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第45話 リーゼにしかできないこと

 シエルが王都に戻ったところで、勝機がないとしたら? 

 けれど、エレキアのように、盲目的に勝てると思い込んでいる人間ばかりだったら?


(……戦争になるに決まっている)


 そして、すべてシエルに皺寄せが来るのだ。

 このまま、この方を王都に行かせるわけにはいかない。


「この書状には、魔女に興味があるってことが結構、長々と書いてありますよね? ミゼルは百五十前の戦争のことを、たまに話していました。ラグナスにも、だいぶ損害を与えていたようで、今でも畏れられているのだと、自慢していました。もし、その脅威が今もあるのだと、ラグナス側に知らせることができたら、多少は……」

「……いや、ちょっと待って。リーゼ」


 熱く身を乗り出すと、シエルが目を丸くしていた。


「この書状の字……。君、読めるの?」

「魔法書の文字は、古代ラグナス文字なんです。魔女は老眼に苦しんでいたので、代理で本を読まなければならない機会があって。……分かります」

「君って人は……」


 シエルが苦笑している。

 けれど、リーゼはそんなことなんて、どうだって良かった。


(今、私がやらなければならないことは、何だろう?)


 無謀で無茶だけど、大魔女ミゼルを知り尽くしている、リーゼにしか出来ないことがあるはずだ。


「ラグナス王国が、魔女をどのくらい恐れているのか分かりませんが、少なくとも、ミゼルの存命中、何も反応がなかったことからして、多少の抑止力にはなるのではないでしょう。やってみる価値はある。ミゼルが生存していると思わせることが出来れば……」

「一体、君は何を言っているの?」


 シエルが困惑しているが、リーゼはお構いなしに考えていた。


(ルリは駄目よね……)


 あの子なら、見た目はミゼルに近付けることが出来るが、長時間、人に化けているのが、無理だし、獣の姿でいることが長いので、いきなり四つん這いになって走り出したりしかねない。

 隣国の使者に対して、おかしな振る舞いをは出来ない。


 ――だったら?


「殿下、ラグナスの宰相一行を、ここに呼んでください。貴方は逃げもせず、悠然としている様を見せつけてやれば良いのです」

「しかし、それは……」

「ここにいて、巻き込まれたくないのなら、使用人たちだって、兵士だって、とっとと出て行くはずです。殿下は、そんなことまで考える必要はないのです。……私、ミゼルになりますから」

「はっ?」

「四十年、あの人の傍にいました。……それって、私にしか、出来ないことですよね」


 ミゼルのように、にやりと口角を上げてみると、シエルが石のように固まっていた。

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