表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/96

第75話 最悪な展開

◇◇


「ああ! リーゼ帰ってきた。何処に行っていたか分からなかったから、困ってたんだ」

「……何で。ルリが?」


 護衛の人もいることだし、ひとまず屋敷に戻ったリーゼだったが、待ち構えていたのは、黒髪の少年に化けたルリだった。

 食堂で山盛りのパンを頬張る使い魔=子供に、使用人たちは怯え、エレキアは呆れていた。


「何なのよ。これ。ここに来た時、化け鳥だったから介抱してあけたのに、いきなり人間になったわよ。怖いんだけど」

「エレキア……。ルリは弱ると人間に化けるのですよ。人の方が沢山食べられるそうです。要するに、栄養補給しているんです」 

「甘い物が食べたいんだけどな。仕方ない」


 使い魔らしく、我儘わがままを言ってから、ルリは満腹になった腹を叩いて、満足そうに呟いた。


「しかし、どうして? 私、てっきりルリは消えたのかと思っていたのに……」


 「宝珠」を使ったのだ。

 あの鐘に宿っていた魔力は砕け散って、ルリは消えてしまったのではなかったのか?

 この子が存在しているとしたら、何処かに魔力が残っているということだ。


「消えてないよ。外に出ても良いようになったみたいだから、久々に遠くに行ってみようと思って、あの王子について行ったの」

「……はあっ?」


 リーゼも、その場にいた人全員も、耳を疑っただろう。

 あっさり、とんでもないことをルリは口走ったのだ。


「それが大変でねえ。何て言うか、あの髭のおじさんがさ、国王を襲ったみたいで、もう滅茶苦茶なことになってさ」

「……ルリ。それ、本当の話なの!?」


 エレキアが顔を強張らせながら、激しく問いかけた。

 続々と使用人が食堂に集まってくる。

 彼らも皆、シエルと王都が心配だったのだ。


「知らないの? 王都だと大変なことになっているけれど?」

「ここには、そんな情報一つも入ってきてないわよ……」

 

 ……いや。

 ()()()()()()()()のかもしれない。

 だけど、シエルのことだ。

 使用人の耳に入れないよう、命じている可能性も高い。

 もっと、リーゼが積極的に尋ねて回るべきだったのだ。


「うーん。ルリが三日で王都から帰ってきたから、このネタ自体、新鮮なのかもしれないね」


 ――三日。

 早すぎる。

 早馬車を使っても、王都までは半月以上はかかるはずだ。


「嘘よ。そんなはず」


 エレキアの呟きに、リーゼは首を横に振って、正直に答えた。


「ルリは魔女の使い魔です。性格に難はありますが、嘘を吐くことは出来ませんので、多分、本当のことだと……」

「……そんな」


 エレキアが絶句して、気まずい沈黙が広がった。

 リーゼはふとすると、昼寝の時間に突入してしまいそうなルリの首根っこを押さえて、捲し立てた。


「それで、殿下は!? シエル王太子殿下は、今どうされているの?」

「うーんとね。国王は行方不明。……で、王都に戻ってきた王子と髭のおじさんが敵対して、内戦勃発になりそう……な感じ? ちょっときな臭いから、ルリは帰って来たんだよ」


 へらへら笑っているどころの騒ぎではない。


「何……それ」


 予想だにしなかった、最悪な展開が始まろうとしている。

 やはり、ラグナス国王の忠告は本当だったのか……。

 しかし、早めに感づいたシエルが王都に向かった分、オズワルドと正面で向き合う形になってしまったのは事実だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ