を持っていることが必要なのではないでしょうか? ……大公殿下は一体、何のために王様になりたいのですか?」


 自分が権力を振るうため?

 今までの王家を批判するため?

 

(そういうことではないのでは?)


 王は、自分からなるものではない。

 きっと、人から求められるものなのだ。


 どんな人のことも、よく見ている。

 外見や立場で、人を見下したりしない。

 綺麗な目を持つシエルだからこそ、良き王になれる可能性を秘めている。

 だから、リーゼは年齢のことも、身分差も飛び越えて、彼のことを「好き」だと言えるのだ。


「それに、大公殿下は見誤っています。ラグナスの王は、この国に侵攻する余裕はありません。あの国はあの国で様々な問題を抱えているのです。ラグナス国王は大公殿下の話を興味深く聞いたと思いますが、協力するという密約まではかわしてないはず」

「莫迦なことを言うな。ラグナス王国は敵だ。声など掛けているはずが……」

「私は、先日ラグナス国王とお話ししました」

「……ええっ!? いつの話よ?」


 今まで恐怖に気配を消していたエレキアが思わず叫声を轟ろかせた。


「ああ、エレキア。もちろん、魔法で……ですよ。王都に向かっている途中、深夜になってしまいましたが、ルリがラグナス国王に繋げてくれたのです」


 ルリにラグナス国王のもとに飛んでもらい、リーゼは水鏡を通してアルフェイドと会話をしたのだ。

 一か八かのの賭けではあったが、アルフェイドはまるで予期していたかのように、リーゼとの面会を受け入れてくれた。

 魔法を使えるようになったと話したら、アルフェイドは、何故か大笑いしていた。

 魔法は、古代ラグナス語を使用していることも多く、生前ミゼルはラグナス王国とも、やりとりをしていたらしい。

 アルフェイドというより、彼の父とミゼルの方が交流も深かったなんて、初めてリーゼは知った。

 ただで国家機密を教えてもらうわけにはいかないので、ミゼル流の交渉と駆け引きに悪戦苦闘はしたが、おかげで、オズラルドが秘密裏にラグナス王国に助けを求めていたという、確かな証言を得ることができたのだ。


(この国の内乱ではあるけど、大公に味方している貴族の中には、ラグナス王国と繋がりを持ちたいと思って参加している存在が多数いる)


 更に、ラグナス王国の脅威を謳って、集めた兵も多数いるので、その危機が回避できるのなら、戦いなどしたくないと、離脱する者も大勢いるだろうと、アルフェイドは婉曲に話していた。

 もっとも、リーゼの慣れない交渉術に乗っかって、そんなことまで話してくれたアルフェイドの狙いは、よく分からなかったのだが……。

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